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頭を抱える宰相様

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我が息子のしでかした事のツケは次の日にはもうやってきた。

「大変です!バーニングハート公爵家から、今後の取引を全て凍結させると書状がきました!」
「な、なんじゃと!?」

国王様に連絡が行く前に報告を受けたのは宰相であった。宰相はクリア・ホワイト侯爵と呼ばれて、国王の懐刀として代々国に尽くしてきた名家であり、常に中立の立場で物事を判断する傑物であった。

「まずいぞ!昨今のバーニングハート公爵家はすでに王家以上の資金を持っている!しかも、領地は国境に面している。王国と取引を停止しても、他国に売る事が出来るし万が一、他国に亡命でもされたら大変な事になるぞ!?」

宰相は昨日の出来事をまだ知らなかった。外交で別の領地にいて戻ってきたばかりだったからだ。ただ、王子の婚約者探しのパーティーでトラブルがあったことは何気に聞いていた。

すぐに何が原因なのかピンッときた。

「どうしてバーニングハート公爵家がそんな事を言い出したのか…………昨日のパーティーで何があった!」

伝令は言いにくそうに報告した。

「公爵様は、お嬢様が芸術に秀でた才能があるので王子の婚約者にはならないと断られました」
「何?普通の貴族であれば飛び付く提案を断ったのか?」

まぁ、今回の婚約は公爵家の資金を王家に入れるための、言葉を悪くすれば金蔓としての婚約だったしな。しかし、公爵家も1貴族が王家を凌ぐ資金を持っていれば勘繰られるので、王家の意図はわかっていたはずだが………?

「国王様も、公爵令嬢が書いた絵に感動して取り敢えず王子にだけでも会って欲しいと、遅れてパーティー会場に向かわせたのですが………」

さらに言いにくそうに伝令は続けた。

「王子はパーティー会場に着くと、すぐに公爵令嬢の所に行き、いきなり令嬢の顔を殴りました。俺の婚約を断るとは何様だと言って………」


おっふう!?

宰相も王子のやらかしに眩暈を覚えた。女性の顔を殴るのも問題だが、多くの令嬢を集めてその中から選ぶと、各家に連絡していたのに、最初から1人は決まっていたと知れば、王家の威信に傷が付くぞ!他家からクレームもくるだろうな。

「あ、あのその後なんですが………」
「まだ何かあるのか!?」

伝令は縮こまって続けた。

「殴られた令嬢が、キレて逆に王子に幻の左ストレートを放って吹き飛ばし、その後馬乗りになってタコ殴りしました!王子はボロボロでベットで寝てます!」

…………もう、帰っていいだろうか?

これはもう王家とバーニングハート公爵家との戦争の縮小図ではないかな?王家が圧倒的不利で負けるヤツ。

「………これは娘を溺愛していることで有名なカール公爵が激怒している顔が思い浮かぶな。もう、婚約の話は無理だろう」

でも、令嬢の方が王子に酷い怪我をさせたことで、痛み分けに…………ならないな。

だからこそ、公爵家は取引を止めて来ているのだから。

さて、どこで妥協点を探るべきか…………

宰相はすぐに国王の元へ急いだ。

「陛下、至急確認したい事案がございます!」
「ああ、宰相よ待っていた!すまないが知恵を貸して欲しい!」

陛下は昨日のから寝てないのか、目の下にクマができていた。

「おおよその事情は伺いました。まったく頭の痛い案件ですな」
「それについては面目ないな………」


詳しい話をする前にお互いに深いため息を付くのだった。




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