7 / 117
動き出す未来
しおりを挟む
─とある一室にて─
「久しぶりじゃな。元気にしていたか?」
「はい。突然の訪問、申し訳ございません先王カイル様」
「堅苦しい挨拶はよせよせ!ワシとお前の仲ではないかワイズよ」
先王カイルは手を振って久々の旧友との再会を喜んだ。
「それで、突然どうした?聞けば国内各地を精力的に廻っているというではないか。何かあったのか?」
「はい。正直、お伝えしていいのか悩みましたが、1つお約束をして頂けるなら親友であるカイルに、嬉しい報告ができそうです」
カイル先王は首を傾げた。
「少し前にこの国の守護精霊アリエル様が夢枕に現れ啓示を下さりました。辺境の地の『洗礼の儀式』で何か起きると」
!?
「それは大丈夫だったのか!?もう洗礼の儀式は終わっておるじゃろう!」
元教皇であるワイズが世迷い言を言う訳がないと知っている先王は何があったのか尋ねた。
「…………これから何があったのか説明する前に約束して下さい。騒ぎ立てないと。とある人の人生が掛かっておりますので」
「それほどの事か。わかった。約束しよう」
一呼吸おいて洗礼の儀式であった事を話した。
「お、おおおぉ……………」
先王カイルは号泣していた。
そう、シオン皇后の【夫】だった人だからだ。
「わ、ワシが国の為に尽くしていた事はムダではなかったのじゃな?ワシが国を治めていたときは、隣国との戦争や自然災害に悩まされて、ろくに妻であるシオンを旅行にも連れて行けなかった………妻は幸せだったのじゃろうかと…………」
「何を言っているんですか。シオン皇后の最後の言葉を思い出してください!死に際の者があんな感謝の言葉を残すわけないでしょう?あなた達の行ないはちゃんと守護精霊アリエル様が見ておられたのです。胸を張って下さい!」
先王は泣きながら何度も頷いた。
シオン皇后が亡くなる時に、ワイズ元教皇も一緒にその場にいたのだ。
しばらくして落ち着いてから尋ねた。
「ワイズよ。その………会う事できぬのか?」
「最初に約束して頂いたはずです。騒ぎ立てないと、新たな命を授かったシオン皇后様は静かに暮らすのをお望みですので」
「頼む!ならば、お忍びでワシ一人で向かうのはどうじゃ!?」
ワイズも必ず逢いたいと言うのはわかっていた。
「そう仰ると思ってましたよ。ちゃんと辺境へ視察に行く事を他の者に伝えて下さいね。数名の護衛を伴って行くとしましょう」
「感謝する!」
先王はただ生きているだけで、抜け殻のように過ごしてきた。しかし、今の目には力強い意志と生命が宿っていた。
そして時をおかずに先王はワイズと数名の護衛を伴って辺境の男爵家へと旅立った。
「父上が辺境へ視察?」
息子であり【現皇王】は報告を受けて首を傾げた。
「はい。旧友である元教皇様が訪ねられて、一緒に出掛けられました」
「あの父上がな………」
母上を亡くしてから、ただ遺言に従い生きていただけの父上が急に視察とは………
これは何かあると思い、配下の者に指示を出した。
「念のため足取りを追ってくれ。ワイズ殿がいるのであれば悪い事ではないと思うが、護衛が少ないのであれば盗賊など心配だからな」
すぐにその場を後にした部下を見送った後、公爵位を与えられた弟がやってきた。
「兄上、親父が視察に出掛たというのは本当か?」
現アガレス王家はシオン皇后のお陰で家族仲が良好である。王位を巡って兄弟で争う事なく、協力して国をまとめているのだ。
「耳が早いな。私も報告受けたばかりでな。念のため後を追わせた所だ」
「親父、大丈夫だろうか?」
「ワイズ殿が同行しているのだ。多分、父上を元気付けようとして連れ出してくれたのだろう」
幼い頃、災害などで父と母が苦労している所を見て育った兄弟は、父親と母親を尊敬し敬愛していた。そして母を亡くして元気の無くなった父親が元気になればと、願わずにはいられなかった。
「久しぶりじゃな。元気にしていたか?」
「はい。突然の訪問、申し訳ございません先王カイル様」
「堅苦しい挨拶はよせよせ!ワシとお前の仲ではないかワイズよ」
先王カイルは手を振って久々の旧友との再会を喜んだ。
「それで、突然どうした?聞けば国内各地を精力的に廻っているというではないか。何かあったのか?」
「はい。正直、お伝えしていいのか悩みましたが、1つお約束をして頂けるなら親友であるカイルに、嬉しい報告ができそうです」
カイル先王は首を傾げた。
「少し前にこの国の守護精霊アリエル様が夢枕に現れ啓示を下さりました。辺境の地の『洗礼の儀式』で何か起きると」
!?
「それは大丈夫だったのか!?もう洗礼の儀式は終わっておるじゃろう!」
元教皇であるワイズが世迷い言を言う訳がないと知っている先王は何があったのか尋ねた。
「…………これから何があったのか説明する前に約束して下さい。騒ぎ立てないと。とある人の人生が掛かっておりますので」
「それほどの事か。わかった。約束しよう」
一呼吸おいて洗礼の儀式であった事を話した。
「お、おおおぉ……………」
先王カイルは号泣していた。
そう、シオン皇后の【夫】だった人だからだ。
「わ、ワシが国の為に尽くしていた事はムダではなかったのじゃな?ワシが国を治めていたときは、隣国との戦争や自然災害に悩まされて、ろくに妻であるシオンを旅行にも連れて行けなかった………妻は幸せだったのじゃろうかと…………」
「何を言っているんですか。シオン皇后の最後の言葉を思い出してください!死に際の者があんな感謝の言葉を残すわけないでしょう?あなた達の行ないはちゃんと守護精霊アリエル様が見ておられたのです。胸を張って下さい!」
先王は泣きながら何度も頷いた。
シオン皇后が亡くなる時に、ワイズ元教皇も一緒にその場にいたのだ。
しばらくして落ち着いてから尋ねた。
「ワイズよ。その………会う事できぬのか?」
「最初に約束して頂いたはずです。騒ぎ立てないと、新たな命を授かったシオン皇后様は静かに暮らすのをお望みですので」
「頼む!ならば、お忍びでワシ一人で向かうのはどうじゃ!?」
ワイズも必ず逢いたいと言うのはわかっていた。
「そう仰ると思ってましたよ。ちゃんと辺境へ視察に行く事を他の者に伝えて下さいね。数名の護衛を伴って行くとしましょう」
「感謝する!」
先王はただ生きているだけで、抜け殻のように過ごしてきた。しかし、今の目には力強い意志と生命が宿っていた。
そして時をおかずに先王はワイズと数名の護衛を伴って辺境の男爵家へと旅立った。
「父上が辺境へ視察?」
息子であり【現皇王】は報告を受けて首を傾げた。
「はい。旧友である元教皇様が訪ねられて、一緒に出掛けられました」
「あの父上がな………」
母上を亡くしてから、ただ遺言に従い生きていただけの父上が急に視察とは………
これは何かあると思い、配下の者に指示を出した。
「念のため足取りを追ってくれ。ワイズ殿がいるのであれば悪い事ではないと思うが、護衛が少ないのであれば盗賊など心配だからな」
すぐにその場を後にした部下を見送った後、公爵位を与えられた弟がやってきた。
「兄上、親父が視察に出掛たというのは本当か?」
現アガレス王家はシオン皇后のお陰で家族仲が良好である。王位を巡って兄弟で争う事なく、協力して国をまとめているのだ。
「耳が早いな。私も報告受けたばかりでな。念のため後を追わせた所だ」
「親父、大丈夫だろうか?」
「ワイズ殿が同行しているのだ。多分、父上を元気付けようとして連れ出してくれたのだろう」
幼い頃、災害などで父と母が苦労している所を見て育った兄弟は、父親と母親を尊敬し敬愛していた。そして母を亡くして元気の無くなった父親が元気になればと、願わずにはいられなかった。
50
あなたにおすすめの小説
塔に住むのは諸事情からで、住み込みで父と暮らしてます
ちより
恋愛
魔法のある世界。
母親の病を治す研究のため、かつて賢者が住んでいたとされる古塔で、父と住み込みで暮らすことになった下級貴族のアリシア。
同じ敷地に設立された国内トップクラスの学園に、父は昼間は助教授として勤めることになる。
目立たないように暮らしたいアリシアだが、1人の生徒との出会いで生活が大きく変わる。
身分差があることが分かっていても、お互い想いは強くなり、学園を巻き込んだ事件が次々と起こる。
彼、エドルドとの距離が近くなるにつれ、アリシアにも塔にも変化が起こる。賢者の遺した塔、そこに保有される数々のトラップや魔法陣、そして貴重な文献に、1つの意思を導きだす。
身分差意識の強い世界において、アリシアを守るため、エドルドを守るため、共にいられるよう2人が起こす行動に、新たな時代が動きだす。
ハッピーエンドな異世界恋愛ものです。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです!
12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。
両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪
ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/07/06……完結
2024/06/29……本編完結
2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位
2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位
2024/04/01……連載開始
裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます
みゅー
恋愛
ジェイドは幼いころ会った王太子殿下であるカーレルのことを忘れたことはなかった。だが魔法学校で再会したカーレルはジェイドのことを覚えていなかった。
それでもジェイドはカーレルを想っていた。
学校の卒業式の日、貴族令嬢と親しくしているカーレルを見て元々身分差もあり儚い恋だと潔く身を引いたジェイド。
赴任先でモンスターの襲撃に会い、療養で故郷にもどった先で驚きの事実を知る。自分はこの宇宙を作るための機械『ジェイド』のシステムの一つだった。
それからは『ジェイド』に従い動くことになるが、それは国を裏切ることにもなりジェイドは最終的に殺されてしまう。
ところがその後ジェイドの記憶を持ったまま翡翠として他の世界に転生し元の世界に召喚され……
ジェイドは王太子殿下のカーレルを愛していた。
だが、自分が裏切り者と思われてもやらなければならないことができ、それを果たした。
そして、死んで翡翠として他の世界で生まれ変わったが、ものと世界に呼び戻される。
そして、戻った世界ではカーレルは聖女と呼ばれる令嬢と恋人になっていた。
だが、裏切り者のジェイドの生まれ変わりと知っていて、恋人がいるはずのカーレルはなぜか翡翠に優しくしてきて……
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
俺、異世界で置き去りにされました!?
星宮歌
恋愛
学校からの帰宅途中、俺は、突如として現れた魔法陣によって、異世界へと召喚される。
……なぜか、女の姿で。
魔王を討伐すると言い張る、男ども、プラス、一人の女。
何が何だか分からないままに脅されて、俺は、女の演技をしながら魔王討伐の旅に付き添い……魔王を討伐した直後、その場に置き去りにされるのだった。
片翼シリーズ第三弾。
今回の舞台は、ヴァイラン魔国です。
転性ものですよ~。
そして、この作品だけでも読めるようになっております。
それでは、どうぞ!
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる