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ソフィアの結婚
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エクシアル国の中心地に聳える大聖堂を取り囲むように、この日は多くの国民が集まっていた。
澄み切った青空により、その白く荘厳な建物は存在感を増す。
大聖堂の中に張り巡らされたステンドグラスは、差し込む陽の光を彩り、生涯の誓いを立てる若い男女を照らしていた。
新年を迎えて早一週間、遂にヴェスタ国王太子ハーヴィット・ニア・ヴェスタと、エクシアル国第一王女ソフィア・ベル・エクシアルの婚礼の儀となった。
やがて美しいパイプオルガンの調べと共に、大聖堂の鐘が鳴り響く。
大聖堂の中に入ることが出来ない国民へ向けた、儀式が成立した合図だ。
重く締められている筈の扉の向こう側からは歓声が上がり、その大きさに驚いたハーヴィットとソフィアは顔を見合わせ微笑んだ。
そんな二人を近くで見守るのが、近衛隊長であるヒューズだ。
騎士ですらこの大聖堂の中に入る者は限られる。
そんな中、長年ソフィアを面倒を見ていた礼とばかりに、ヒューズは最前列で二人の護衛として配置されていた。
(…良かった。何事もなく終わりそうだな)
退場の合図と共に誓いを立て、夫婦となったばかりの二人が大扉へと振り返る。
その際ヒューズの視線がソフィアとぶつかった。
ソフィアは少し大人になった笑顔をヒューズへ向け、ヒューズは首を動かさぬよう、ゆっくり瞬きをすることで彼女に返事をした。
やがて金の装飾が施された荘厳な大扉が開くと、その先へとソフィアとハーヴィットが歩みを進める。
二人の姿が光に溶け込むように見えた後、先程よりも大きい歓声と、風に揺られ色とりどりの花びらが大聖堂の中へと流れ込む。婚礼の儀が無事終わった合図だ。
(終わった…)
ヒューズはようやく大きく息を吐き、肩の力を抜いた。
だが仕事自体はこれで終わりではない、次はパレードの準備だ。
既に他の騎士達は足早に持ち場を離れ移動を始めていた。
「隊長、お疲れ様です」
最礼装の騎士服に取付けられた金の装飾を揺らしながら、副隊長のレオンがヒューズの元へと駆け寄る。
「レオン…すまないが次のパレード、私の位置を馬車の横から変えてくれ」
「隊長の顔色を見てて、多分そう言うだろうなと思ってたんで変えておきました。俺の隣です」
騎士らしくない愛嬌のある笑顔で答えると、ヒューズは眉間に皺を寄せ足を止めた。
「…レオンは殿じゃないか…殿は殿で目立つんだが…」
だがレオンの表情は『先頭よりはましでしょう?』と笑っていた。
髪色が薄いエクシアル人の中で、黒髪のヒューズはとにかく目立つ。
そのため何かの隊列を組む時は、一隊員だった頃から先頭・王族の隣・殿の三つだ。
結局ヒューズはそれ以上の文句は止め、馬を停めている大聖堂の裏手へとやって来た。
用意された馬へ乗る前に、自分の身なりに汚れや不備が無いか再度確認する。
(…最礼装…知花が見たら喜んだだろうか…)
いつもの騎士服よりも豪華な刺繍、そして褒章の数も賜ったものを、付けられるだけ付けたような状態だ。
その重さが今までヒューズが騎士として過ごしてきた時間を物語っている。
そして、この騎士としての人生以上に大事なものなど見つからないと、そう思っていた。
ヒューズは空を見上げる。
生まれた頃から仕えてきたソフィアの晴れの日。
天もそれを祝福するかのように晴れ渡っているのに、ヒューズの心は知花に別れを告げたあの日から、未だ晴れないままだった。
ただ遠く離れているだけなのなら、この空が何処かに居る彼女に繋がっていると、ただそれだけで勇気が貰えただろうが、現実はそんなに優しいものではない。
彼女がいた世界と自分の世界は決して繋がってなどいない。
(――だが、もう諦めない)
騎士として働き続ければ、幾つかの褒賞はこれからも手に入る。
何年かかるかも、何十年かかるかもわからない。
だが、その褒賞を重ねていけばいつかは彼女の元へ行けるほどになるかもしれない。
果てしない道のりだが、今のヒューズに出来ることは、ただそれだけだ。
「隊長!召集掛けますよ!」
呼びかけてきたレオンの声に振り返ると、既に同じ騎士服を纏った者達が揃い始めていた。
滞りなく進むパレードの準備。
耳に届くのはソフィアの幸せを、まるで自分のことのように喜ぶ声。
この場にいる誰もが、このひと時を笑顔で過ごしている。
(…そうだ、笑わなくては)
『ヒューズさん!!』
ふと脳裏に浮かんだ彼女が優しい春のように笑う。
その温かさに自然と口角が上がった。
「…あぁ!すぐに行く」
もう一度ヒューズは空を見上げる。
この空は彼女の元へは繋がってはいない。
けれど…
「知花…絶対に…会いに行くから」
その声は澄んだ空へと吸い込まれていった。
澄み切った青空により、その白く荘厳な建物は存在感を増す。
大聖堂の中に張り巡らされたステンドグラスは、差し込む陽の光を彩り、生涯の誓いを立てる若い男女を照らしていた。
新年を迎えて早一週間、遂にヴェスタ国王太子ハーヴィット・ニア・ヴェスタと、エクシアル国第一王女ソフィア・ベル・エクシアルの婚礼の儀となった。
やがて美しいパイプオルガンの調べと共に、大聖堂の鐘が鳴り響く。
大聖堂の中に入ることが出来ない国民へ向けた、儀式が成立した合図だ。
重く締められている筈の扉の向こう側からは歓声が上がり、その大きさに驚いたハーヴィットとソフィアは顔を見合わせ微笑んだ。
そんな二人を近くで見守るのが、近衛隊長であるヒューズだ。
騎士ですらこの大聖堂の中に入る者は限られる。
そんな中、長年ソフィアを面倒を見ていた礼とばかりに、ヒューズは最前列で二人の護衛として配置されていた。
(…良かった。何事もなく終わりそうだな)
退場の合図と共に誓いを立て、夫婦となったばかりの二人が大扉へと振り返る。
その際ヒューズの視線がソフィアとぶつかった。
ソフィアは少し大人になった笑顔をヒューズへ向け、ヒューズは首を動かさぬよう、ゆっくり瞬きをすることで彼女に返事をした。
やがて金の装飾が施された荘厳な大扉が開くと、その先へとソフィアとハーヴィットが歩みを進める。
二人の姿が光に溶け込むように見えた後、先程よりも大きい歓声と、風に揺られ色とりどりの花びらが大聖堂の中へと流れ込む。婚礼の儀が無事終わった合図だ。
(終わった…)
ヒューズはようやく大きく息を吐き、肩の力を抜いた。
だが仕事自体はこれで終わりではない、次はパレードの準備だ。
既に他の騎士達は足早に持ち場を離れ移動を始めていた。
「隊長、お疲れ様です」
最礼装の騎士服に取付けられた金の装飾を揺らしながら、副隊長のレオンがヒューズの元へと駆け寄る。
「レオン…すまないが次のパレード、私の位置を馬車の横から変えてくれ」
「隊長の顔色を見てて、多分そう言うだろうなと思ってたんで変えておきました。俺の隣です」
騎士らしくない愛嬌のある笑顔で答えると、ヒューズは眉間に皺を寄せ足を止めた。
「…レオンは殿じゃないか…殿は殿で目立つんだが…」
だがレオンの表情は『先頭よりはましでしょう?』と笑っていた。
髪色が薄いエクシアル人の中で、黒髪のヒューズはとにかく目立つ。
そのため何かの隊列を組む時は、一隊員だった頃から先頭・王族の隣・殿の三つだ。
結局ヒューズはそれ以上の文句は止め、馬を停めている大聖堂の裏手へとやって来た。
用意された馬へ乗る前に、自分の身なりに汚れや不備が無いか再度確認する。
(…最礼装…知花が見たら喜んだだろうか…)
いつもの騎士服よりも豪華な刺繍、そして褒章の数も賜ったものを、付けられるだけ付けたような状態だ。
その重さが今までヒューズが騎士として過ごしてきた時間を物語っている。
そして、この騎士としての人生以上に大事なものなど見つからないと、そう思っていた。
ヒューズは空を見上げる。
生まれた頃から仕えてきたソフィアの晴れの日。
天もそれを祝福するかのように晴れ渡っているのに、ヒューズの心は知花に別れを告げたあの日から、未だ晴れないままだった。
ただ遠く離れているだけなのなら、この空が何処かに居る彼女に繋がっていると、ただそれだけで勇気が貰えただろうが、現実はそんなに優しいものではない。
彼女がいた世界と自分の世界は決して繋がってなどいない。
(――だが、もう諦めない)
騎士として働き続ければ、幾つかの褒賞はこれからも手に入る。
何年かかるかも、何十年かかるかもわからない。
だが、その褒賞を重ねていけばいつかは彼女の元へ行けるほどになるかもしれない。
果てしない道のりだが、今のヒューズに出来ることは、ただそれだけだ。
「隊長!召集掛けますよ!」
呼びかけてきたレオンの声に振り返ると、既に同じ騎士服を纏った者達が揃い始めていた。
滞りなく進むパレードの準備。
耳に届くのはソフィアの幸せを、まるで自分のことのように喜ぶ声。
この場にいる誰もが、このひと時を笑顔で過ごしている。
(…そうだ、笑わなくては)
『ヒューズさん!!』
ふと脳裏に浮かんだ彼女が優しい春のように笑う。
その温かさに自然と口角が上がった。
「…あぁ!すぐに行く」
もう一度ヒューズは空を見上げる。
この空は彼女の元へは繋がってはいない。
けれど…
「知花…絶対に…会いに行くから」
その声は澄んだ空へと吸い込まれていった。
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