悪徳領主の娘に転生しました。貧乏領地を豊かにします!

naturalsoft

文字の大きさ
29 / 104

会ってはならない二人!

しおりを挟む
「本当にありがとうございました!」

シオンは丁寧に頭を下げた。

「いやいや、こちらが好きでやったことじゃ。気にするでない。それより、その歳で素晴らしいものを作ったのぅ?」

お爺さんは、たこ焼の屋台を引いて人通りの少ない所へ移動しながら言った。

「えへへ♪あっ、御挨拶がまだでした!私はシオンって言います!お爺さんは?」
「うむ、ワシはグランと言う。見ての通りの冒険者じゃ」

自分の出で立ちを見せていった。

『ふむ、シオンと言ったか。ウンディーネの契約者と同じ名前とは奇遇よのぅ?』

流石に、高位の精霊と契約を結んだ貴族がこんな所で屋台をやっている訳がないと、本人である可能性を否定した。

「うわぁ~凄いね!カッコいいです!」

シオンは素直に言った。老人の出で立ちは傍目からみても威風堂々として、身に付けている鎧も風格に合っていた。

「フフフッ、素直な子供は好きじゃぞ」
「私もダンディーなお爺さんは好きです!」

「「わっはっはっは!!!!」」

実に似た者同士であった。
シオンは手伝って貰った御礼にと、1番良い宿の宿泊券をグランに渡した。

「もし良かったら使って下さい。宿場町の宿に泊まれるチケットです!」
「良いのか?お嬢ちゃんが泊まる宿の宿泊券だったのではないかのぅ?」

グランは悪いと思い返そうとしたが、横から話し掛けられて止まった。

「大丈夫ですよ。シオンお嬢様が御世話になりました」

ちょうど、メイドのアンさんがやってきて深々と頭を下げた。

「シオンお嬢様?」

てっきり平民の子供だと思っていたグランは思わずシオンを見た。

「えへへへ!これでも私、シルクード領の領主なんだ♪」

無邪気に笑うシオンにグランは絶句した。

「そこの君、領主であるお嬢ちゃんが働く事が悪いとは思わんが、護衛もなしに一人で居させるとは何事じゃ!命を狙われたらどうするつもりじゃ!」

グランの怒りはシオンを心配してのものであった為、メイドのアンさんは何も言えずただ頭を下げるのだった。

「グランお爺さん!アンさんを怒らないで下さい!アンさんも反対してたんです。でもちゃんと護衛は居るんです!」

「なに?」

グランは元Aランク冒険者、気配には敏感であったが、護衛の気配などしなかったのだ。余程の手練れなのだろうか?

『うむ、主殿を手伝ってくれた事、感謝するのじゃ』

地面から水が溢れ、ウンディーネが現れた。

!?

『まさか、シルクード領に来てすぐに契約者とウンディーネに会えるとは!?なるほど、ウンディーネが護衛しているとは周りに誰もいない訳だ』

最強の護衛が居るのだ、下手に手を出せばすぐに殺られるだろうな。

「まさか、領主殿に四大精霊のウンディーネに会えるとは驚いたぞ」
「ふむ?そんなに驚いている様に見えんがのぅ?」

不敵に微笑むウンディーネに、グランは苦笑いしか出来なかった。

「ちょうど君達に会いに来たのじゃが、時間は取れるじゃろうか?」

シオンは少し考えて答えた。

「今日はこの後用事があるので、明日でもよろしいでしょうか?」
「うむ、大丈夫じゃ!」

「では明日、私の屋敷に来て頂けますか?本日は先ほどの宿へお泊まり下さい」

こうして、グランと約束したシオンはその場を後にした。しばらく移動してから言った。

「アンさん、屋敷に戻ったら使用人達に伝えて下さい。大急ぎで屋敷の念入りな清掃と、来賓の準備をするようにと」

不思議に思ったアンさんはシオンに聞いた。

「風格はありましたが、ただの冒険者に過度の対応ではありませんか?」
「あの人、ただの冒険者じゃないよ。帝国の偉い人だよ」

!?

「帝国…………ですか?」

そう!ご記憶だろうか?作者は忘れていたが、シオンは『鑑定』を使えたのだ!鑑定でグランは帝国の元皇帝と出たために、内心で驚き焦っているのだ。

「詳しくは言えないけどお願い!」

こうしてシオンの屋敷は最大限の『おもてなし』の準備に追われるのだった。

そして─

シオンに渡された宿泊券の高級宿へたどり着いたグランは……………

「「はっ?」」

浴衣を着て風呂へ向かおうとしていたリュミナス王国の国王様とバッタリと鉢合わせしていました。



しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

処理中です...