76 / 225
連載2
聖女の日々54
しおりを挟む
「利用、する……」
「ええ。聖女様は誰かに甘えるのが苦手だと、マナエさんから聞きましたので。そう考えた方がまだ受け入れやすいでしょう?」
「……その結果、利用された誰かが傷ついたとしても?」
私の問いかけにミーシャ王女は朗らかに笑った。
「傷つけたくなければ、真実に気づかせなければいいだけのことです。仮に気づかれたとしても、傷つくなら勝手に傷つかせておけばいい。この世で誰かを傷つけない人間も、誰かに傷つけられない人間もいないですから」
私の手を握る力を強めながら、ミーシャ王女はいたずらっぽい瞳を向ける。
「それに聖女様なら、たとえそれが偽りの信用だったとしても、向けられれば喜んで利用される人だっています。そう……たとえばシャルル兄様だとか」
突然出てきたシャルル王子の名前に、思わず変な声をあげそうになった。
「な、なんでそこでシャルル王子の名前がでるんですか!?」
「あれ、聖女様気づいていないのですか? シャルル兄様は、誰がどう見ても聖女様に恋焦がれているじゃないですか。恋の奴隷にとって好いている御方に尽くせるのは、何よりの喜びだと以前本で読んだことがあります。せいぜい利用してあげてください。腐っても王族。利用価値はあります」
「お、王家の方を利用するなんて……」
「あら。既に聖女様は、自分の目的の為にお父様を利用しているのでしょう? そうじゃなければあの合理主義のお父様が、聖女様をこのように身近に置くはずないですもの。『見返りを求めない善意』を持っているような方は、行動原理がわからない分、お父様のような方にとって何より怖い存在ですから。既に王族の中でも一番偉いお父様を利用しているのですから、兄様ぐらいどうってことないでしょう」
確かに私はライオネル陛下を、ライオネル陛下は私を互いに利用しているのは確かだ。
でもそれはあくまで互いに利がある前提で。私がシャルル王子を利用するのとはまた違う気がする……いや、シャルル王子が喜ぶなら、結局同じ……なのか?
「……何だか、よくわからなくなってきました」
「それは良い兆候です。わからないということは、少なくとも忌避感を抱いていないということですから」
ダークブルーの瞳を細めながら、ミーシャ王女は続けた。
「シャルル兄様を利用することに罪悪感があるのなら、私でも構いませんよ。聖女様の為なら、喜んで利用されてみせます。兄様の方が色々有用かとな思いますが、私も王族の端くれですから。それなりに利用価値はあるかと」
「ええ。聖女様は誰かに甘えるのが苦手だと、マナエさんから聞きましたので。そう考えた方がまだ受け入れやすいでしょう?」
「……その結果、利用された誰かが傷ついたとしても?」
私の問いかけにミーシャ王女は朗らかに笑った。
「傷つけたくなければ、真実に気づかせなければいいだけのことです。仮に気づかれたとしても、傷つくなら勝手に傷つかせておけばいい。この世で誰かを傷つけない人間も、誰かに傷つけられない人間もいないですから」
私の手を握る力を強めながら、ミーシャ王女はいたずらっぽい瞳を向ける。
「それに聖女様なら、たとえそれが偽りの信用だったとしても、向けられれば喜んで利用される人だっています。そう……たとえばシャルル兄様だとか」
突然出てきたシャルル王子の名前に、思わず変な声をあげそうになった。
「な、なんでそこでシャルル王子の名前がでるんですか!?」
「あれ、聖女様気づいていないのですか? シャルル兄様は、誰がどう見ても聖女様に恋焦がれているじゃないですか。恋の奴隷にとって好いている御方に尽くせるのは、何よりの喜びだと以前本で読んだことがあります。せいぜい利用してあげてください。腐っても王族。利用価値はあります」
「お、王家の方を利用するなんて……」
「あら。既に聖女様は、自分の目的の為にお父様を利用しているのでしょう? そうじゃなければあの合理主義のお父様が、聖女様をこのように身近に置くはずないですもの。『見返りを求めない善意』を持っているような方は、行動原理がわからない分、お父様のような方にとって何より怖い存在ですから。既に王族の中でも一番偉いお父様を利用しているのですから、兄様ぐらいどうってことないでしょう」
確かに私はライオネル陛下を、ライオネル陛下は私を互いに利用しているのは確かだ。
でもそれはあくまで互いに利がある前提で。私がシャルル王子を利用するのとはまた違う気がする……いや、シャルル王子が喜ぶなら、結局同じ……なのか?
「……何だか、よくわからなくなってきました」
「それは良い兆候です。わからないということは、少なくとも忌避感を抱いていないということですから」
ダークブルーの瞳を細めながら、ミーシャ王女は続けた。
「シャルル兄様を利用することに罪悪感があるのなら、私でも構いませんよ。聖女様の為なら、喜んで利用されてみせます。兄様の方が色々有用かとな思いますが、私も王族の端くれですから。それなりに利用価値はあるかと」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。