【漫画版公開中】転移先は女子大生の部屋でした‐ある日、美少女姫様とイケメン騎士様が転がり込んできたら‐

原案:トウキ汐・作画:猫倉ありす

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神様の言葉は②

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 知花が毎年参拝する神社は決まっている。
 昔から父の会社が世話になっているという理由もあるが、三が日でも人で身動きが取れないほど、溢れないところが気に入っている。

「この国の神様はいっぱいいるのよね?」
「そう。八百万の神って言うから、特に多いと思う。神話の神様だけじゃなくて、実際にいた偉い人とかも祀られたりする」

 めかし込んだ二人が並んで歩き、その後ろをヒューズが付いて歩く。
 二人に参拝の手順を説明し、美しく厳粛な境内へと進む。
 年越しはもっと多かっただろうが、元旦のこの時間になると子供連れなどが多く目についた。
 手水舎で清めると賽銭箱へと続く列を見つけると三人は並ぶ。

「ソフィアちゃんは何をお願いするの?」
「やっぱり恋愛かしら!目指すは夫婦円満よ!」

 例え敵国に嫁ぐ身でも、お相手の王太子殿下とは前向きに恋愛する気でいるらしい。
そのまま国同士も仲良くなってくれれば、正に一石二鳥だ。

「ヒューズさんは何をお願いするんですか?」
「無病息災…でしょうか」

 予想通りというか、無欲そうな彼らしい返答に知花は笑ったが、すぐさま隣から不機嫌な声が聞こえてくる。

「やっぱり願いは、ヒューズのこの陳腐なところがどうにかなるように願うわ。この国の神様でもなかなかの難題だと思うから」

 国家間の平穏が、あっという間に従者への苦言へと変貌してしまった。
 厳しい主人の言葉に顔を顰めているであろうヒューズをフォローしようと、彼を見上げるが意外にも彼の表情に変化はない。
 エメラルドグリーンの目はただ真っ直ぐ列の先の方を見つめている。

「ヒューズさん…?」
「…大丈夫だ。問題ない」

 ヒューズは知花の視線が向いていることにも気付いていたが、今の彼は本当の願いを告げることは出来なかった。

(……こんな欲深い願い、この世界の神も聞き入れてはくれないだろうな)

 誰も叶えることの願いを、今、自分は願っている。

(だが…願うだけならば、想うだけなら許されるだろうか…)

 そっと隣の人物に気づかれぬように視線だけを動かす。
 藤色の着物を纏う誰よりも愛らしい彼女にふと頬が緩むと、深呼吸をしてまた引き締める。

(……いつか…いつの日かで構わない…彼女と共に生きていける未来が欲しい…)

 ヒューズは薄青色の空を見上げ、心で強くそう願った。

 ***

 10分ほど待つと知花達の順番へと回り、それぞれが賽銭箱へとお金を投げ入れる。
 手を叩く乾いた音が二度、空へと響いていく。
 そっと薄目を開けて、隣で願うソフィアとヒューズの様子を見る。

(私の願いは…ソフィアちゃんとヒューズさんの願いが叶いますように)

 参拝を終え階段を降りると、その流れで社務所の前へと通りかかる。
 お守りなどを買う人々とは別で、ソフィアの目に留まったのは、細長い白い紙を熱心に見つめる人々だ。

「皆、何を見ているの?」
「あぁ、御神籤っていうの。占いみたいなもので、書かれているのは神様からの言葉かな。つい運試しみたいなノリで引いちゃうけど」

 説明を聞いたら試したくなるのがソフィアの性質。
 すでに目が爛々としている。
 知花が許可を取ろうとヒューズの方へ振り向くと、既に財布を握っているヒューズが知花を見ていた。
 なかなかこの連携も馴染んできたと思う。

 御守やお札が並ぶ中、そちらには目をくれずに巫女へ御神籤を頼む。
 告げた番号から三人とも文字が見えぬように手渡された御神籤を持ち、邪魔にならぬよう社務所の横へと移動する。

「せーのっ!」

 同時に開いた御神籤を覗き込むと、そこには全員『大吉』の文字

「これ、いいの?」
「大当たりみたいなものかな。あとは、自分がよく知りたいと思ってる項目を読む感じかな」
「なるほど。ヒューズ、貴方のを貸しなさい」

 貸すというよりも奪う形だが、ヒューズも慣れた様子で奪われた御神籤を、黙ってソフィアの後ろから覗き込んでいる。

「ヒューズの縁談を見るわ。むこうに戻ったら、山のような釣書と嵐のような見合いをこなす筈だから」
「ひぇ…その言葉だけで、波乱しか見えないんですけど?まぁ…とりあえず、縁談…縁談っと。あった!」

 縁談の項目から知花が二人に聞こえるように読み上げる。

「『嫁取り、婿取り、人をかかへる万よし』わぁ!いいお嫁さん来ますよ!!」

 イケメンを巡った、令嬢たちの血みどろの争いを回避できそうな結果に安堵する。

「やっぱり神様からみても、良いお嫁さんになりそうなのね」
「…ん?もしかして、ソフィアちゃんおすすめのご令嬢がいるの?」
「えぇ、いるわ。最推しよ!可愛くて、お料理上手で何よりも、ヒューズの扱いがう…」

 饒舌になった口が、即座に虚無の表情を浮かべたヒューズの手によって塞がれた。

「聞かなかったことにしてください」
「…はい」

 久しぶりに見た輝くほどの彼の笑顔は、今年初であるにも関わらず、どこか有無も言わさぬ怖さを纏っていた。
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