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連載2

幸せの条件8

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 あの時は無我夢中で何を言われているかわからなかったけど、今思えばあれは兄様が初代騎士の生まれ変わりだって言いたかったんじゃないだろうか。
 私が初代聖女の生まれ変わりで、兄様が初代騎士の生まれ変わりだとしたら。
 私達が出会ったのは必然。
 全ては、【人を作った神】の手のひらの上で踊らされていたように感じなくもない。
 
 そう思うと、複雑な感情を抱かないこともないのだけど。

「……それでも、兄様は兄様だから」

 巡り会ったのは運命だったとしても、この気持ちは【人を作った神】によって作られたものじゃない。
 今の私なら、そう断言することができる。
 私の魂の一部にセーラはいても、私がセーラじゃないのと同じように、兄様の魂の一部に初代騎士がいたとしても、兄様は兄様だから。
 
『馬鹿なことを聞くなよ。お前はともかく、神の意思なんぞ俺が知るもんか。たとえ全てが神の掌の上のことだったとしても、いつだって俺は、自分の意思で未来を選んでいるよ』

 私の騎士になると言った兄様は、あの時そう言ってくれた。
 運命だとしても、自分の意思で選んでいることには変わりないと。
 私も同じだ。
 運命だとか関係なく、私は私の意思で兄様の隣にいたい。兄様の隣で共に生きる未来が欲しい。
 
 前世も運命も関係なく、ただ今こうして目の前にいる兄様が誰よりも大好きだから。

「これだけ言っても兄様がまだ決心がつかないなら……いいよ。すぐに答えは出さなくても。これからいくらだって時間はあるんだから、身をもって証明してあげる。私の気持ちが変わらないことを」

 焦りはしない。
 まだ私は自分のこの気持ちに気づいたばかりだし、今の所兄様に私以上に大切な存在はいないということに疑いの余地はない。
 長期戦でも、構わない。兄様の決心がつこうかつかなかろうが、私が兄様の隣に居続けることも、兄様がそれを許し続けるだろうことも、揺るがないはずだから。

「……お前にそこまで言われたら、さすがに俺も腹をくくるよ」

 そう言ってため息を吐いた兄様の顔は、いつの間にか顔を耳まで真っ赤だった。

「まだまだねんねの子どもだと思っていたのになあ……」

 私が握っていた手を引き寄せると、兄様はそのまま私を広い胸で抱きとめてくれた。

「お前が好きだよ。ディアナ。……世界中の誰よりも」

「うん……」

「たとえお前が後悔してもーーすぐにその後悔を忘れるくらい幸せにすると誓うから、どうか俺のお嫁さんになってください」

 ーーそんな言葉と共に優しく落とされた3度目のキスの感触を、私は一生忘れないだろう。


 そうしてその日、私と兄様は、【兄妹】の他の、新しい関係を手に入れることができたのだった。

「………へーーーー、私がルシトリアに向かう馬車の中で【厄】に苦しんでいる間に、お二人はそういう関係になられたんですか。へーーーー」
 
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