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しおりを挟むルベルはいきなりの指名に目を見開いた。思わず間抜けな声まで漏れてしまった。
通例では、序列一位の近衛から順に選ばれていくため、序列七位のリリアン・フランツが指名されるだろうと考えていた城内は騒然となる。しかも、魔法の使えない、過去最低の近衛と噂されているルベルを選んだのでなおさらだ。
「お、お姉さま? お間違えになりましたの?」
流石に驚いたのか、第八王女が、今指名した第七王女――スカーレットに問う。この二人は本当の姉妹では無いが、上の王女を呼ぶときは姉と呼ぶのが通例だ。
「いいや? 最初からそのつもりだったさ。もし私が第一王女だったとしても、私は間違いなくルベル・ライヴァーを指名したさ」
楽しそうに笑うスカーレット。
「スカーレット、本当に良いのですか?」
王も最終確認をする。
「はい。さあ、ルベル」
「は、はい」
少々面食らったものの、ルベルはスカーレットのもとへ。
「私の剣となってくれるな?」
「本当に……俺……私でよろしいのですか?」
すっかり第九王女に選ばれると考えていたルベルはまだ混乱の抜けきらない顔で、スカーレットに聞く。
「もちろん。この前の学園闘技でお前の戦いを見たときから気になっていた。そうだな……つまるところ一目惚れだな」
「なっ!」
キャァァァ! と城内中に黄色い悲鳴が響き渡った。
「で、では契約を……」
すっかりペースを崩されたルベルはスカーレットの手を取り、口づけをしようとする。
「ああ待て。私はな、そんな生ぬるいキスでは満足しない。だから――」
スカーレットはやや強引にルベルの顔を持ち、引き寄せる。
「こうやって契約しよう」
スカーレットはルベルを引き寄せるような形で、ルベルの唇に、自分の唇をねじ込んだ。
「んむ~!?」
ルベルはあまりの驚きに硬直し、目を白黒させる。
濃厚なキス。そのまま時が止まったかのように、二人は動かない。やがて――
「……プハッ、これで契約は完了だ」
スカーレットはゆっくりと、名残惜しそうに唇を引き離す。ツーッとお互いの唾液が糸を引き、官能的に目を潤ませる。
そのとき、ルベルの右手に紅い光が灯る。それは、先程のどの輝きよりも強く鮮明で、美しかった。
その光が徐々に形作り、色濃い『薔薇』の花紋を形成した。
第七王女、ローズ。真っ赤な髪を持ち、それを肩のあたりで一つにまとめている。彼女の担当は軍事担当……しかも、『現地』での指揮である。前線で真紅の髪を振り乱し敵を切るその姿は『クリムゾン・プリンセス』と敵国内でも名高い。
この国では、薔薇というのは悪魔の花である。人々を惑わせる魅惑の花として、忌み嫌われている。そのため、第七王女をローズと呼ぶのは本当に公式のときのみ。彼女の髪色からスカーレットと呼ばれることがほとんど。
そのため疎まれて育ったため、自分で生き抜く術を身に着け、今に至った。軍服を着用することが常であり、腰には剣が吊るしてある。
「済まなかったな、続けてくれ」
自分の唇を触り、未だに呆然としているルベルを少し見たあと、残る王女たちに告げる。
「そ、そう。そ、それじゃあ、序列第七位、リリアン・フランツで」
「かしこまりました。お任せください」
第八王女、ガーベラ。少し小柄で、大きな桃色の瞳が特徴的だ。彼女の父はもとは鍛冶士だったので、得意分野は工業。軍需工業から、日用的なものまで。この国の産業の発達は彼女のおかげであると言っても過言ではない。
「わ、私は序列第八位、ウェイバー・アーデルさんにしましゅ!」
「はい、この身、貴女に捧げます」
第九王女、コスモス。この中では一番年が若く、十三歳。しかし、エーデルワイスにも劣らない知能を持ち、この国の財政を担当している。無駄をとことん省き、必要なことにはお金を惜しまない。国力のある国ほど、金を無駄遣いすると言われているが、彼女の力により、財政赤字はゼロだ。
残る二人は動揺を隠せないながらも、近衛を選び、普通の方法で契約を結ぶ。
「……これで、全員の契約が済んだようね」
王は玉座から腰を上げる。
「これにて、契約の義を終了とする!」
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