世界の十字路

時雨青葉

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第4章 その魂の色

思わずの行動

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 部屋に、ピアノの音色が響く。


 その後にどれほどの時間が流れたかは、ユエにもエーリリテにも分からない。
 エーリリテの声に合わせて、ユエはつたないながらも一生懸命に鍵盤を叩く。


 そうして一曲が終わった時、ふと拍手が二人の耳朶じだを打った。


「お疲れ様。楽しそうなところ悪いけど、もうお昼だってサラが言ってるよ。」
「実!!」


 そこにいた姿を認めたユエが、嬉しそうに表情を輝かせた。


 あまりに嬉しかったのか、ユエは椅子から飛び降りると、そのまま駆け出して勢いよく実の腹に抱きついた。


「おわっ!?」


 きちんと抱き留めながらも驚いたような実の声に、ユエはハッと我に返った。
 そろそろと顔を上げると、目を丸くした実とばっちりと目が合ってしまう。


 その瞬間、ユエの顔が急速に赤く染まった。


「~~~~~~~っ!!」
「待て待て、逃げるな逃げるな。逃げなくていいから。」


 声にならない悲鳴をあげて離れようとしたユエを、実は困ったように笑いながら引き止めた。


 それでも、恥ずかしさのあまり暴走するユエ。


「ああもう、まったく。」
「ふにゃあっ!?」


 実はユエの体をくるりと回転させると同時に脇に手を入れて、小さな体を一気に抱き上げる。


 そして、真っ赤になったユエの顔を真正面から見つめた。


「どうしたの? ちょっとびっくりはしたけど、別に恥ずかしい事じゃないでしょ?」
「う……え…と……」


 ユエは口をパクパクとさせて、さらに顔を赤くして実に抱きついた。
 自分の顔を実の肩にうずめ、「恥ずかしかったの…」と小さく耳打ちする。
 実はそれに、ふっと噴き出した。


「大丈夫だって。エーリリテも、いい加減笑うのやめろって。」


 ずっと腹と口を押えて笑っているエーリリテを見て実が言うが、実自身も笑ってしまっている手前、説得力はあまりない。


「ご、ごめんごめん。あんまりにも可愛かったから。」


 エーリリテはなんとか笑い声を引っ込めて、実たちの傍まで歩いてきた。


「今ね、もっと素直になりなさいって話をしてたのよ。」
「ああ、それでか。」


 納得する実。


「まあでも、実に飛び込んでいったのは、単純に素直になっただけじゃないと思うわよ。最近あんたがよくいなくなるから、ユエちゃん、かなり寂しそうだったもの。ねえ?」


 同意を求めるように言われ、ユエはこくこくと何度も頷いた。


「なるほど。確かに言うとおりだね。ごめんね、ユエ。」


 ぽんと頭を軽く叩かれ、ユエはそれに応えるように実にしがみつく腕に力を込めた。
 寂しかったことと嬉しいことを示すように、ぎゅっと強く。


「それにしても、本当にそんなに恥ずかしがる必要なんてないわよ? こいつなら、普段もっと手痛い歓迎を受けてるんだから。」


 エーリリテが面白おかしく言うので、ユエは首を巡らせてエーリリテを見た後に、その視線を実に移した。


「……そうなの?」
「まあね。」


 実はうんざりとしたように肩を落とした。


「あいつらの場合は、完全にロケットの勢いだから。何度身が持たないって思ったか…。あいつらに比べれば、ユエなんて可愛いもんだよ。ってか、あいつらにはユエを見習って、もう少し遠慮ってものを知ってほしいけど。」


「そんなこと言って、本当はまんざらでもないくせに。」


「……うるさいな。」


 からかうようなエーリリテの言葉に、実は少し渋い顔をして視線を背けた。


「まあ、さ。」


 実はもう一度、ユエの頭をなでる。
 そして―――


「ユエは、このくらいがちょうどいいよ。」


 そう、穏やかに笑った。

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