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神話の正しさ

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 小さくばらばらになった体では、姿の異なる子どもを産むことはできなくなる。
 けれど、植物は女神リハニーアの提案を喜んで受け入れた。

『私は十分、子を産みました。これ以上生み増やさなくても、あとは子らが自分達で繁殖していくでしょう。私はそれより、子を育てる礎になりたいのです』

 そして動物の母なる植物は、様々な役に立つ植物としてリハニーアの母体である大地に広がっていったのだ。



「……それって、本当の話なんですか」

 ドラゴンから聞いた世界創造の話とは、随分テイストが違うから思わず突っ込んでしまった。
 なんていうか、ギリシャと東南アジアとかの神話を合わせた感じ?
 人類の母なる女性が死んで、その死体から穀物が生まれた系の話なんかあったよね。ミクロネシア系らへんで。

 私の言葉に、ハルクは呆れたようにため息を吐いて、肩を竦めた。

「神話に本当も嘘もあるか、馬鹿。ただ物語があり、それを信じる者がいるってだけの話だ」

 う……正論。
 なんかリアルっぽい世界創造の話聞いたから勘違いしたけど、そもそも神話ってそういうもんだものな。これはハルクが正しい。

「まあ、植物学者の見解からすれば、間違いなく大嘘だと断言できるがな。食われ、利用される為だけに存在する植物なんかいてたまるか。植物は、もっと強かだ。動物と共生はしても、一方的に搾取される側として甘んじたりはしない」

 あっさりとそう言いきるハルクに、思わずじっと見つめてしまう。
 ……そういった所に違和感を抱いたから、宗教者じゃなく学者の道を選んだのかな。

「ーー勘違いするなよ。チビガキ。オレは、リハニーア教の教え自体を間違っているとは、思っていない。多少とんでも理論であっても、それを信じる者がいて、それが救いに繋がっているなら、それはそれで正しい教えなんだ。リハニーア教は、植物を信望することで、確かに人を救っている。薬草や、食用可能な植物の知識を広めることでな」

「…………」

「だけど、オレにはそれじゃあ足りなかった。……人を救う喜びよりも、知識欲の方が勝ってしまったんだ」

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