竜焔の騎士

時雨青葉

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第2章 竜騎士隊へ

納得できない!!

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 フールに連れられるまま、とある部屋に入ってしばらく。
 部屋を出てきたキリハは、なかば涙目になっていた。


「いったぁい……」


 まだヒリヒリとしびれている耳を押さえるキリハ。


 そこには、竜騎士の証であるという薔薇ばらをモチーフにした小さなピアスが光っていた。


「ううー……なんでこんな目に…。訳の分からないサイコロのせいで……」
「サイコロって、そろそろしつこいよぉ。」


 肩に乗ってぼやいてくるフールに向かって、キリハは冷たい一瞥いちべつをくれてやる。


「いーや。しばらくは根に持ってやる。」
「うわっ、心が狭いなぁ。」
「自業自得っていうんだよ、今回の場合。」


 フールと言い合っていると、ふと前方からくすくすと笑い声が聞こえてきた。


 それに頭を巡らせると、向かいの壁に身を預けてこちらを微笑ましそうに見ているサーシャの姿が。


「昨日会ったばかりって言ってたのに、仲がいいのね。」


 とんでもない。
 心外だ。


 反射的に出そうになった言葉を、キリハは寸でのところで飲む込むことに成功する。


「あの……もしかして、ずっと待ってたの?」


 おそるおそる訊ねてみると、サーシャはなんでもないことのように頷いた。


「うん。今日は元々、あなたが来るってことでお休みだったから。あなたも、誰か案内役が必要かなって思って。」


「なるほど。わざわざありがとう。」


「サーシャ、ありがとね。でも、案内なら僕がやろうと思ったのに……」


 どこか残念そうにフールが言うので、キリハは思いきり首を横に振った。


「やだやだ。お前に案内されると、事あるごとに殴りたくなって説明が頭に入らなそうだもん。」


「ええー。何それ、ひどいや。」


「それだけのことをしたって自覚をいい加減持って。つーか、フールって一体何者?」


 竜騎士の選定を任されるくらいなのだから、画期的なおもちゃというわけではあるまい。


 《焔乱舞ほむららんぶ》への案内人とは聞いているが、その姿がぬいぐるみというのは問題がありすぎないだろうか。


 そしてやはり、こんなふざけた奴に何もかもをぶち壊されたと思うと、腹の奥からふつふつと湧き上がってくるものがあるわけで……
 

「んふふ、細かいことは気にしないの。可愛いお人形さんってことで~♪」
「あーっ! やっぱり納得できなーい!!」


 叫んだキリハはフールのしっを掴むと、その体をぶんぶんと振り回した。


「キリハ、やめてー! 目が回るううぅぅっ!」
「うるっさーい!!」


 本当に、どうして他の皆はこんないい加減な奴の言うことを聞くのだ。


 そう思ってサーシャを見ると、サーシャはこちらに背を向けて肩を震わせていた。
 何事かと問わずとも、彼女が笑いをこらえているのは一目瞭然だ。


「ふふ……ごめんなさい。フールちゃんがそこまでしゃべってるのは初めて見たし、二人のやり取り聞いてると面白くて…っ。なんか、ルカ君とカレンちゃんの会話を聞いてるみたい。」


「………」


 キリハは少し黙り、フールを振り回していた手を離した。


 回転の勢いでフールがどこかに飛んでいった気もするが、見なかったことにしよう。
 自分は、フールと漫才コンビを組んだつもりはないのだ。


「そういえば、あの二人は?」


 ふと気になったので訊ねる。


「あの二人なら、多分シミュレート室にいるんじゃないかな? 急にお休みをもらっても、これといってやることもないし。」


「シミュレート?」


 また自分には縁遠そうな単語が出てきた。


 小難しそうに眉を寄せるキリハの様子を見て、サーシャはさらに解説を加えてくれる。


「ドラゴン戦に備えて、ドラゴンとの戦闘をシミュレーションできるの。コンピューターで作られた映像って分かってても結構怖いのよね、あれ。」


「へえ……」


「まあ、攻撃されても怪我はしないんだけどね。興味があるならやってみる?」


 小首を傾げて訊いてくるサーシャ。
 特にすることもないというのは同感だったので、キリハはそれならばと頷いた。


 シミュレート室の自動ドアを抜けると、まず操作盤が並んだ操作室が出迎えてきた。


 その奥へと進むと、半球状のドーム型になっている実践場がある。


 操作室には大きなモニターが設置されていて、モニターを介して操作室から実践場の様子を見学することができるそうだ。


「詳しい仕組みは私にも分からないから、とにかくやってみるのが一番だと思うよ。」


 サーシャはそう言いながら、ラックから取り出した一本の剣をキリハに手渡した。


 受け取った剣は、プラスチックでできた偽物。


 しかし、少し太く厚めの刀身の中に何かが入っているのか、見た目に反して重量がある。


「これは?」


 疑問に思ったことを、そのまま口に出す。


「それが《焔乱舞》のレプリカらしいの。」
「………これが?」


 キリハは目を丸くして、手に収まる剣を見下ろす。


 着色も施されていないこの剣がレプリカだと言われても、いまいちピンと来ない。
 かろうじて再現性があるとすれば、この剣の重さくらいだと思うけど。


「まあ、やってみれば分かるよ。とりあえず、シングルモードで起動するね。初めてだし、どんなものか感触を掴むってことで、時間は十分でいいかな。」


「よく分からないから、お任せします。」


 手際よくボタンとタッチパネルを操作していくサーシャ。


(あれ、俺も覚えなきゃいけないんだろうな……)


 心のすみでそんなことを思いつつ、キリハは実践場へと足を踏み入れた。

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