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恨むぜ、前世兄ちゃん

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 即答する私に、セルドアは満足げに目を細め、喉を鳴らして笑った。

「……いやはや。リッカは、本当弄りがいがありますね。いちいち反応が面白いから、見てて飽きないです。ハミルが、リッカに義兄呼びされて喜んでいた気持ちも、何だか分かる気がします。リッカみたいな妹なら、私も欲しいですから」

 ーー私は隙あれば、笑えない冗談で人を弄ろうとする兄さんなんてごめんだよ!

 そんなのは前世の兄ちゃんだけで、十分だ!

 ……前世の兄ちゃんは、人を捕まえて真面目人間だの、もっとお洒落しろ、鶏臭いぞだの、失礼なこと色々ぶっこく癖に、私が完全無視貫くと、捨てられた犬みたいなみたいな目で見つめて来たんだよね。強面ヤンキーの癖にさ。
 つい、可愛そうになって、兄ちゃんを傷つけないような範囲のオーバーリアクションで返してあていた前世私の優しさよ。

 ……まずい。そのリアクション、今世でも癖になってないか。
 私は、セルドアを喜ばせる義理はないから、できれば抑えたいところだけど。

「……ほら。リッカ。一度私のことも、セルドア兄さんと呼んでみなさい?」

「……いやです」

「拗ねてるということは、やっぱり私に恋愛対象で見られたかったということですか?」

「違いますけど、いーやーでーす! 呼んであげる意味がありませーん!」

 ……ああ、それなのに反射的に出てしまう、このリアクション。
 もう既に結婚もできる年齢なのに、これじゃあ小学生の子どもみたいじゃないか。

 ーー恨むぜ、前世兄ちゃん。

 兄ちゃんがあまりに大型わんこみたいだったせいで、ドエス変態モノクル野郎から気に入られちゃったじゃないか。

「……まあ、いいです。今は引いてあげますよ。今はまだ、ね」

 意味深な笑みを浮かべるセルドアのハートは、それでもまだ紫色のままだ。

 ……なら、良いのか?
 むしろ、変に異性として意識されるよりは、不本意だけど、妹扱いされておいた方がいい……のかな?
 このハートの意味と段階がよくわからないから、何とも言えぬ。

「それじゃあ、そろそろ牧場の設備を案内しますね。着いて来て下さい」
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