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【日常漫画付】聖なる夜は①
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「ハッピーホリデー!!」
パァンというクラッカーの破裂音と独特の匂い。
この匂いを嗅ぐと、幼い頃から家族と共に過ごしたクリスマスを思い出す。
今は時差があるので、おいそれと声を聞くことはできないけれど、今日ばかりはメッセージとプレゼントは、知花の元へとしっかり届けられている。
お陰で今日の知花は上機嫌である。
「凄いわ…!知花とヒューズの共同作業ね!」
「ふふ、久しぶりに頑張った!!」
「知花の手際の良さには感服する」
実家から引っ張ってきた、部屋の天井まで届きそうなクリスマスツリーをリビングに飾り、ダイニングテーブルに広げたのは、クリスマスらしいチキンや、色鮮やかなオードブルだ。
「今年はバイト三昧だと思ってたから、こうやってクリスマス満喫出来て嬉しい!」
知花がへにゃりと笑うと、ソフィアとヒューズが顔を見合わせて笑い合った。
「あのね、知花。私、少しクリスマスのことを調べたのよ」
ソフィアがヒューズに目配せすると、ヒューズがキッチンの片隅に置かれたクーラーボックスから、小さな白い箱を持ちだすと、テーブルに不自然に空けられた場所へと置いた。
どうやら箱の形からケーキのようである。
「知花、ごめんなさい。クリスマスの日はプレゼントを贈り合うっていうのを知ったのだけど、私達…貴女に何かを渡したくても、残る物は…手紙すら規則で渡せないの…だから、せめてと思って…これ…」
ヒューズがそっとその蓋を開けると、そこには三体の砂糖菓子で出来た人形が乗ったケーキだった。
茶色の髪の女の子、ピンク色の髪の女の子、黒髪の男の子だ。
明らかに三人を模している人形たちに、知花は瞳を輝かせ食い入るように観察する。
「すっごい可愛い!!ありがとう、ソフィアちゃん!ヒューズさん!」
「良かった!!知花に喜んでもらえて!!ヒューズに作らせた甲斐があったわ!!」
「………え?」
知花はもう一度ケーキを見る。細部に至るまでプロ顔負けの仕上がりである。
ちなみにヒューズが、スコーンやクッキーなどの焼き菓子を焼いているところを見たことはあるが、ここまで本格的なデコレーションケーキを作っている所を見たことがない、
正直、お店にオーダーした物だと思っていた。
「ヒューズさん…本当に器用ですね…。っていうか、お菓子作りって普通のお料理とはまた違って、難しくないですか…?しかも、ヒューズさんが甘いものを食べているところを、今まで一度も見たことが無いんですけど??」
クリームの絞り方、マジパンで造形物を作るのも、料理の腕前でどうにかなるものではない。
よく見ればアイシングクッキーまで添えられ、細かいレース模様まで描かれている。
知花はじっとヒューズを見つめると、気まずそうにその口を開いた。
「…昔、姉上達が他の令嬢との、お菓子交換なるものにはまったのだが、本人達は作りもしないのに、見栄だけは張りたがってな…代わりに散々作らされたのだ…。甘いものが苦手なのはその時に、失敗した物を散々食べさせられたせいだ…」
「ちなみにヒューズは甘いものを口にすると…吐くわ」
重症だ。
割と何でも平気そうな彼が、顔色を真っ青に染めている。
「すみません…トラウマほじくり返して…。お辛いのに作らせてしまい、大変申し訳ない…。けど…凄く嬉しいです。ありがとうございます!!」
二人が出来る最大限のことで、知花に贈り物をしてくれようとしてくれたことが何より嬉しい。
知花はいそいそと自室へと向かい、淡いピンク色とミントグリーン色に、揃いのアイボリー色のリボンでラッピングされたプレゼントを二人に差し出した。
「えへへ!向こうでも使ってくれると嬉しい」
「開けてもいいかしら?」
「うん!!」
細い指先がサテンで出来リボンをゆっくりと引っ張ると、中から出てきたのは二人の瞳の色合いに合わせたカシミアのマフラーだ。
ヒューズには大人っぽく綺麗な深緑、ソフィアには可愛く赤みがかった紫を選んだ。
肌触りも色合いも綺麗で即決したものだ。
「はぁ…すっごい良い肌触り…」
うっとりと頬擦りをするソフィアの隣で、ヒューズもマフラーをそっと撫でる。
「確かに…。知花…これ、相当高かったのでは…?」
知花のお財布事情を心配し出したヒューズに、予想通りとばかりに苦笑いした。
「今までの家賃、持ってもらってるから。その分を使っていいか、パパに許可を貰ったの。だから…私が出したのはたかがしれてるの。…正直…私がプレゼントしたってことに、ならないかもしれないけど…」
出来れば向こうに戻ってからも、彼等が体面を保てそうな物を贈りたかったのだ。
そうすれば日常的に使えるし、ふと見た時に自分を、この日々を思い出して貰えると思った。
「知花、ありがとう…。貴女からは本当に貰ってばかりで、心苦しいけれど…大事にするわ…」
ソフィアがプレゼントを温かく抱き締める様子に、知花は頬を染めて笑った。
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今回のおまけ漫画はもう一つのクリスマスをお送りします。
パァンというクラッカーの破裂音と独特の匂い。
この匂いを嗅ぐと、幼い頃から家族と共に過ごしたクリスマスを思い出す。
今は時差があるので、おいそれと声を聞くことはできないけれど、今日ばかりはメッセージとプレゼントは、知花の元へとしっかり届けられている。
お陰で今日の知花は上機嫌である。
「凄いわ…!知花とヒューズの共同作業ね!」
「ふふ、久しぶりに頑張った!!」
「知花の手際の良さには感服する」
実家から引っ張ってきた、部屋の天井まで届きそうなクリスマスツリーをリビングに飾り、ダイニングテーブルに広げたのは、クリスマスらしいチキンや、色鮮やかなオードブルだ。
「今年はバイト三昧だと思ってたから、こうやってクリスマス満喫出来て嬉しい!」
知花がへにゃりと笑うと、ソフィアとヒューズが顔を見合わせて笑い合った。
「あのね、知花。私、少しクリスマスのことを調べたのよ」
ソフィアがヒューズに目配せすると、ヒューズがキッチンの片隅に置かれたクーラーボックスから、小さな白い箱を持ちだすと、テーブルに不自然に空けられた場所へと置いた。
どうやら箱の形からケーキのようである。
「知花、ごめんなさい。クリスマスの日はプレゼントを贈り合うっていうのを知ったのだけど、私達…貴女に何かを渡したくても、残る物は…手紙すら規則で渡せないの…だから、せめてと思って…これ…」
ヒューズがそっとその蓋を開けると、そこには三体の砂糖菓子で出来た人形が乗ったケーキだった。
茶色の髪の女の子、ピンク色の髪の女の子、黒髪の男の子だ。
明らかに三人を模している人形たちに、知花は瞳を輝かせ食い入るように観察する。
「すっごい可愛い!!ありがとう、ソフィアちゃん!ヒューズさん!」
「良かった!!知花に喜んでもらえて!!ヒューズに作らせた甲斐があったわ!!」
「………え?」
知花はもう一度ケーキを見る。細部に至るまでプロ顔負けの仕上がりである。
ちなみにヒューズが、スコーンやクッキーなどの焼き菓子を焼いているところを見たことはあるが、ここまで本格的なデコレーションケーキを作っている所を見たことがない、
正直、お店にオーダーした物だと思っていた。
「ヒューズさん…本当に器用ですね…。っていうか、お菓子作りって普通のお料理とはまた違って、難しくないですか…?しかも、ヒューズさんが甘いものを食べているところを、今まで一度も見たことが無いんですけど??」
クリームの絞り方、マジパンで造形物を作るのも、料理の腕前でどうにかなるものではない。
よく見ればアイシングクッキーまで添えられ、細かいレース模様まで描かれている。
知花はじっとヒューズを見つめると、気まずそうにその口を開いた。
「…昔、姉上達が他の令嬢との、お菓子交換なるものにはまったのだが、本人達は作りもしないのに、見栄だけは張りたがってな…代わりに散々作らされたのだ…。甘いものが苦手なのはその時に、失敗した物を散々食べさせられたせいだ…」
「ちなみにヒューズは甘いものを口にすると…吐くわ」
重症だ。
割と何でも平気そうな彼が、顔色を真っ青に染めている。
「すみません…トラウマほじくり返して…。お辛いのに作らせてしまい、大変申し訳ない…。けど…凄く嬉しいです。ありがとうございます!!」
二人が出来る最大限のことで、知花に贈り物をしてくれようとしてくれたことが何より嬉しい。
知花はいそいそと自室へと向かい、淡いピンク色とミントグリーン色に、揃いのアイボリー色のリボンでラッピングされたプレゼントを二人に差し出した。
「えへへ!向こうでも使ってくれると嬉しい」
「開けてもいいかしら?」
「うん!!」
細い指先がサテンで出来リボンをゆっくりと引っ張ると、中から出てきたのは二人の瞳の色合いに合わせたカシミアのマフラーだ。
ヒューズには大人っぽく綺麗な深緑、ソフィアには可愛く赤みがかった紫を選んだ。
肌触りも色合いも綺麗で即決したものだ。
「はぁ…すっごい良い肌触り…」
うっとりと頬擦りをするソフィアの隣で、ヒューズもマフラーをそっと撫でる。
「確かに…。知花…これ、相当高かったのでは…?」
知花のお財布事情を心配し出したヒューズに、予想通りとばかりに苦笑いした。
「今までの家賃、持ってもらってるから。その分を使っていいか、パパに許可を貰ったの。だから…私が出したのはたかがしれてるの。…正直…私がプレゼントしたってことに、ならないかもしれないけど…」
出来れば向こうに戻ってからも、彼等が体面を保てそうな物を贈りたかったのだ。
そうすれば日常的に使えるし、ふと見た時に自分を、この日々を思い出して貰えると思った。
「知花、ありがとう…。貴女からは本当に貰ってばかりで、心苦しいけれど…大事にするわ…」
ソフィアがプレゼントを温かく抱き締める様子に、知花は頬を染めて笑った。
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今回のおまけ漫画はもう一つのクリスマスをお送りします。
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