183 / 191
それぞれの恋の行方
それぞれの恋の行方7
しおりを挟む
「――あれー、見つからないねぇ。いないのかな」
「イナイノカモシレマセンネ。昨日モ、見ツカラナカッタノデスヨネ?」
「…………」
「うん、そう。もしかしたら、何か事情があって訓練休んでいるのかもね―。仕方ないからこの差し入れ、みんなで食べちゃおうか」
「イインデスカ!? コノ【パフェ】トイウ食ベ物トテモ美味シイノデ、トテモ嬉シイデス」
「……………」
「……もうっ、シルフィってば、いつまで拗ねてるの!」
私はピクニックセットを広げながら、さっきからふてくされたままのシルフィを、叱りつける。
シルフィは私の言葉にぷぅとほっぺを膨らませてソッポを向いた。
「……ダッテ、マスター今日、私一人ヲ呼ンデクレナカッタ」
……う、可愛い。
可愛いが、ここで甘やかしたら、ひいきになってしまう。ただでさえ拗ねている他の精霊達(特にサーラム)が、ますます拗ねる。
心を鬼にして、きっとシルフィを睨み付ける。
「……昨日はちゃんと約束通り、一日シルフィだけといたでしょう。特別扱いは、終わりですっ」
先日の舞踏会の時にシルフィに約束したご褒美ーーそれは、【他の精霊を召喚しない状態で、私一人で一日マスターといたい】という何とも可愛いものだった。
もう可愛い過ぎて可愛い過ぎて、鼻血を吹きそうになるのを耐えながら、お望み通りに昨日一日ご奉仕させていただいたわけですが、このお嬢様は一日では不足だったようだ。
まあそんな愛らしい我が儘に少しでも応えてあげようと、今日はシルフィと一番仲が良いディーネを二人で呼んだわけだけど、それでもまだ拗ねてるのでいい加減怒ることにする。
……明日さらに拗ねてるサーラムとノムルのご機嫌とりをしなきゃならない、ご主人様の幸せな心労も少しは考えてくれよぉ。
「いつまでも聞き分けがない、悪いこにパフェはあげません。……ディーネ、シルフィの分も食べていーよ」
「エ……」
「……ッ!」
そう言って、二つ分のパフェを差し出す私に、ディーネは困惑の表情を浮かべ、シルフィは泣きそうに顔を歪める。
……ふふふ、こんなこと言ったら、またシルフィが「マスターはディーネの方が好きで私のことなんかどうでもいーんだ!」っていうと思うでしょう? 大丈夫。なんの問題もない。
ディーネは差し出したパフェとシルフィを交互にちらちらと眺めて、悲しげに眉を垂らせた。
「……シルフィガ食べナイノニ、私ダケ貰ウワケニハイキマセン」
「……ッ!」
驚愕の表情を浮かべるディーネに、シルフィは近寄って言って、どこかせつなげに微笑みながら頭を下げて。
「……ゴメンナサイ、シルフィ。マスタートノ時間、邪魔シチャッテ」
……ああ、ディーネ、マジ天使。
そんなディーネの様子にシルフィはわたわた狼狽してたが、やがてそっと肩を落として溜め息を吐き出した。
「……アー、モウ。ディーネガ良イコ過ギテ、ワガママ言ッテル私ガ馬鹿ミタイジャナイ」
「ゴ、ゴメンナサイ……」
「ウウン。……謝ルノハ私ノ方ダヨ」
シルフィもまた眉を垂らして笑いながら、ディーネに頭を下げた。
「邪魔ニシチャッテ、ゴメンネ。ディーネ。……マスターモ、ワガママ言ッテゴメンナサイ。私モ一緒二パフェ食ベテイイ?」
……いや、ディーネだけじゃない!素直に謝るシルフィもまた天使! てかうちのこ、皆オール天使!
背中に翼が見えるのは、エンジェちゃんじゃなく、このこらだ……!
「もちろん! みんなで一緒に食べよう」
それぞれパフェを用意して、三人でおやつにする。
顔をきらきらさせて美味しそうにパフェを頬張る二人がとても可愛い。
「……モー、ディーネッタラ、頬ッペタニ、クリームツイテルヨ。取ッテアゲル」
「アリガトウゴザイマス」
ディーネの頬についた生クリームを、しょうがないなあとでも言うように拭うシルフィの姿に生ぬるい気持ちになる。
……内気で大人しいからシルフィもサーラムも、ディーネを妹扱いしている節があるけど、実際精霊達の中で一番精神年齢高いのってディーネだよね。その分一歩引いて我慢しちゃうから、よけい注意して構ってあげないといけないけど。
敢えて順番をつけるなら、長女:ディーネ、次女:シルフィ、長男(三番目):サーラム、末っ子:ノムルって感じ? ……シルフィもサーラムも言ったら拗ねるから、敢えて口には出さんけど。
まあ、なんにせよ、微笑ましい。
そんな疑似姉弟関係に想いを馳せながら、パフェを口に運ぶ。……さすが、ボレア家料理人。この試作品、かなりカフェテリアに近いわ。よくもまあ口頭アドバイスだけでここまで近づけたものだわ。
……デイビッドにも、これ食べさせてあげたかったんだけどなあ。
昨日、今日と差し入れを持って森の中を散策しているのに、何故だかデイビッドと出会えずじまいである。……まあこんな広い森の中で今まですんなり会えてた方が、すごいのかもしれない。
大分日も短くなってきた。真っ暗になる前に帰ろう。
……仕方ないから、また明日森に来てみるか。
そう思ってパフェを食べ終わるなり、ディーネとシルフィを伴って家路についた。
――しかし
「マスター、マスター! シルフィバッカリ、ズルイ! 贔屓ダ! 贔屓!」
「……だから、サーラム。今日はちゃんとサーラムだけ呼んでるでない」
「シルフィ一日一緒ダッタッテ聞イタゾ! 俺モ放課後ダケジャナクテ一日!」
「……くそっ……可愛い……サーラムが今度、何かご褒美あげるようなことしてくれたらね」
「絶対ダゾ!」
次の日もまた、森でデイビッドに会うことは出来なかった。
「……グウ」
「……おーい。ノムルさんや。人の頭の上で眠って、それ護衛の意味あるのかい?」
「……グウグウ……」
「……そんなに眠たいなら、精霊界帰る? 他の子ら呼ぶ?」
「……ヤダ」
「(起きてた……!?)」
「マスターノ体温、一番好キ。……一番、気持チヨク、寝レル。……俺ダケ、一人占メ出来ナイ、ズルイ。……チャント、何カアレバ、スグ起キル……」
「……っく、そこで髪にしがみつくデレを出すなんて……ズルいぞ、ノムル。……超あざと可愛い……」
次の日も、見つからなかった。
次の次の日も、そのまた次の日も、森の中でデイビッドに出くわすことは無かった。
「イナイノカモシレマセンネ。昨日モ、見ツカラナカッタノデスヨネ?」
「…………」
「うん、そう。もしかしたら、何か事情があって訓練休んでいるのかもね―。仕方ないからこの差し入れ、みんなで食べちゃおうか」
「イインデスカ!? コノ【パフェ】トイウ食ベ物トテモ美味シイノデ、トテモ嬉シイデス」
「……………」
「……もうっ、シルフィってば、いつまで拗ねてるの!」
私はピクニックセットを広げながら、さっきからふてくされたままのシルフィを、叱りつける。
シルフィは私の言葉にぷぅとほっぺを膨らませてソッポを向いた。
「……ダッテ、マスター今日、私一人ヲ呼ンデクレナカッタ」
……う、可愛い。
可愛いが、ここで甘やかしたら、ひいきになってしまう。ただでさえ拗ねている他の精霊達(特にサーラム)が、ますます拗ねる。
心を鬼にして、きっとシルフィを睨み付ける。
「……昨日はちゃんと約束通り、一日シルフィだけといたでしょう。特別扱いは、終わりですっ」
先日の舞踏会の時にシルフィに約束したご褒美ーーそれは、【他の精霊を召喚しない状態で、私一人で一日マスターといたい】という何とも可愛いものだった。
もう可愛い過ぎて可愛い過ぎて、鼻血を吹きそうになるのを耐えながら、お望み通りに昨日一日ご奉仕させていただいたわけですが、このお嬢様は一日では不足だったようだ。
まあそんな愛らしい我が儘に少しでも応えてあげようと、今日はシルフィと一番仲が良いディーネを二人で呼んだわけだけど、それでもまだ拗ねてるのでいい加減怒ることにする。
……明日さらに拗ねてるサーラムとノムルのご機嫌とりをしなきゃならない、ご主人様の幸せな心労も少しは考えてくれよぉ。
「いつまでも聞き分けがない、悪いこにパフェはあげません。……ディーネ、シルフィの分も食べていーよ」
「エ……」
「……ッ!」
そう言って、二つ分のパフェを差し出す私に、ディーネは困惑の表情を浮かべ、シルフィは泣きそうに顔を歪める。
……ふふふ、こんなこと言ったら、またシルフィが「マスターはディーネの方が好きで私のことなんかどうでもいーんだ!」っていうと思うでしょう? 大丈夫。なんの問題もない。
ディーネは差し出したパフェとシルフィを交互にちらちらと眺めて、悲しげに眉を垂らせた。
「……シルフィガ食べナイノニ、私ダケ貰ウワケニハイキマセン」
「……ッ!」
驚愕の表情を浮かべるディーネに、シルフィは近寄って言って、どこかせつなげに微笑みながら頭を下げて。
「……ゴメンナサイ、シルフィ。マスタートノ時間、邪魔シチャッテ」
……ああ、ディーネ、マジ天使。
そんなディーネの様子にシルフィはわたわた狼狽してたが、やがてそっと肩を落として溜め息を吐き出した。
「……アー、モウ。ディーネガ良イコ過ギテ、ワガママ言ッテル私ガ馬鹿ミタイジャナイ」
「ゴ、ゴメンナサイ……」
「ウウン。……謝ルノハ私ノ方ダヨ」
シルフィもまた眉を垂らして笑いながら、ディーネに頭を下げた。
「邪魔ニシチャッテ、ゴメンネ。ディーネ。……マスターモ、ワガママ言ッテゴメンナサイ。私モ一緒二パフェ食ベテイイ?」
……いや、ディーネだけじゃない!素直に謝るシルフィもまた天使! てかうちのこ、皆オール天使!
背中に翼が見えるのは、エンジェちゃんじゃなく、このこらだ……!
「もちろん! みんなで一緒に食べよう」
それぞれパフェを用意して、三人でおやつにする。
顔をきらきらさせて美味しそうにパフェを頬張る二人がとても可愛い。
「……モー、ディーネッタラ、頬ッペタニ、クリームツイテルヨ。取ッテアゲル」
「アリガトウゴザイマス」
ディーネの頬についた生クリームを、しょうがないなあとでも言うように拭うシルフィの姿に生ぬるい気持ちになる。
……内気で大人しいからシルフィもサーラムも、ディーネを妹扱いしている節があるけど、実際精霊達の中で一番精神年齢高いのってディーネだよね。その分一歩引いて我慢しちゃうから、よけい注意して構ってあげないといけないけど。
敢えて順番をつけるなら、長女:ディーネ、次女:シルフィ、長男(三番目):サーラム、末っ子:ノムルって感じ? ……シルフィもサーラムも言ったら拗ねるから、敢えて口には出さんけど。
まあ、なんにせよ、微笑ましい。
そんな疑似姉弟関係に想いを馳せながら、パフェを口に運ぶ。……さすが、ボレア家料理人。この試作品、かなりカフェテリアに近いわ。よくもまあ口頭アドバイスだけでここまで近づけたものだわ。
……デイビッドにも、これ食べさせてあげたかったんだけどなあ。
昨日、今日と差し入れを持って森の中を散策しているのに、何故だかデイビッドと出会えずじまいである。……まあこんな広い森の中で今まですんなり会えてた方が、すごいのかもしれない。
大分日も短くなってきた。真っ暗になる前に帰ろう。
……仕方ないから、また明日森に来てみるか。
そう思ってパフェを食べ終わるなり、ディーネとシルフィを伴って家路についた。
――しかし
「マスター、マスター! シルフィバッカリ、ズルイ! 贔屓ダ! 贔屓!」
「……だから、サーラム。今日はちゃんとサーラムだけ呼んでるでない」
「シルフィ一日一緒ダッタッテ聞イタゾ! 俺モ放課後ダケジャナクテ一日!」
「……くそっ……可愛い……サーラムが今度、何かご褒美あげるようなことしてくれたらね」
「絶対ダゾ!」
次の日もまた、森でデイビッドに会うことは出来なかった。
「……グウ」
「……おーい。ノムルさんや。人の頭の上で眠って、それ護衛の意味あるのかい?」
「……グウグウ……」
「……そんなに眠たいなら、精霊界帰る? 他の子ら呼ぶ?」
「……ヤダ」
「(起きてた……!?)」
「マスターノ体温、一番好キ。……一番、気持チヨク、寝レル。……俺ダケ、一人占メ出来ナイ、ズルイ。……チャント、何カアレバ、スグ起キル……」
「……っく、そこで髪にしがみつくデレを出すなんて……ズルいぞ、ノムル。……超あざと可愛い……」
次の日も、見つからなかった。
次の次の日も、そのまた次の日も、森の中でデイビッドに出くわすことは無かった。
0
あなたにおすすめの小説
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。
ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。
小説家になろう様でも投稿しています。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる