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連載2

神との戦い10

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「嬉しいです。私の正体に気づいてくれていたのですね」

「あなたが騎士だと騙った時点で、違和感は抱いていました……あなたの姿は、あまりにも騎士らしくないから」

 予言者は線が細く、とても筋肉がついた鍛えられた体をしているようには見えない。
 年齢を自在に変えられる人間をやめた存在だから、そういうものなのかと無理に納得してはいたけど、騎士として鍛えられた兄様や兄様の周りの人の体つきを見る度に、疑念は膨らんだ。

「でもあなたがルトーだと確信したのは、つい先刻……ルイス王がトリアスの神体であることが明らかになった時です」

 忘れられた、対の兄弟神。人間によって作られた神々。
 今の彼らは、人々に存在自体を知られていないから、自身に対する信仰を、神としての力にすることができない。
 兄神である混沌の神トリアスは、自身への信仰の代わりに、器であるルイス王に向けられた畏怖を、神の力に変換して利用しようとした。

 そして、弟神であるルトーは……。

「あなたは自身の存在を人々に忘れさせたかわりに、聖女への信仰を、自分の力に変換していたのですね」 
 
 よくよく考えてみれば、おかしな点はあった。
 ルシトリアの王族だけが存在を知っている秘密の通路は、大聖堂につながっていた。
 秘密の通路が作られたのは、聖女信仰が始まる前で、その時に聖女信仰の為の聖堂が存在しているはずがないのに。
 そして、トリアスの神殿は地図から消されなかったものにされてはいても、法則からその場所を導き出すことはできたのに、どれほど探してもルトーの神殿は見つからなかった。

 そこから導きだせる答えは、一つだ。
 
「あなたは神としての力を維持したまま、自身の存在を人々の認識から消し去る為に、自分の神殿を聖女信仰の為の大聖堂に作り替えたんだ」

 人に作られた神が実体を維持する為には【神体】と【神殿】が必要で、人間の【畏怖】や【信仰】が彼らの神としての力となる。
 逆に言えば、【神体】と【神殿】を維持した状態で【畏怖】や【信仰】を得ることができれば、たとえ人々に忘れられても、強大な力を持った神であり続けることができるのだ。

 ルトーは自らの【神殿】を維持したまま、外側だけを聖女信仰の為の大聖堂に変えて、同一の建物の中で聖女に向けられた【信仰】や【畏怖】を自らの力にすることで、神のままであり続けた。

 神殿から出られない代わりに、神殿の中では誰より強大な力を行使できることも。
 年齢を好きに操作できる、不死の体も。
 人を作った神から、彼だけが予言を聞くことができるのも。

 彼が人をやめた代償で得たのではなく、神である彼が、もともと持っていた力だったのだ。

 
 
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