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レンタルボーイ、金持ちの玩具
瓜田という男の存在
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オレは調子に乗り過ぎた。
仕事をすれば、必ず100万単位の小遣いを貰った。
最初はこんなに貰っていいものかと驚いた。
だが、それに慣れてくるうちにオレの金銭感覚は麻痺していった。
翌日、オーナー所へ行く前に美容室に行った。
ホスト風の茶髪のロン毛を短くカットし、黒く染め直した。
その足でオーナーのマンションに行き、今までの非礼を詫びた。
ブランド物で身を固めた服装も、シルバーアクセサリーも外し、デニムにパーカー、スニーカーという当初のスタイルでリビングのソファーに座っているオーナーに土下座をした。
「この度は大変申し訳ありませんでした。これからは心を入れ替え、真面目に仕事しますので、どうかまたよろしくお願いします!」
オーナーは冷ややかな眼差しでオレを一瞥した。
「まぁ、随分と殊勝な言葉ね。昨日も言ったと思うけど、ペナルティとしてアナタの取り分は当分二割。
そして、お客様からいただいたお小遣いの半分はこっちが貰う。それでいいわね?」
暫くはかなりキツい生活になるが仕方ない、オレにはこれしか生きる道がないのだ。
「はい…分かりました」
「よし。それじゃ、瓜田くん。彼を送ってちょうだい」
「畏まりました」
オレと瓜田はマンションを出て、相手との待ち合わせ場所へ向かった。
車内では重苦しい空気が漂っていた。
「亮輔さん、少しは頭冷やしましたか?」
「はい…オレがバカでした…」
「でも、無理もないですよ。あんなに大金が貰えるんですからね。まぁ、これも勉強ですよ」
温和な表情だ。
ところで、この人は何で運転手なんてしてるのだろうか。
「瓜田さん」
「はい」
「瓜田さんは何で運転手やってるんですか?」
一度聞いてみたかった。
この人は常にオーナーと一緒にいて、オレたち会員の送迎をしている。
一体何処に住んでいるのだろうか?
「う~ん、質問次第では守秘義務があるので。答えられる質問には答えますよ」
「何故、運転手やってるんですか?っていうのは答える事が出来ないのですか?」
「いや、そんな事はありませんよ。私も以前は亮輔さんと同じように、色んな方を相手にしました。
勿論、男女問わずに」
以前はレンタル会員だったのか…
「でも、それが何故、運転手に?」
「そうですねぇ、途中からオーナー専属のレンタル会員になった、とでも言うんでしょうかね。まぁ、それと送迎する人も必要でしたからね。それからは、運転手としてオーナーに仕えてますよ」
オーナー専属…
あのオーナーも女だ。そういう相手が欲しかったんだろうか。
「私は物心ついた時から、親がいなくて祖父母に育てられたんですがね。まぁ、立て続けに他界してしまって、祖父母の知り合いだったオーナーに拾われるような形で、この仕事を手伝ってるうちに、気がついたら運転手やってた、そんな感じですかね」
オーナーが瓜田の祖父母と知り合い?
あのオーナーは一体何者なんだろうか。
「瓜田さん、オーナーは全く自分の名を名乗らないのですが、それは何でですか?」
祖父母と知り合いならばオーナーの名前は知っているはずだ。
「申し訳ありません、それは守秘義務なもので」
「じゃあ、瓜田さんはオーナーの名前を知ってるって事ですか?」
「う~ん、それも微妙な質問ですね~、一応知ってはいますが、果たしてそれが本名なのかどうか。私にも分かりかねますね」
不思議だ…何でそこまでして名前を隠したがるのか。
ただ、この世界は間違いなく裏社会だ。てことはヤクザ者なのか?
「瓜田さん、もう一つお聞きしたいのですが?」
「何でしょうか?」
「オーナーや瓜田さんはヤクザですか?直球な質問で申し訳ないのですが…」
さすがにこれは答えられないだろうな。
「いや~、痛いとこ突いてきますね。はっきり言えば、私やオーナーはカタギの人間ではないですね」
という事は、ヤクザか…
でも、ヤクザ者には見えない程、穏やかな人物だ。
オーナーはともかく、瓜田は爽やかな好青年で、いつもスーツを着ている。
この人がヤクザ?
いわゆる、インテリヤクザなのか?
「真っ当な人間かそうじゃないか。
それは別にヤクザの世界じゃなくても、普通の社会でもいるじゃないですか?
真っ当な生き方をしてないのに、サラリーマンをしてる人もいれば、真っ当な生き方をしてるヤクザな人もいます。
要はその人の考え方次第で真っ当かそうじゃないか、結局は人間性がものを言うんじゃないか。
私はそう思いますね」
その人の人間性か…
オレはどっちなんだろうか。
真っ当ではないだろうな。
となると、オレはヤクザな人間なのか?
「私はどちらかと言えば、グレーな人間です。白にもなれるし、黒にもなれる。その境界線はどこか?と問われると、上手く表現出来ませんが、表の世界でも、裏の世界でも生きていける。多分、オーナーもそうじゃないでしょうかね。
まぁ、改めて聞いたことはないですが」
グレーな存在か…
考えようによっちゃ、どちらにもなれる、厄介な立場な人間なのか。
「でも安心してください。私は至って、ごくフツーの人間ですよ。人間って、正義にもなれるが、悪魔にもなれる。世の中で一番残酷なのは人間ですからね」
何だか深い話だな…
まだオレのような子供には理解出来ない。
人生論というか、何なのか知らないが、この人はまだ、20代半ばぐらいの人だ。
随分と達観した物の見方をする人だ。
そんな人をも、配下にするオーナーって一体…?
「さぁ、着きましたよ。亮輔さん、暫くの間、信用を取り戻すのに時間はかかるでしょうが、これからは誠心誠意、お客様の要求にお応えください。
きっと信頼は回復します」
「はい、ありがとうございます」
オレは初心に戻って、瓜田の言うとおり、信頼を回復させるしかないのだ。
仕事をすれば、必ず100万単位の小遣いを貰った。
最初はこんなに貰っていいものかと驚いた。
だが、それに慣れてくるうちにオレの金銭感覚は麻痺していった。
翌日、オーナー所へ行く前に美容室に行った。
ホスト風の茶髪のロン毛を短くカットし、黒く染め直した。
その足でオーナーのマンションに行き、今までの非礼を詫びた。
ブランド物で身を固めた服装も、シルバーアクセサリーも外し、デニムにパーカー、スニーカーという当初のスタイルでリビングのソファーに座っているオーナーに土下座をした。
「この度は大変申し訳ありませんでした。これからは心を入れ替え、真面目に仕事しますので、どうかまたよろしくお願いします!」
オーナーは冷ややかな眼差しでオレを一瞥した。
「まぁ、随分と殊勝な言葉ね。昨日も言ったと思うけど、ペナルティとしてアナタの取り分は当分二割。
そして、お客様からいただいたお小遣いの半分はこっちが貰う。それでいいわね?」
暫くはかなりキツい生活になるが仕方ない、オレにはこれしか生きる道がないのだ。
「はい…分かりました」
「よし。それじゃ、瓜田くん。彼を送ってちょうだい」
「畏まりました」
オレと瓜田はマンションを出て、相手との待ち合わせ場所へ向かった。
車内では重苦しい空気が漂っていた。
「亮輔さん、少しは頭冷やしましたか?」
「はい…オレがバカでした…」
「でも、無理もないですよ。あんなに大金が貰えるんですからね。まぁ、これも勉強ですよ」
温和な表情だ。
ところで、この人は何で運転手なんてしてるのだろうか。
「瓜田さん」
「はい」
「瓜田さんは何で運転手やってるんですか?」
一度聞いてみたかった。
この人は常にオーナーと一緒にいて、オレたち会員の送迎をしている。
一体何処に住んでいるのだろうか?
「う~ん、質問次第では守秘義務があるので。答えられる質問には答えますよ」
「何故、運転手やってるんですか?っていうのは答える事が出来ないのですか?」
「いや、そんな事はありませんよ。私も以前は亮輔さんと同じように、色んな方を相手にしました。
勿論、男女問わずに」
以前はレンタル会員だったのか…
「でも、それが何故、運転手に?」
「そうですねぇ、途中からオーナー専属のレンタル会員になった、とでも言うんでしょうかね。まぁ、それと送迎する人も必要でしたからね。それからは、運転手としてオーナーに仕えてますよ」
オーナー専属…
あのオーナーも女だ。そういう相手が欲しかったんだろうか。
「私は物心ついた時から、親がいなくて祖父母に育てられたんですがね。まぁ、立て続けに他界してしまって、祖父母の知り合いだったオーナーに拾われるような形で、この仕事を手伝ってるうちに、気がついたら運転手やってた、そんな感じですかね」
オーナーが瓜田の祖父母と知り合い?
あのオーナーは一体何者なんだろうか。
「瓜田さん、オーナーは全く自分の名を名乗らないのですが、それは何でですか?」
祖父母と知り合いならばオーナーの名前は知っているはずだ。
「申し訳ありません、それは守秘義務なもので」
「じゃあ、瓜田さんはオーナーの名前を知ってるって事ですか?」
「う~ん、それも微妙な質問ですね~、一応知ってはいますが、果たしてそれが本名なのかどうか。私にも分かりかねますね」
不思議だ…何でそこまでして名前を隠したがるのか。
ただ、この世界は間違いなく裏社会だ。てことはヤクザ者なのか?
「瓜田さん、もう一つお聞きしたいのですが?」
「何でしょうか?」
「オーナーや瓜田さんはヤクザですか?直球な質問で申し訳ないのですが…」
さすがにこれは答えられないだろうな。
「いや~、痛いとこ突いてきますね。はっきり言えば、私やオーナーはカタギの人間ではないですね」
という事は、ヤクザか…
でも、ヤクザ者には見えない程、穏やかな人物だ。
オーナーはともかく、瓜田は爽やかな好青年で、いつもスーツを着ている。
この人がヤクザ?
いわゆる、インテリヤクザなのか?
「真っ当な人間かそうじゃないか。
それは別にヤクザの世界じゃなくても、普通の社会でもいるじゃないですか?
真っ当な生き方をしてないのに、サラリーマンをしてる人もいれば、真っ当な生き方をしてるヤクザな人もいます。
要はその人の考え方次第で真っ当かそうじゃないか、結局は人間性がものを言うんじゃないか。
私はそう思いますね」
その人の人間性か…
オレはどっちなんだろうか。
真っ当ではないだろうな。
となると、オレはヤクザな人間なのか?
「私はどちらかと言えば、グレーな人間です。白にもなれるし、黒にもなれる。その境界線はどこか?と問われると、上手く表現出来ませんが、表の世界でも、裏の世界でも生きていける。多分、オーナーもそうじゃないでしょうかね。
まぁ、改めて聞いたことはないですが」
グレーな存在か…
考えようによっちゃ、どちらにもなれる、厄介な立場な人間なのか。
「でも安心してください。私は至って、ごくフツーの人間ですよ。人間って、正義にもなれるが、悪魔にもなれる。世の中で一番残酷なのは人間ですからね」
何だか深い話だな…
まだオレのような子供には理解出来ない。
人生論というか、何なのか知らないが、この人はまだ、20代半ばぐらいの人だ。
随分と達観した物の見方をする人だ。
そんな人をも、配下にするオーナーって一体…?
「さぁ、着きましたよ。亮輔さん、暫くの間、信用を取り戻すのに時間はかかるでしょうが、これからは誠心誠意、お客様の要求にお応えください。
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オレは初心に戻って、瓜田の言うとおり、信頼を回復させるしかないのだ。
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