処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

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連載2

忘れられた神々7

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 力を封じることに成功したと確信した瞬間、全身の力が抜けて意識が遠くなった。

「聖女さ……」

「ディアナ!」

「……ありがとう。兄様」

 その場に崩れ落ちてしまいそうになった私をすぐさま駆け寄った兄様が、支えてくれた。

「大丈夫か!? 痛かったり、苦しかったりするところはないか!?」

 必死で私を介抱しながら、綺麗なハンカチで優しく鼻血を拭き取ってくれた兄様に、思わず笑みがこぼれる。
 ……本当。兄様は小さい頃から、全然変わらない。
 全然変わらなく、私に優しい。

「大丈夫だよ。……ちょっと気が抜けただけだから。もう痛いとこも、苦しいところもないよ。……でも、足腰に力が入らないから。もう少しだけ、こうやって支えてもらっていていい?」

「当たり前だ」

 兄様に持たれかかりながら、まだ荒い息を整えていると、走り出しかけのような変な格好で固まっていたシャルル王子がばつが悪そうにそっぽを向いた。

「……一応私も、倒れる聖女様を受け止めようとしてたのですけどね……いやはや。お兄様は足が速い……」

「どうかしましたか? シャルル王子」

「いえ、何でもありません。……それより。聖女様が力を封じたこの剣、どうしましょうか? あれだったら、私が持っていても……」

「っ駄目です!」

 剣に手を伸ばしたシャルル王子を、慌てて引き止める。

「いくら力を封じたからといって、いつ封印が解けるかわかりません。もし封印が解けたら、剣がシャルル王子にどのような影響を及ぼすか、可能性は未知数です。迂闊に触れるべきじゃありません」

「それじゃあ、剣はここにこのまま置いておくのですか?」

「それは……」

 できることなら、万が一にもこの剣が誰にも渡らないように、近くに置いておきたい。
 でもこんなあからさまに危険な代物を、人に任せてしまうのは、気が引けた。

「……この剣は、私が……」

「ーーそういうことならば、この剣は俺が持っておくべきだな。【災厄の魔女の呪い】の石と、同様に」

「っ兄様!?」

 焦る私を落ち着かせるように、兄様は優しく笑った。

「ディアナには、剣を持つ習慣がないだろう? 俺が持つのが一番自然だ。……大丈夫。ディアナの封印は強力だよ。解呪の時に発生した石は、今まで俺が保管していて一度も異常をきたしたことはない。ディアナはもっと自分の力を信じるべきだ」


 
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