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連載2
聖女の日々54
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「利用、する……」
「ええ。聖女様は誰かに甘えるのが苦手だと、マナエさんから聞きましたので。そう考えた方がまだ受け入れやすいでしょう?」
「……その結果、利用された誰かが傷ついたとしても?」
私の問いかけにミーシャ王女は朗らかに笑った。
「傷つけたくなければ、真実に気づかせなければいいだけのことです。仮に気づかれたとしても、傷つくなら勝手に傷つかせておけばいい。この世で誰かを傷つけない人間も、誰かに傷つけられない人間もいないですから」
私の手を握る力を強めながら、ミーシャ王女はいたずらっぽい瞳を向ける。
「それに聖女様なら、たとえそれが偽りの信用だったとしても、向けられれば喜んで利用される人だっています。そう……たとえばシャルル兄様だとか」
突然出てきたシャルル王子の名前に、思わず変な声をあげそうになった。
「な、なんでそこでシャルル王子の名前がでるんですか!?」
「あれ、聖女様気づいていないのですか? シャルル兄様は、誰がどう見ても聖女様に恋焦がれているじゃないですか。恋の奴隷にとって好いている御方に尽くせるのは、何よりの喜びだと以前本で読んだことがあります。せいぜい利用してあげてください。腐っても王族。利用価値はあります」
「お、王家の方を利用するなんて……」
「あら。既に聖女様は、自分の目的の為にお父様を利用しているのでしょう? そうじゃなければあの合理主義のお父様が、聖女様をこのように身近に置くはずないですもの。『見返りを求めない善意』を持っているような方は、行動原理がわからない分、お父様のような方にとって何より怖い存在ですから。既に王族の中でも一番偉いお父様を利用しているのですから、兄様ぐらいどうってことないでしょう」
確かに私はライオネル陛下を、ライオネル陛下は私を互いに利用しているのは確かだ。
でもそれはあくまで互いに利がある前提で。私がシャルル王子を利用するのとはまた違う気がする……いや、シャルル王子が喜ぶなら、結局同じ……なのか?
「……何だか、よくわからなくなってきました」
「それは良い兆候です。わからないということは、少なくとも忌避感を抱いていないということですから」
ダークブルーの瞳を細めながら、ミーシャ王女は続けた。
「シャルル兄様を利用することに罪悪感があるのなら、私でも構いませんよ。聖女様の為なら、喜んで利用されてみせます。兄様の方が色々有用かとな思いますが、私も王族の端くれですから。それなりに利用価値はあるかと」
「ええ。聖女様は誰かに甘えるのが苦手だと、マナエさんから聞きましたので。そう考えた方がまだ受け入れやすいでしょう?」
「……その結果、利用された誰かが傷ついたとしても?」
私の問いかけにミーシャ王女は朗らかに笑った。
「傷つけたくなければ、真実に気づかせなければいいだけのことです。仮に気づかれたとしても、傷つくなら勝手に傷つかせておけばいい。この世で誰かを傷つけない人間も、誰かに傷つけられない人間もいないですから」
私の手を握る力を強めながら、ミーシャ王女はいたずらっぽい瞳を向ける。
「それに聖女様なら、たとえそれが偽りの信用だったとしても、向けられれば喜んで利用される人だっています。そう……たとえばシャルル兄様だとか」
突然出てきたシャルル王子の名前に、思わず変な声をあげそうになった。
「な、なんでそこでシャルル王子の名前がでるんですか!?」
「あれ、聖女様気づいていないのですか? シャルル兄様は、誰がどう見ても聖女様に恋焦がれているじゃないですか。恋の奴隷にとって好いている御方に尽くせるのは、何よりの喜びだと以前本で読んだことがあります。せいぜい利用してあげてください。腐っても王族。利用価値はあります」
「お、王家の方を利用するなんて……」
「あら。既に聖女様は、自分の目的の為にお父様を利用しているのでしょう? そうじゃなければあの合理主義のお父様が、聖女様をこのように身近に置くはずないですもの。『見返りを求めない善意』を持っているような方は、行動原理がわからない分、お父様のような方にとって何より怖い存在ですから。既に王族の中でも一番偉いお父様を利用しているのですから、兄様ぐらいどうってことないでしょう」
確かに私はライオネル陛下を、ライオネル陛下は私を互いに利用しているのは確かだ。
でもそれはあくまで互いに利がある前提で。私がシャルル王子を利用するのとはまた違う気がする……いや、シャルル王子が喜ぶなら、結局同じ……なのか?
「……何だか、よくわからなくなってきました」
「それは良い兆候です。わからないということは、少なくとも忌避感を抱いていないということですから」
ダークブルーの瞳を細めながら、ミーシャ王女は続けた。
「シャルル兄様を利用することに罪悪感があるのなら、私でも構いませんよ。聖女様の為なら、喜んで利用されてみせます。兄様の方が色々有用かとな思いますが、私も王族の端くれですから。それなりに利用価値はあるかと」
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