最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

文字の大きさ
102 / 144
第二章

アイラはベロニカを引き止めたい

しおりを挟む
本文
「え?ベロニカの余命が?」

「そうらしい。とにかく見つけたら逃げられないように引っ付いててくれ。あと、走らせたり体に負担をかけさせる真似もさせないようにな?捕まえたら直ぐに医療所に連れて行って調べないといけないからな」

そんな。

それはいつから?
ここに来てベロニカが体を酷使していないことなんてあったかしら?・・・・ないですわ。

ティファがさらわれた時も、ティファと一緒に異空間の割れ目に入って行った時もベロニカは体に、かなりのダメージを受けた筈。何故、今まで隠して?

「アイラ?大丈夫か?」

「・・・ヨシュア様。ベロニカは、死に急いでいるのでしょうか?」

「・・・・さぁな。俺にもわからん」

どうして?もしかして、ここでの暮らしそんなに辛かったのですか?ベロニカいつも淡々としていたのでそんな風に思っていたなんて考えつかなかったですわ。

「わ、私も少し外を見てきますわ。ヨシュア様も探しに行って下さいまし」

「遠くには行くなよ?この近くだけだからな?」

「はい。わかっておりますわ」

そういえばお兄様は宿舎にいらっしゃらなかったのですわね?一応お兄様にもお知らせした方がいいですわよね?

一度宿舎に向かおうかしら。

ベロニカ、やけに最近お化粧が濃くなったと思ってましたが顔色を隠す為だったのですわ。

日に日に部屋から出る回数も減っていた気がします。
それもてっきりエリスとラットが来て仕事が減ったから休んでいるのだと、思い込んでましたわ。

「ベロニカ」

どうしましょう。私、段々不安になってきました。
だって、心臓が止まりそうって事は、今すぐ止まってもおかしくないのですわよね?そんな・・・・。

「そんな事は許しませんわ」

貴女がいなくなったら、一体誰がティファを止めるのです?私貴女がここに来てからずっと貴方が羨ましかった。

「勝ち逃げなんて許しませんわよ?」

どうか、その日がまだ先であって下さいませ?
でも、もし今止まってしまったら?

バーーーーーン!

「お兄様!!」

「え?アイラ?どうした?」

お兄様!こんな所で何をなさってるんです!緊急事態ですのに!

「ベロニカを見かけませんでしたか?今皆で探しているのです!!」

「え?今さっき街中で会ったけど?どうした?」

なんですって!!もう、もう!!お兄様の馬鹿!なんでそのまま連れて帰ってこなかったんですのぉぉぉー!!

「何?またティファが暴走したのか?」

「違います!!べ、ベロニカが・・・・」

あ、駄目ですわ。口にしてしまうと一気に現実味が。

「もうすぐ、死んでしまうってぇ・・・・・」

「・・・・・・・・アイラ。落ち着いて」

「ゴ、ゴルドが、ベロニカの心臓はもうボロボロだから、もう少しで止まってしまうって・・・・ティファが、それを聞いて飛び出して、皆も、でも、どうすれば」

お兄様?私どうすればいいのでしょう?
ベロニカとは一定の距離を置いているつもりでしたのよ?
それなのに、彼女が明日にでも死ぬかもと聞いてこんなに胸が苦しい。

「・・・・大丈夫。俺が無事に連れて帰って来る」

「お兄様」

ええ・・・・それで、確かに無事に帰って来ましたが?
ベロニカ血塗れなんですけれど!?

「べ、べ、べ、ベロニカ?その血は?」

「・・・・ああ。ちょっと罪人を捕まえて。私の血じゃないわよ?その罪人達の血が服に付いただけ」

「すまないアイラ。これからベロニカを宮廷に連れて行くから皆が戻って来たら、そう伝えてくれるか?」

医療所に連れて行くのですわね?分かりましたわ!!逃げないように着替える間、私が見張っています!!

「・・・・フィクス」

「何も言うな。とにかく一度診てもらう」

そうですわよ!ちゃんと治療しないといけませんわ!
さ!サッサと着替えて宮廷に!

「貴女のお兄さんは結構頑固ね。無駄だと言っているのに」

「何を言っているのですか?何もしないで諦めるなど!ベロニカ。何故今まで黙ってたのです?」

「・・・アイラ、落ち着いて。元々すぐ出て行く予定だったし、今だって言う必要ないでしょ?別に、私達は家族でもなんでもないじゃない」

「・・・・・・・・家族じゃなかったら、心配してはいけないのですか?」

いけないですわ。ベロニカを興奮させては駄目ですのに。私、我慢の限界を迎えそうですわ。

「貴女にとって私達の存在など、ここから出てしまえばどうでもいい存在なのでしょうね。だから、こんな酷いことが出来るのですわ」

「アイラ?」

ティファもベロニカも卑屈ですわ。
確かにここに来た経緯もあって最初は敵同士のような空気感はありましたし、距離も置いてました。でも、これだけ一緒にいれば貴女が悪人ではないって、わかりますわよ?

ずっとベロニカが、私達の所へ来るの待ってましたのに。

「別に貴女が私の事、なんとも思ってなくても構いませんわ!私は、勝手に自分の意思で心配しているのです!きっとこのまま貴女がここを出て行っても忘れる事など有り得ませんから!一生死ぬまで覚えていて、思い出しては笑ってやりますわ!」

どんなに私が二人に近づきたいと思ってもいつも貴女達は私に一線引いていましたわね?それでも今まで知らない振りで通して来ましたわ。でも、いつの日かって希望は持っていましたのよ?私を友人だと認めてくれるって。

「・・・・ごめんなさい。アイラ、そうじゃないの。貴女の事をなんとも思ってないわけじゃないわ」

そんな慰めはいりませんわ!それに私は平気です!こんな事で泣いたりなんてしませんわ!今更私に抱きついても遅いですわ!!なんて冷たい手をしてるのです!ちょっとかしなさい!体も冷え冷えですわよ!?ムキー!!

「私は、貴女達に私の事を忘れて欲しかった。私が動かなくなった時、それを悲しむ人を作りたくなかった。だから、ティファの近くに、居たくなかったのよ」

ベロニカ、お願いですわ。一生のお願いですから!

「私は、ティファを裏切って敵国に渡したカスバールの騎士。あの人のことなんて何とも思ってないわ。だから、誰も悲しむことなんてない。それが、私の望みなの」

「そんなの、嘘ですわ!」

「ええ。でも、あの国を出た時、決めた事だから」

1分でも1秒でも長く、生きて下さいませ。
その間に必ず、必ず貴女を助ける方法を探しますから!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...