最弱騎士だけど、最強の王女の騎士に選ばれました

黒田さん信者

文字の大きさ
5 / 29

5

しおりを挟む

 
 ルベルはいきなりの指名に目を見開いた。思わず間抜けな声まで漏れてしまった。

 通例では、序列一位の近衛から順に選ばれていくため、序列七位のリリアン・フランツが指名されるだろうと考えていた城内は騒然となる。しかも、魔法の使えない、過去最低の近衛と噂されているルベルを選んだのでなおさらだ。


「お、お姉さま? お間違えになりましたの?」

 流石に驚いたのか、第八王女が、今指名した第七王女――スカーレットに問う。この二人は本当の姉妹では無いが、上の王女を呼ぶときは姉と呼ぶのが通例だ。

「いいや? 最初からそのつもりだったさ。もし私が第一王女だったとしても、私は間違いなくルベル・ライヴァーを指名したさ」

 楽しそうに笑うスカーレット。

「スカーレット、本当に良いのですか?」

 王も最終確認をする。

「はい。さあ、ルベル」

「は、はい」

 少々面食らったものの、ルベルはスカーレットのもとへ。

「私の剣となってくれるな?」

「本当に……俺……私でよろしいのですか?」

 すっかり第九王女に選ばれると考えていたルベルはまだ混乱の抜けきらない顔で、スカーレットに聞く。
 
「もちろん。この前の学園闘技でお前の戦いを見たときから気になっていた。そうだな……つまるところ一目惚れだな」

「なっ!」

 キャァァァ! と城内中に黄色い悲鳴が響き渡った。

「で、では契約を……」

 すっかりペースを崩されたルベルはスカーレットの手を取り、口づけをしようとする。

「ああ待て。私はな、そんな生ぬるいキスでは満足しない。だから――」

 スカーレットはやや強引にルベルの顔を持ち、引き寄せる。



「こうやって契約しよう」



 スカーレットはルベルを引き寄せるような形で、ルベルの唇に、自分の唇をねじ込んだ。

「んむ~!?」

 ルベルはあまりの驚きに硬直し、目を白黒させる。

 濃厚なキス。そのまま時が止まったかのように、二人は動かない。やがて――


「……プハッ、これで契約は完了だ」


 スカーレットはゆっくりと、名残惜しそうに唇を引き離す。ツーッとお互いの唾液が糸を引き、官能的に目を潤ませる。 

 そのとき、ルベルの右手に紅い光が灯る。それは、先程のどの輝きよりも強く鮮明で、美しかった。

 その光が徐々に形作り、色濃い『薔薇』の花紋を形成した。



 第七王女、ローズ。真っ赤な髪を持ち、それを肩のあたりで一つにまとめている。彼女の担当は軍事担当……しかも、『現地』での指揮である。前線で真紅の髪を振り乱し敵を切るその姿は『クリムゾン・プリンセス』と敵国内でも名高い。


 この国では、薔薇というのは悪魔の花である。人々を惑わせる魅惑の花として、忌み嫌われている。そのため、第七王女をローズと呼ぶのは本当に公式のときのみ。彼女の髪色からスカーレットと呼ばれることがほとんど。


 そのため疎まれて育ったため、自分で生き抜く術を身に着け、今に至った。軍服を着用することが常であり、腰には剣が吊るしてある。




「済まなかったな、続けてくれ」

 自分の唇を触り、未だに呆然としているルベルを少し見たあと、残る王女たちに告げる。


「そ、そう。そ、それじゃあ、序列第七位、リリアン・フランツで」

「かしこまりました。お任せください」


 
 第八王女、ガーベラ。少し小柄で、大きな桃色の瞳が特徴的だ。彼女の父はもとは鍛冶士だったので、得意分野は工業。軍需工業から、日用的なものまで。この国の産業の発達は彼女のおかげであると言っても過言ではない。




「わ、私は序列第八位、ウェイバー・アーデルさんにしましゅ!」

「はい、この身、貴女に捧げます」

 

 第九王女、コスモス。この中では一番年が若く、十三歳。しかし、エーデルワイスにも劣らない知能を持ち、この国の財政を担当している。無駄をとことん省き、必要なことにはお金を惜しまない。国力のある国ほど、金を無駄遣いすると言われているが、彼女の力により、財政赤字はゼロだ。



 残る二人は動揺を隠せないながらも、近衛を選び、普通の方法で契約を結ぶ。


「……これで、全員の契約が済んだようね」

 王は玉座から腰を上げる。

「これにて、契約の義を終了とする!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...