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連載2

神との戦い11

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 私の言葉に、予言者は目を細める。

「そこまで気づかれるなんて、今代の聖女様は聡明ですね。私が今まで出会ったどの聖女よりも、聡明かもしれません」

「……それは、初代聖女よりもですか?」 

「ええ、もちろん。セーラは最下層の出自で、出会った時は一般教養すらろくに身につけていませんでしたから。最低限の教養は私が伝授しましたが、付け焼き刃でしたから、結局身につけられたのは上辺だけです。あの子は聡明とはほど遠い、愚か過ぎるくらい愚かな少女でした」

 愛おしげな笑みを浮かべながら、予言者は初代聖女への辛辣な評価を語る。
 彼にとって初代聖女の存在がどんなものだったのか、ますますわからなくなった。

「……目を覚ましてから、体内の【厄】の気配を感じなくなったのですが。あなたが消したのですか」

「ええ、もちろん。聖女に力を与えたのは、私ですから。この神殿の中なら、【厄】の一つや二つ簡単に消し去ることができます」

「っそれなら、何故!」

 悪びれる様子もなく、あっさり【厄】を消し去ったことを認めた予言者を、きつくにらみつける。

「それなら何故、その力をミーシャ王女の為に使おうとはしなかったんですか……! 私が救い出さなければ、あの子は亡くなっていたのに、救える力があるのに、どうして!」

「何故って……わかりませんか?」

「分かるって、いったい何を……」

「私がミーシャ王女についた【厄】を祓ったりしたら、誰もあなたを探そうとはしなかったでしょうし、あなたが王都に来ることもなかったでしょう?」

 肩を竦めながらそう言った予言者は、小さくため息を吐いた。

「私は調和の神だなんて言われてますが、もう神としての役割なんかどうだっていいんですよ。元々、勝手に私を作り、信仰した人間と、【人を作った神】から一方的に押し付けられた役割です。それに従うのが当たり前だと思っていたから従っていただけで、別に自分から進んで調和を作り出していたわけではない。それなのにちゃんと、愚兄の神殿を封鎖して、その名を自分の名ごと風化させることで力を奪ったんです。もう十分役割は果たしたでしょう? 後は好きにさせてもらいます」

「……その為に、人が死んだとしても?」

「私は神ですよ? 罪のない人の命がどれだけ失われたとしても、罪悪感なんか抱きません」

 非情な言葉を口にしながら、いつもと変わらない笑みを浮かべる予言者。
 その後ろにある扉の小窓から、一際大きな火柱が上がるのが見えた。

 ……今、大聖堂は一体どれくらい燃えてしまっているのだろう。

 火がこの場所に至るまでは、どれくらい時間があるのだろうか。
 
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