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連載2

忘れられた神々10

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「2種類……?」  

「ええ。人を作った神と、人によって作られた神です」

 にこやかに微笑みながら、予言者は歌うように言葉を紡いだ。

「人をはじめとした、あらゆる生物を作りだした神は絶対的な存在で、人との関わり方も希薄です。このような神は特別人間を愛しているわけではなく、常に傍観者の立場を貫きます。時折、未来の予言を私のようなものに伝えたりして気まぐれに人と関わることがありますが、ただそれだけ。たとえ人間が滅びたとしても、さして気にすることはありません」

 だけど、人によって作りだされた神は違う。そう続けて予言者は、聖堂を顧みた。

「人によって作りだされた神は、いわば人の信仰が神として形になったもの。信仰する人間がいなければ存在することもできないかわりに、人を作りだされた神よりも密接に人間と関わってきます。人間に影響を与え、同時に与えられる。故に、対人間を想定した場合、ある意味では人を作りだした神よりも強い力を発揮することもあるのです」

 人が神を作りだすーーあまりに恐れ多くて、とても私の発想にはない概念だった。
 正直に言えば私は予言者の言っていることが半分くらい理解できていない。
 神は、神だと。それ以上深く神の存在について考えたことなんかなかったから。

「信仰を失い、忘れられた時、このような神は力を失います。たとえ一時期は国教にされていたような強い神だったとしても同じこと。脅威にはなり得ません。混沌の神トリアスは、そういった類の神です」

「で、でも、ご神体の剣からは、確かに【災厄の魔女】の呪いと同じ力が!」

「聖女である貴女がそうおっしゃるのなら、かつて【災厄の魔女】に力を与えたのはトリアスだったのでしょう。でもそれだけです。トリアスが衰えても、【災厄の魔女】の力はトリアスから独立した力として生き続け変化していった。忘れられた今の脆弱なトリアスなら、自分が生み出したはずの【災厄の魔女】の力にも負けます。貴女が、恐れるような存在ではないのです。聖女である貴女は、ただ【災厄の魔女】のことだけ考えればいい」





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