最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第三章

ギャドは考えたくない

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「こんにちはギャド様。お疲れ様です」

「おう!セラ久しぶりだな」

セルシスの野郎、人使いが荒くて困るぜ。
エルハド様の時とは、また違うタイプのワンマンぶりだ。
俺は最近気になっている事がいくつかある。

「どうぞこちらへ。お茶をご用意しております」

セラと会うのも久しぶりだなぁ。
最近ではこうして俺が訪ねて来ねぇと会えないからな。
前はセラから押しかけて来たもんだけどよ?
いや、決してそれが不満な訳じゃないぞ?決してな?

「そういや、ゴルドはどうした?今日はコッチにいると聞いてたんだが?」

「ティファ様の所に預けてあります。契約者と長いこと離れているのは良くないそうで。残念ですが」

いや、いいと思うぞ?アイツ目を離すとお前の胸に顔を埋めてっからな?殺意を耐えるの俺も疲れてた所だったし、ティファなら万全の塩対応で安心だ!

「最近は親父さんもあまり帰って来なくて寂しいんじゃないか?」

「そうですね。でも、仕方ないことです。近々戦が起こると聞いておりますので・・・・」

そりゃ不安だよな。俺も正直今回は心配なんだよな。
セルシス陛下の考えてる事がわからねぇんだよ。
なんか、気味が悪いんだ。あの人あんな感じの人だったけか?それより、セラ?一体どこまで歩いて行くんだ?
コッチは確か倉庫か何かじゃねぇのか?

「どうぞ、こちらに」

「・・・・・・おう」

これは、もしかして。俺の嫌な予感当たったか?
そうなのか?宰相のおっちゃん。

「で?なんだこの部屋」

「魔法結界が張られています。つい数日前、何者かがこの屋敷の会話を盗聴していた事が判明しました。ギャド様にお伝えしておきたい事があるのです」

「穏やかじゃねぇな?おっちゃんの指示か?」

「父と、私の考えで動いております」

机に置かれているのは、随分古い本だな?
一体いつ頃の物だ?ここまで古い本サウジスカルで見たのは王宮の図書館の秘蔵庫以来だぞ?

「20年程前、この国から一斉に魔力が消え去った事件を覚えておりますか?」

「いや。俺も小さかったからな?話は聞いた事がある。でも、1日かそこらで元どおりになったんだろ?」

「はい。当時父はまだ宰相になる前で政務官でした。最近陛下の様子がお変わりになられたと伺って、その変わり方が、その当時の皇帝様と、とても似ているらしいのです。それで、気になって当時の事を色々調べてみました。私、文学生だった頃の友人がいるものですから」

へぇ?見た目によらず交友関係が広いんだな?
今度俺にも紹介してくれ。一応な?

「そうしたら、気になる文献を見つけまして・・・ゼクトリアムに関する記録なのですが・・・・」

「ゼクトリアム?ハイトの実家の事か?」

「いえ。それが、家名ではなく。どうやらこの本に記されているゼクトリアムとは、精霊の子という意味があるようなのです。それで、その、ゼクトリアムとは」

なんかハッキリしねぇな?
それに、それと陛下が変わった事と何か関係してんのか?

「どうも、この国にそびえ立つ大きな木の核・を意味するらしく、その核は我々人間の手で、あの木から切り離されたとか。そしてその核は決して元に戻れないように、隠されたそうです。樹木はそれを取り返そうと、時折人を惑わすらしいのです。その木に触れた者を」

「はぁ?確かにあの木の周りは、デズロ様以外立ち入れないが、デズロ様はピンピンしてたぜ?元々おかしい奴は大丈夫とかか?」

「デズロ様は、他国の人間です。もしかしたら操作されるのは、この国の人間だけなのかも知れないです。確証はありませんが。あと、気になる点がもう一つ。ハイト様の家の事ですが」

あの謎に包まれたゼクトリアム家な?
噂は色々聞いていたがハイトがあんな感じだからなぁ。
フィクスに聞く限り普通の家っぽかったから気にしてなかったけど、なんかあんのか?

「20年前の事件が起きた時、実はゼクトリアム家の奥方様のお腹にはハイト様が宿っていたそうなのですが、流産しております。当時の乳母がそう証言したとか。それ以降あの家に子供は出来ていないのです」

「ん?でも、ハイトはちゃんと産まれたよな?だから今いるんだろ?」

「・・・・・・・」

ちょっと待てよ。
悪い冗談はやめて欲しい。
この話の流れだと悪い方向にしか思考が働かないだろ?

「もし、魔力が一斉に消え去った理由が、そこにあるのだとしたら。そして、その核がハイト様だったとしたら?あの木がハイト様を取り返そうとしているのかも知れません」

「そんな、おとぎ話みたいな話、信じろと言われてもな」

「セルシス様はハイト様をオスカール攻略戦の第1陣に組み込まれるおつもりです。ギャド様はそれを陛下から聞いておりますか?」

「な!」

聞いてねぇぞ、そんな事!

なんで副団長自ら先頭切って突っ込んで行くんだ、俺じゃあるめぇし!アイツは指揮官だろが!!

「ギャド様、お気をつけ下さい。今、宮廷はエルハド様とデズロ様を失い迷走しております。そして、このまま戦争が始まれば取り返しが付かなくなるかも知れません」

だぁあああああ!!俺が最も不得意な分野きたぁ!

敵ぶっ倒して勝てばオッケーでいいじゃねぇか!
なんで内側外側荒れてんだよ!!
こんな事ならエルハド様達を縛って引き止めておけばよかったぜ。居なくなって分かる、この有り難み!

「問題はもう一つ。万が一ハイト様が殺されて、あの木に奪われた時。この地に何が起こるのかは私達では分かりません。最悪、この国が失くなってしまうという可能性も有り得ます」

ハイト、ハイトはこの事、知ってんのか?
いや、でもよ。今までそんな素振りは・・・・。


"欲しいものがあるんです。それを手に入れます"



あ。だから、お前生き急いでたのか?
当時はそれで滅茶滅茶鍛えてやったんだっけな?
今では俺を顎で使うほど成長したもんな?
なんつーか、俺、複雑だ!
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