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連載2

新たなる旅立ち1

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 父さん達に引き連れられて帰国後、【厄】の治癒を終えるなり丸一日こんこんと眠りについたシャルル王子から、目を覚ますなりそう言われて、思わず視線を逸らした。

 な、なんで?

 私と兄様、今、普通にしてたよね? 

 なんでこ、恋人同士になったことが、シャルル王子にばれてるの?

 焦る私とは裏腹に、兄様は一切の動揺を見せることなく片眉をひそめた。

「なんの話だ」

「ばればれなんですよ。……キスマーク、ついてますよ」

「え!?」

「嘘をつくな。見える所にはつけてない」

「だーかーら、隠すつもりあるならさらっとそういうこと言わないでくださいよ! お兄様! 念願叶って浮かれてんのが見え見えなんですよ!」

 くわっと目を見開き王子様らしからぬ怒りの表情を見せるシャルル王子を目の当たりにしても、兄様は涼しい顔を崩さない。

 ……う、浮かれてる?

 私にはいつもの兄様にしか見えないんだけど、シャルル王子にはどう見えているんだろう。


「……まあ、いいですけどね。馬車の中でお父様から、実はお二人は血が繫がってないと聞いた時点で、そんな気はしてましたし。ぽっと出の私なんかじゃ、ずっと聖女様を支え続けてきたお兄様に敵うはずもありません」

「血は繫がってるぞ。本当は兄妹じゃなく、従兄弟なだけだ」

「揚げ足取らないでください! 法で結婚を許されるなら同じことです!」

 両手で顔を覆ってさめざめと泣く真似をするシャルル王子に、何て言葉をかけるべきかわからない。

 ……というか父様わざわざ、私と兄様が本当は兄妹じゃないって伝えたの?
 え、なんで?

「父さんがわざわざそんなことを伝えたということは、さてはお前、馬車の中でディアナを嫁にもらえないかとかなんとか、余計なことを父さんに言ったんだろ。【厄】で死にかけてた癖に、よくそんなふざけたことを言う余裕あったな」

「だって想い人のお父様と、数日一緒に過ごす機会なんか滅多にないじゃないですか! おそらくその場にいたら邪魔したであろうお兄様も不在な状況となると、自分を売り込む絶好のチャンスと思っても仕方ないでしょう! それなのにそれなのに……」

「言っておくが俺がいなかったとしても、ディアナを聖女にしたお前に対する、父さんの評価は最悪だからな。王族と縁故になるのも絶対ごめんだろうし、お前がディアナと結婚できる可能性なんかほとんど0に等しいぞ」

「0に等しくても、わずかでも可能性があれば挑戦するのが私なんですー!」

 ……シャルル王子、なんか本当に少し涙目?
 どこまでが泣き真似で、どこまでが本気なのか、よくわからないぞ。

 高そうな刺繍入りのハンカチで、チーンと鼻をかんだシャルル王子は、充血した目で上目遣いに兄様を睨んだ。

「……それよりも許せないのは、お兄様が約束を守ってくださらなかったことです」
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