【漫画版公開中】転移先は女子大生の部屋でした‐ある日、美少女姫様とイケメン騎士様が転がり込んできたら‐

原案:トウキ汐・作画:猫倉ありす

文字の大きさ
19 / 56

元カレと友達と②

しおりを挟む
 高槻颯太と遭遇した一週間後、いつのようにバイトへやって来た知花が、バックヤードで荷物を片付けている時だった。
 同じ時間帯にシフトが入っていた、二つ上の先輩が慌てた様子で同じくバックヤードへと入ってくる。

「松原先輩?どうかしたんですか?」
「しっ!」

 先輩は知花の声を制止し、ぴたりと扉に張り付いたままマジックミラー越しに店内の様子を窺っていた。

「…知花ちゃん、あの茶髪の爽やかイケメン君とどういう関係?」

 一体誰のことを言っているのかと、知花もマジックミラーを覗き込む。
 そこに居たのは太一と話す颯太だ。
 注文したであろうドリンクは既にカウンターに置かれているのに、それを手にとることもなく太一と話し込んでいる。

「……元カレです」
「あー…あれ、ヤバいでしょ?大丈夫?あの太一ですら、追い払うのに苦労してる」

 接客業ゆえ客が引き起こすトラブルはつきものだ。
 特に厄介な客に関しては、店長が出る前に太一が上手く話を付けてくれるのだが、今日の人物はそうはいかないだろう。

「さっき、横を通ってちらっと聞いたけど、知花ちゃんのこと聞いてた。二日前も店に来てたし、完全に狙われてるよ」

 稀ではあるが客に好意を寄せらせることもある為、復縁を迫りに来たと思われているようだ。
 知花はざわつきだした胸を抑えつけながら、もう一度二人の様子を見つめた。

(…けど、高槻先輩はそれだけの人じゃない…下手をしたら、太一が…また太一が…)

 頭をよぎったのは、高校生の頃の記憶。

 放課後、ある不祥事が原因で、入っていたバスケ部も突然活動休止にされた知花は、鞄を置いたまま教室から居なくなった太一を探していた。

 別に一緒に帰る約束をしていた訳でもない。
 太一の様子に変わったところなど無かった。

 けれど、何故だか妙な胸騒ぎを感じ、知花は走り出していた。

 校内を走り回り太陽が半分以上沈んだ頃、ようやく見つけた太一は部室の裏手に蹲るように居た。



 今も鮮明に覚えている、あの痣だらけの姿。


 目に近い頬の辺りも蒼く変色し、口の端は切れ、鼻血の拭った痕すら残っていた。

『太一…何で、そんな怪我…』

『知花、高槻先輩が別れてくれるって。これで…

 そう笑った太一が何をしたのか、その一瞬で知花は理解した。
 そして、それがなのかも。

(私のせいだ…)

 そう悟った時、必死に知花は太一に謝った。
 手入れもされていない部室近くの草むらに、制服が土で汚れることも厭わずに、膝をついて必死に謝った。

 あの時太一に暴力をふるったのは、知花と付き合っていた高槻颯太だ。

 人の好さそうな顔をして、裏で人に言えないようなことをしていることを、知花は付き合ってから知った。

 そして気付いた時にはもう手遅れだった。
 別れようとしても、知花がどんなに避けても、颯太はしつこく付き纏った。
 やがて、颯太が仕掛けたある事件がきっかけで、知花の周りの人間関係は見事に壊れ、唯一、変わらずに友人で居続けてくれた太一ですら、傷付ける結果になってしまった。

『…女の子達のことと、俺を殴ったことを餌に交渉した。もう手出ししないって言質とったから』

 優しく笑う太一の前で、散々泣いたあの日。

 思い出す度に、胸が抉られるように痛い。

(あんなのは、もう耐えられない…)

「あ、やっと帰ってった…」

 松原先輩の声にハッと頭を上げた知花だが、マジックミラーの先には既に颯太の姿は無かった。
 だがカウンターの前に立つ太一の姿は、酷く疲れているように映る。

(…そもそも平気で人を傷つける人が、約束を守るわけないんだ)

 松原先輩が盗み聞ぎした内容と、太一が疲弊している様子から、知花に対しての厄介ごとであることは間違いない。

(だったら、私はを使う)

 あの日から知花は考え方を変えた。
 使使と。

(……もう、太一に迷惑はかけない)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...