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連載2

決戦の時21

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「……相変わらず聖女様は優しいですね。優し過ぎて、本当にあのあくどい【災厄の魔女】と対決できるのかと、ちょっと心配になります」

 シャルル王子は苦笑いをしながら頬を掻くと、その青い瞳をまっすぐに私に向けて微笑んだ。

「もちろん構いませんよ。貴女の目的の妨げになるなら、私なんかいつでも捨ておいてください」

「でもっ……」

「もともと、貴女がいなければマーナアルハの森で果てていた命です。こうして今まで生きてこれたことに感謝こそしても、貴女を攻める筋合いなぞあるはずもない」

 シャルル王子は迷いなくそう言いきると、忠誠を誓う騎士のように片膝をついた。

「以前も言いましたが。どうぞ私を利用なさってください。私の命は、貴女のものです。貴女にあげます。私が捧げられるものは全部」

「……私にそんな風に思っていただけるような価値があるとほ思えませんが」

「その価値があるかどうかは、私が決めます」

 返事に困って、咄嗟に兄様の方を見ると、兄様は苦々しい顔をして腕組みをしていた。
 でも、何も言わない辺り、シャルル王子が私に捧げる真心自体は否定するつもりはないのだろう。

「……そんなわけで、お兄様。聖女様と二人きりのラブラブ旅は諦めてくださいね。誰に何と言われようと、私はお二人に着いていくと決めてますから」

「……ディアナと二人で旅がしたいが為に、お前の同行を嫌がっているわけではない」

「知ってますよ。お兄様は意外に優しいから」

 くすくす笑いながら、シャルル王子は立ち上がって兄様を見た。

「私は聖女様は当然お慕いしてますが……実は結構、お兄様のことも好きなんですよ」

「はあ?」

「ほら、そういう反応。今まで私の周りの人は、勝手に私に好意を抱いて都合良く動いてくれることが多かったので、そういう反応は新鮮なんです。かと思えば、今みたいに聖女様が私に力を行使しないかもしれないことを気遣ってくれたりしますし」 

「別に俺はお前のことを気遣っているわけじゃない。俺たちの行動のせいで第三王子を死なせたりしたら、たとえ王の許可をとっていても誰に何を言われるか分からないから、心配なだけだ」

「はいはい。そういうことにして起きますよ」

 流すようにそう言って、シャルル王子は再び馬車に乗り込むため入り口のドアに手を掛けた。

「また、ディアナ様とお兄様と一緒に旅ができて嬉しいです。前回はミーシャの命というタイムリミットがあったけど、今回は焦る旅ではない。セーヌヴェットに向かう道中で、色んな話をしましょう。お二人とは、もっと仲良くなりたいので」



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