最後の涙

水雲 寿々

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逃げ出して見上げた青空 2

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一歩踏み入ると、そこはまるで隔離されたかのようにひんやりしていた。
けどここじゃ人や車の気配が五月蝿い。

ぼうっと奥へ進む。
何も考えずにいられるみたいな、一面緑の世界。


こんなところにずっといられたら…なんにも考えずにいられたらなぁ。


頭を振ってその考えを追い出す。
途中にあった岩に腰掛けて一息つくと、やっと解放された気持ちになれた。

すごく、落ち着く。なんだろ、日本じゃないみたい。
いや、いっそ地球にいないみたいだ。

ここには幸せな記憶しかない。
あの頃は叱られた時も今みたいな気持ちにはならなかった。
私なんて。そんなふうに考えなかった。

拗ねたりしたけど、今思えばあれだって愛情だったんだ。
それがいつの間にか失望になっていった。

……いつからだったっけ、失敗するとため息をつかれて。
「もういいよ」みたいな、「もう期待してないよ」みたいな目で見られて。

それが何よりも嫌だった。
結果しか見られなくなったのが悲しくて辛くて、とにかく泣いた。

涙も出なくなって、慣れてしまってからは、失望されないように。期待してもらえるように。期待を裏切らないように。

必死で勉強したし、嫌なこともやったし、友達ともうまくやったし、両親が喧嘩した時は必ず止めに行った。穏便に済むように説得して、ご飯を作って、掃除もして。

喧嘩した日は全部私がやった。
兄は一人暮らしを始めて、もういないから。

私が頑張らなきゃみんな幸せになれない。お母さんもお父さんも、笑ってくれない。
だから、頑張ったのに。

いつの間にか友達もだんだんいなくなって、両親の仲も冷えきっていて、期待もされなくなって、私のやってきたことが全部無駄になったみたいだった。

その時初めて思った。


「私、今までなんで頑張ってたんだろ」


こんなに無理をして、こんなに頑張って。でも一瞬で全部なくなった。なくしてしまった。

それに気づいてしまった。

気づいたら全部投げ出したくて。だから、逃げた。

全部放り出して逃げ出している。

もう嫌だって初めて思った。無理だって、初めて限界が見えた。
超えられなかった。どうしても、力なんか残ってなかった。


今まで何だったんだろ。
座ったまま考える。
気分が落ちる。一気に奈落の底だ。

あぁ、全部消えちゃえばいいのに。
いっそどこか違う世界に行ってしまいたい。
私を誰も知らない場所に。

考えながら目を瞑った時、木漏れ日の光が少し弱くなった気がした。
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