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母ドラゴン

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 ……だから、ラドさん。ここでほっぺ舐め舐めしないで。猫みたいに喉鳴らしてないで。(爬虫類っぽいのに、喉鳴るのね。君)
 なんか、手遅れです、って感じがするから。ラドさん。君の一生に関わる問題なんだから。もっと真面目に番選んでよ。ね?

【……まあ、そう思うならそれでいい。結局のところ、全ては息子と君自身の気持ち次第だ。愛することも、愛せないことも、他者がどうにかねじ曲げられることでもない。私が番しか愛せないことが、何よりそれを証明している】

 そう伝えて、母ドラゴンは目を細めた。

【……今日君に、そして孵化した息子に会えて良かった。君は無害で善良な存在だ。世界の未来も、息子の未来も、けして悪くなることはないだろう】

 ………まあ、比較的人畜無害な人間だとは思うけど。

「……善良と言ってもらえるほど、清く正しい存在でもありませんけどね。結構自分勝手で、図々しいですし」

【少なくとも、悪人ではない。君は自分勝手で、図々しいと自称しているが、本当にそういう人間なら自分のことはそんな風に言えないものさ】

 脳に響くその声は、優しく穏やかで、母さんや姉さんを思わせた。

 ……優しく温かい家族に、秘密を作って自分の欲求を満たしている時点で、十分に自分勝手で、図々しいと思うけど。
 だから、そんな風に信頼されると、胸が痛くなる。

【「定めの君」。ーー息子を、どうかよろしくお願いします】

 そう言って頭を下げるドラゴンの姿は、紛れもなく「お母さん」そのもので。
 何だか、とても胸が痛くて仕方なかった。




「今日は、お疲れ様でした。リッカ」

 その後、親ドラゴンと十分に触れ合って満足したのか、私の首に巻きつくように眠ったラドを連れて(この襟巻き、毛皮がないからとても冷たい)転移魔法で牧場に戻って来た。
 ハミルさんは、まだ何か言いたげにしてたが、セルドアが話はここで終わりとばかりに強行突破してくれたので、正直助かった。
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