処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

連載2

新たなる旅立ち2

｢……約束？　何のことだ？｣

｢はい、忘れたふりしてもだめでーす！　今、一瞬だけ、かなり気まずそうな表情をしたのちゃんと確認しましたー！　なんだかんだでお兄様は優しいから、実はちょっと気にしていることは、お見通しでーす！｣　

｢……なんでお前は、変な所鋭いんだよ｣

　苦虫を噛みつぶしたような顔で頭をかきながら、兄様は罰が悪そうに視線を逸らした。

｢……悪かったよ。ユーリアを倒したら迎えに行くって言ってたのに、迎えに行けなくて｣

｢本当ですよ！　私、お父様が救出に来てくださった時に、『お兄様が迎えに来ると言っていたので』と一度断ったんですよ!?　なのにお兄様は聖女様と共に、その時にはもうルシトリアにいたなんてひど過ぎます！　あのまま約束を信じて待ち続けていたら、今頃私死んでるじゃないですか！！｣

｢だから悪かったって！　けど仕方ないだろう？　ディアナが、予言者に無理やり転移させられたんだから。あの時に俺が追わなきゃ、ディアナは今頃この世にいなかったかもしれないんだぞ？｣

｢ええ、ええ、わかってますよ！　お兄様が正しいことをしたことくらい！　私の命と聖女様の命じゃ、お兄様にとって比べるのもおこがましいくらい差があることもわかってます！　わかってますけど、私にだって怒る権利くらいあるでしょう？　お兄様なら、必ず約束を守ってくれると信じてた、信じてたのに！｣

　……ええと、何これ。

　痴話げんか？　三角関係のもつれ的な修羅場？　
　
　兄様がシャルル王子を迎えに行けなかった原因の私は、なんて口を挟めばいいのかな？

　とりあえず謝るべき、かな？

｢……シャルル王子。本当、ごめんなさい。私が予言者から指輪なんかはめられたせいで……｣

｢いーえ、聖女様は何も謝ることはありませんよ！　約束したのも、約束を破る選択をしたのもお兄様ご自身ですから！　悪いのは全部お兄様です！｣

　……食い気味で否定されちゃった。

　兄様も、罪悪感があるからか、シャルル王子に言い返せないみたいだし。
　どうしよう。これ。

｢私は今回の件で大いに傷つきました！　ということでお兄様にはその責任を取ってもらいます！｣

｢責任を取るって……一体何をさせる気だよ。俺に｣

　ため息を吐く兄様に、シャルル王子はにいっと王子様らしからぬ悪そうな笑みを浮かべて、人差し指を突きつけた。

｢責任を取って……お兄様には、私の友人になってもらいます！｣