美処女高校生の天才女流棋士が転生したら戦国時代だった

lavie800

文字の大きさ
31 / 70

第三十一話

しおりを挟む
翌朝、宗古は城の勝手口で俺を連れてきた。
「この城の出入りが堅ろうなのは分かったけれど、出入りの商人が勝手口の倉庫に密かに隠れることはできるような気がするわ」
「その場合でも、倉庫の扉の鍵は閉めるから倉庫から外には出られないよ。
倉庫の中の換気孔も途中で鉄格子があるから人間は通れないはずだ。
密室のトリックでもない限り城内に忍び込むのは難しいと思う」
「勝手口の出入り口や倉庫の扉を閉めてから、誰かが倉庫の鍵をあけたらどうかしら。共犯者が城の中に居たら、城内に忍び込めそうよ」
宗古は勝手口の見張りのところに行って何か聞いていた。
そのあと俺のところに走ってきた。
「勝手口の出入りの鍵は城内で厳重に保管していて見張りが一晩中、保管場所に待機していると聞いたわ。
でも、倉庫の鍵は、食料品や雑貨があるだけだから、鍵も一旦閉めてしまえば防犯上問題ないということで、倉庫の奥の廊下の近くにぶら下げているだけと言ったわ」
「そうすると城内に共犯がいれば、倉庫の鍵は簡単に開けられるのか?」
「そういうことよ。
忍びの月は、商人の恰好をして倉庫に忍び込んだ。
夕方に自分が持ってきた籠か何かを倉庫に持って行って倉庫に忍び込んだのよ。
ただし勝手口の扉は、夜は出入りできないから誰かが倉庫の鍵を開けるまでじっと待つしかないけれど」
「夜に誰かが倉庫の鍵を開けてくれれば、そのまま城内に忍び込めるのか。
月は何故浜松城に忍び込みたいのかな」
「月の小面が浜松城に未だ有ると思っているのよ」
「本物の月の小面を欲しがっているのは、家康を疎んじている人だよね。
最初に小那姫が月の小面をからくりの木箱に隠した理由は、百合の関係になってしまった忍びの月に頼まれたからだよね。
忍びの月が小那姫を誑かして月の小面を欲しがったのは、月自身がそれを手に入れて家康を窮地に陥れようとしたのか、誰かに頼まれたのかということだよね」
「そうね。今回城の中に共犯者がいるということだから、忍びの月だけの犯行動機ではなさそうね」
「本物の月の小面はどこに消えたのだろう」

勝吉がやってきた。
先ほどのやりとりを宗古が勝吉に話していた。
「わかった。念のために今日から倉庫の鍵もしっかり見張るように申し入れておく」
「勝吉さんは、石山安兵衛を良く知っていたのですか」
「能の小道具を作ってもらっていた。手先が器用で仕上がりも満足いく出来だった。
そう言えば算砂殿も取引があるようなことを言っていたぞ。
宗桂殿は石山安兵衛を知らないようだったが」

宗古と俺は算砂の所に言った。
聞きたいことがあったからである。
「算砂様、石山安兵衛を良く知っていたのですか」
「盤を作ってもらっていた。非常に高品質で打ちやすい囲碁盤を作ってくれていた。
それと色々趣向のある盤も作ってくれていた。
月にも石山安兵衛のことを話したことがある」
「趣向のある盤はどういうものだったのですか」
「囲碁や将棋の盤は、石や駒を打った時の音の響き方で対局者が気持ちよく打ったり指したりできるものだ。どうやったら、響きがよく聞こえるかをいくつか趣向を凝らした加工を石山安兵衛はしていた。それは見事だった」
「具体的にはどのような加工をするのですか。」
「最も一般的なのは、盤の裏の真ん中に凹みを作ることだ。これは盤の変形を防ぎやすくなる」
「将棋盤の場合は、凹みを血溜まりというのですね」
「よく知っているな。中国の明の書物に書いてあるという噂だ。
将棋は自分自身で考えて指さねばならない。他人からの助言はルール違反であるが、中国では、第三者が対局中に助言したらその首を切って将棋盤の凹みに飾ったという噂だ。だから凹みを血溜まりというらしい」
「将棋盤の四つの足の材料もくちなしの実に似ていますね。クチナシ 口無しということで助言してはいけないということですね」
「ほう。これは初めて聞いた。そうだったのか。宗桂殿の跡継ぎは聡明だな」
「石山安兵衛はそれ以外にどんな音響を良くする工夫をしていたのですか」
「盤の中に空洞を作るのだ。別の意味ですごい音の響きが出る」
「確かに石山安兵衛が、そのようなからくりの囲碁盤を作ったことがあると言っていました」
「そうか、月が大変その話に興味を示していたことを思い出した。
盤を空洞にしてしまえば、その中に何か隠せますねと言っていたぞ」
「その加工した囲碁盤が先日の遠江分器稲荷神社で見つけました。
空洞の中には手紙が入っていました」
「そうか。石山安兵衛に生前に聞いたのだが、囲碁盤以外にも将棋盤も空洞になったものを作ったと言っていたぞ。それぞれ発注者が違うが同じようなものを注文されたと石山安兵衛は言っていたな。
これから盤をどうしたらいいのか」

堀尾吉晴の家来がやってきた。
「大橋さつき様、小那姫様がお呼びです。何か聞きたいことがあるらしいです」
宗古が険しい眼をしている。
「私も行きます」
「小那姫様がさつき様おひとりでと」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...