【漫画版公開中】転移先は女子大生の部屋でした‐ある日、美少女姫様とイケメン騎士様が転がり込んできたら‐

原案:トウキ汐・作画:猫倉ありす

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剣術大会③

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 ヒューズは俯いたまま、おぼつかない足取りで闘技場の通路を進む。

 仮にも準優勝。
 賞賛を浴びるべき成績なのに、酷く落ち込むその姿に祝いの声を掛ける者はいない。
 誰もが遠巻きに避ける中、カツカツと高いヒール音が真っ直ぐヒューズへと向かう。

「ヒューズ!!」

 呼び止める声に力なくヒューズが振り返ると、そこには闘技場に似つかわしくない、フワフワと波打つオーガンジーを重ねたアイボリー色のドレスに身を包んだソフィアが立っていた。
 息を切らしてまで走って来たソフィアに、ヒューズは僅かながら背筋を伸ばすと、胸に手を当てそっと礼をした。

「…大変申し訳ございません。エクシアルの騎士として、剣を折って負けるなど……醜態を晒してしまいました…」

 ヒューズの掠れた声から出たのは、まずは謝罪だった。
 だがソフィアが聞きたいことはそんな台詞ではない。

「違うわ!そうじゃなくて…!貴方、何をお父様に願うつもりだったの…!?」

 アメジスト色の瞳が食い入るように、ヒューズの言葉を待っていた。
 ソフィアが何を期待しているのかなど分かり切っている。

(…だが、ここで姫にねだっては、益々、知花に顔向けができない…)

 最大限努力し、その褒美として知花に会いに行きたかった。
 自分がしでかしたことを許して欲しいとまでは望んでいない。
 だが少しでも、前よりも胸を張った自分で会いに行きたかった。
 それがヒューズにとってのプライドだったのだ。

「…ありがとうございます。けれど、言葉にするつもりはありません」
「…何故…!?」

 拒絶されたソフィアは、先程まで必死に剣を振るっていたその腕を両手で掴んだ。

「それだけのことを知花にしてしまったと思っているからです。どうせ今の俺では知花に…好きになって貰えるわけがない…。だから…」

「…は????何よ…それ…」
「……ひ、姫?」

 俯きカタカタと震えるソフィアから、まるで地獄の底から響くような低い声が発せられる。
 掴んでいたヒューズの腕を、力一杯払い除ける。

「本当に…!ヒューズは…どこまで頭が堅いの…!?そのくせ、いつまでもウジウジと…!!どこまで知花に甘えれば気が済むのよ!!」
「なっ!?甘えている訳ではっ!!」

 いや、その通りだ。
 図星を突かれたから、これ程までに焦っている。

「ヒューズのポンコツぶりをどれだけ見てきたと思ってるの!?今更、ちょっと格好つけようとしたところで、無駄よ。諦めなさい!!…誰も、貴方が願いごと一つ口にしたところで、責めたりなんかしないわよ」

 両腕を組みツンっと顔を背けたソフィアに、ヒューズは黙り込み目を伏せる。
 やがて覚悟を決めると、静かにその口を開く。

「……知花に…会いに行きたかったのです」

 自分でも驚く程に、小さく情けない声。
 だがもう羞恥心などもう感じない。どうしようもないポンコツなら、ポンコツらしく足掻いていくしかないのだ。

「会って、謝って、たとえ許して貰えなくとも、今度は…俺から好きだと言いたかったのです」

 ようやく自分の駄目さ加減を認めた時、心は痛むよりも凪いだ。

「そして、叶うならば…共に…生きていきたいと…伝えたい…!!」

 その言葉を口にした時、ヒューズは泣き出しそうな程に顔を歪ませた。

「…やっと口に出したわね。本当に手のかかること。皆の者!確かに聞いたかしら?」

 二人の様子を遠巻きに見守っていた、他の騎士や使用人達が頷く。

「結構」

 ソフィアがピンクブロンドの髪を靡かせ、踵を返す。

「ヒューズ」
「…はい」
「五日後は私の婚礼の儀よ。それまでにその目の下にこびりついてるクマを消しておきなさい」
「…畏まりました」

 ゆっくりと頭を下げたヒューズに、ようやくソフィアはいつもの可憐な笑顔を見せた。
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