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もう一人の転生者3

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「えと……それは、どういう意味で」

 ……なんかさらっと、私の根本意識を覆す衝撃発言された気がする。

 私の言葉に、マリアさんは小さく苦笑いを浮かべて。

「前世では私、原因不明の難病にかかってて。歩くこともできない上に、しょっちゅう色んな病気を併発して寝込んでばかりいたんだよね。乙女ゲームやネット小説だけが、唯一の楽しみでさ。学校もろくに通えなかったけど頑張って大検を取って、夢の女子大生にはなれたんだけど、結局入学式にすら行けないまま死んじゃって」

 そしたら、女神様がやって来てくれたんだ。そう言ってマリアさんは目を細めた。

「『お前の難病は、転生の時に魂に傷がついたのが原因だった』『詫びとして、お前が望む世界に転生させてやる』って言われて……ネット小説で見てた異世界転生が本当にあったんだ!って、あの時はうれしかったなあ。それで、色々迷ったけど、一番好きだった牧場経営型乙女ゲームの世界に転生させてもらったの」

 ……なるほど。だから、ここは乙女ゲームの世界なのか。……うん?

「それなら何故、マリアさんはヒロインにならなかったんですか?」

「だってネット小説の主流はもはや悪役令嬢ものだったんだもん。このゲームに悪役令嬢はいないけど、ヒロインなんかやってたらいつ立場奪われるかわからないし」

 ……あくやくれいじょう? また知らない単語が出てきたな。

「それにまともに歩いたこともない私が農業なんてできると思えなかったし。大好きな陛下を攻略するなら、イベント乗っ取ってライバルの王女様になった方がいいから、『ヒロインはもっとふさわしい人を転生させてあげてください』って……あっ」

 突然さあっと青ざめたマリアさんは、泣きそうな目で、私を見た。

「……ヒロインは逆ハー転生上等の同じ乙女ゲーマーだって思ってたから今まであまり気にしてなかったけど、リッカちゃんにとってはこれ、完全に巻き込まれ案件よね。私のせいで、望んでもない知らない異世界に転生しちゃったのよね。これ、よくよく考えたら、私すごくひどいことしてない? 鬼畜じゃない? ご、ごめんなさい」

「……いや、それは別にいいんですが」

 確かに世界を越えての別れはつらかったけど、同じ世界にいようと死んだ時点で前世の家族には二度と会えないのが普通だろう。
 マリアさんの重すぎる過去を考えると、責める気にはならないけど。

「ただ……私って、脇役だったんだなあって思っただけで」

 【定めの君】なんて大層な名前で呼ばれて。
 なんか、ゲームのヒロイン的なポジションにいたけど。
 実際は、マリアさんの代わりに女神様?からヒロイン役に選ばれた都合の良い脇役。
  
 うーん……複雑。複雑ではあるけれど。

「ご、ごめんなさい! 脇役なんていやよね! 私、なんて勝手なことを……」

「いや、嫌じゃないですよ」

 自然と、口もとがほころんだ。

「むしろ--ホッとしました」
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