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文化祭編
孔太は勝手すぎる。
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文化祭。
それは高校生にとって1年で1番大きなイベントの一つだろう。準備期間の今日も本来は和気あいあいとした話し合いがなされるはずだった。それがどうだろうか。俺たちの、机と椅子が少し少ない教室は怒号にも似た大声で満たされていた。ちょっと気の早いセミの鳴き声も普段より大きく聞こえる。
電子機能の備え付けられた大きな黒板の前には俺と孔太の2人。縦横6人ずつ綺麗に並んでいるみんなからは矢のような視線。なんというか、同級生たちとは思えないほどの迫力が左からも前からも飛んでくる。
話は20時間ほど前に遡る。
7/3,4の本番に備え、早すぎる期末テストを終えた今日、6/17日。ここから1週間は午後からの準備。そして次の1週間ちょっとは丸々が文化祭に費やされる。校舎を城内に構える県内屈指の進学校で、2週間も授業がないのは実にこの期間だけである。その上部活まで制限をされ、みんなが全力で文化祭に取り組む。まぁ普段は恐ろしいほど詰まった授業なのだが。
テスト終わり、早速LHRが開かれようとしていた。
担任の隠家が、椅子から猫背気味の体を名残惜しそうにあげ、教壇の前に立つ。すると、計ったかのようにこの学校のチャイムである、『第九』が流れ出す。
「号令よろしく。」
と、気だるげに出した声を聞いた孔太が号令をかける。
「起立、気をつけ、礼!」
「お願いしまーす。」
テスト終わりのみんなも、やはり気だるげに声を出す。」
「はい、みんなも分かってる通り、今日から文化祭の準備期間に入る。細かい諸注意から何やらは全部塚村が知っているはずだ。一任する。ガガっと優勝するぞ!わしからは以上。後は塚村、竹内、頼んだぞ!わしは地獄の採点に行ってくる。何かあったら職員室まで来なさい。」
隠家はそう言って白衣を翻して教室を後にした。あいも変わらずガ行の強い人だとみんなで笑いあう。
この理数科クラスは最初の沈黙が嘘のように感じられるほど打ち解けた、賑やかなクラスになっていた。昼休みなどは笑いや話し声が絶えず、勉強に対する意見交換なども含め、学年で1番団結力があるクラスであることは学年中で認められていることだった。当然のことながら、今回の文化祭もそこそこの成績を取れる・・・誰もがそう思っていた。
後ろの椅子がガタッとなった。大方孔太が前に行くために立ったのであろう。
「海。行こうか。」
小さめの少し高い声が囁かれる。
「おう。頑張ろーぜ、孔太!」
そう返事して、俺も立ち上がって孔太の後ろを歩いて黒板の前まで歩く。
黒板の前に2人で立つ。そして突然大きな声を出す。
「みんな!10分、10分だけ寝よう!」
絶句した。みんなはもちろん、空気を読んだのかセミまでもが鳴きやんだ。たっぷり10秒ほど、開け放たれた窓から入り込む風の音だけが聞こえていた。
みんながざわざわしはじめたところで、もう1度孔太が口を開く。
「確かにうちは他のクラスより4人少ない。それでも各々のスペックを考えれば10分間の空白を考えても、総合力は他のどのクラスをも凌駕できる。みんなは絶対テストで疲れているだろうから、しっかり休憩して、優勝するための議論をしよう。てか、課題仕上げなきゃだったから僕が眠すぎる・・・。今から10分!おやすみっ!」
確かにみんな疲れていたようだ。きょとんとしている人もいたが、大多数は机に突っ伏して寝始めた。みんなの様子を見て安心した様子の孔太。俺の方へ歩いてきて、意味の分からない発言をした。
「多分この準備期間中、僕は僕じゃなくなると思う。海は引かないでほしいな。」
そう言って意味深な笑みを浮かべて話を続ける。後に、俺はこの発言の重大さを実感することになる。
「サポート頼んだ。おやすみ。あ、これ目を通しておいて。」
そう言って俺に3枚ほどの、活字がびっしり並んだ紙を渡した。1枚目の最上部には、文化祭要綱の文字。孔太の真意を察して孔太に返事する。
「なるほど、これがさっき隠家が言ってたやつか、俺には寝ずにこれを把握しておけと。
まぁお前はテスト期間に読んでいた訳だからな・・・甘んじて受け入れようじゃないか。」
・・・・・・返事が返ってこないと思って紙から目を離すと孔太が消えていた。孔太の机を見ると・・・思っ切り寝ていた。さすがだな・・・と思いつつ教室を見回すと、全員が机に突っ伏して寝ていることの異様さに気づく。先生が適当な人でよかった。本気でそう思ってしまった。
活字が所狭しと並べられた3枚の紙から目を挙げ、黒板の上に掛けられた時計を見ると時刻は2:15分。紙を渡されてから呆れるほど正確に10分。俺の読むスピードまで計算して時間を設定したんなら本当に恐ろしいな・・・と思いつつ教室を見渡すと、そこにはやはり先生には見せられない絶景(?)が広がっていた。10分経ったらみんなが勝手に起きてくる・・・。もちろんそんなことはありえない。孔太から発せられた言葉の意味を反芻しつつ、孔太を起こしにかかる。本当に大変なのはここからだった。
それは高校生にとって1年で1番大きなイベントの一つだろう。準備期間の今日も本来は和気あいあいとした話し合いがなされるはずだった。それがどうだろうか。俺たちの、机と椅子が少し少ない教室は怒号にも似た大声で満たされていた。ちょっと気の早いセミの鳴き声も普段より大きく聞こえる。
電子機能の備え付けられた大きな黒板の前には俺と孔太の2人。縦横6人ずつ綺麗に並んでいるみんなからは矢のような視線。なんというか、同級生たちとは思えないほどの迫力が左からも前からも飛んでくる。
話は20時間ほど前に遡る。
7/3,4の本番に備え、早すぎる期末テストを終えた今日、6/17日。ここから1週間は午後からの準備。そして次の1週間ちょっとは丸々が文化祭に費やされる。校舎を城内に構える県内屈指の進学校で、2週間も授業がないのは実にこの期間だけである。その上部活まで制限をされ、みんなが全力で文化祭に取り組む。まぁ普段は恐ろしいほど詰まった授業なのだが。
テスト終わり、早速LHRが開かれようとしていた。
担任の隠家が、椅子から猫背気味の体を名残惜しそうにあげ、教壇の前に立つ。すると、計ったかのようにこの学校のチャイムである、『第九』が流れ出す。
「号令よろしく。」
と、気だるげに出した声を聞いた孔太が号令をかける。
「起立、気をつけ、礼!」
「お願いしまーす。」
テスト終わりのみんなも、やはり気だるげに声を出す。」
「はい、みんなも分かってる通り、今日から文化祭の準備期間に入る。細かい諸注意から何やらは全部塚村が知っているはずだ。一任する。ガガっと優勝するぞ!わしからは以上。後は塚村、竹内、頼んだぞ!わしは地獄の採点に行ってくる。何かあったら職員室まで来なさい。」
隠家はそう言って白衣を翻して教室を後にした。あいも変わらずガ行の強い人だとみんなで笑いあう。
この理数科クラスは最初の沈黙が嘘のように感じられるほど打ち解けた、賑やかなクラスになっていた。昼休みなどは笑いや話し声が絶えず、勉強に対する意見交換なども含め、学年で1番団結力があるクラスであることは学年中で認められていることだった。当然のことながら、今回の文化祭もそこそこの成績を取れる・・・誰もがそう思っていた。
後ろの椅子がガタッとなった。大方孔太が前に行くために立ったのであろう。
「海。行こうか。」
小さめの少し高い声が囁かれる。
「おう。頑張ろーぜ、孔太!」
そう返事して、俺も立ち上がって孔太の後ろを歩いて黒板の前まで歩く。
黒板の前に2人で立つ。そして突然大きな声を出す。
「みんな!10分、10分だけ寝よう!」
絶句した。みんなはもちろん、空気を読んだのかセミまでもが鳴きやんだ。たっぷり10秒ほど、開け放たれた窓から入り込む風の音だけが聞こえていた。
みんながざわざわしはじめたところで、もう1度孔太が口を開く。
「確かにうちは他のクラスより4人少ない。それでも各々のスペックを考えれば10分間の空白を考えても、総合力は他のどのクラスをも凌駕できる。みんなは絶対テストで疲れているだろうから、しっかり休憩して、優勝するための議論をしよう。てか、課題仕上げなきゃだったから僕が眠すぎる・・・。今から10分!おやすみっ!」
確かにみんな疲れていたようだ。きょとんとしている人もいたが、大多数は机に突っ伏して寝始めた。みんなの様子を見て安心した様子の孔太。俺の方へ歩いてきて、意味の分からない発言をした。
「多分この準備期間中、僕は僕じゃなくなると思う。海は引かないでほしいな。」
そう言って意味深な笑みを浮かべて話を続ける。後に、俺はこの発言の重大さを実感することになる。
「サポート頼んだ。おやすみ。あ、これ目を通しておいて。」
そう言って俺に3枚ほどの、活字がびっしり並んだ紙を渡した。1枚目の最上部には、文化祭要綱の文字。孔太の真意を察して孔太に返事する。
「なるほど、これがさっき隠家が言ってたやつか、俺には寝ずにこれを把握しておけと。
まぁお前はテスト期間に読んでいた訳だからな・・・甘んじて受け入れようじゃないか。」
・・・・・・返事が返ってこないと思って紙から目を離すと孔太が消えていた。孔太の机を見ると・・・思っ切り寝ていた。さすがだな・・・と思いつつ教室を見回すと、全員が机に突っ伏して寝ていることの異様さに気づく。先生が適当な人でよかった。本気でそう思ってしまった。
活字が所狭しと並べられた3枚の紙から目を挙げ、黒板の上に掛けられた時計を見ると時刻は2:15分。紙を渡されてから呆れるほど正確に10分。俺の読むスピードまで計算して時間を設定したんなら本当に恐ろしいな・・・と思いつつ教室を見渡すと、そこにはやはり先生には見せられない絶景(?)が広がっていた。10分経ったらみんなが勝手に起きてくる・・・。もちろんそんなことはありえない。孔太から発せられた言葉の意味を反芻しつつ、孔太を起こしにかかる。本当に大変なのはここからだった。
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