仲村慶彦の憂鬱な日々 社会人編

sky-high

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こりゃ筋金入りだ

声が枯れても

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「うわぁ…何今の?!1回転して倒れたよ!大丈夫なの?」

日本人レスラーが外国人レスラーの繰り出すラリアットをモロに食らい、1回転してマットに倒れた。

スゲー試合だ!

観客も盛り上がっている!


「高橋さん、今のラリアットは技を出したレスラーより、技を受けたレスラーを誉めるべきです!ああいう派手な受け方をするから、技が見映えするんです!」


プロレスってのは、相手の技も受けなきゃならないって事なんだが、他の格闘技じゃあり得ない事だな。

ボクシングだったら、相手のパンチをモロに受けたら、そのままKO敗けだ。

試合はどう見ても日本人レスラーが劣勢だ。

あの体格差は反則だ。

「いけー、休むな休むな!ガンガン攻めろ~っ!」

彩音は今まで聞いた事ない程の大きな声で声援を送る。


「ちょっと、酒井さん…熱くなりすぎてんじゃ…」


沙織も驚いている。

ジキルとハイドみたいな豹変だ…

【ワァーッ!】

「何、今の!何が起こったの?」

沙織は目をまん丸く見開き、ただ茫然としてた。

「フランケンシュタイナーですね!」

「何、フランケンシュタイン?えっ、何なの?」

外国人レスラーが突進したところを、日本人レスラーがジャンプして相手の両肩に飛び乗り、そのまま後ろに回転して外国人レスラーをひっくり返した。

【ワン、ツー、…】

「カウント2.99!休むな、攻め続けろ~っ!」

外国人レスラーはスリーカウントギリギリで跳ねのけた。

【ドンドンドンドンドン!】

「えっ、何!この地鳴りみたいなのは?何なの、もぅ~?」

「高橋さん、これが重低音ストンピングです!」

「え…重低音?ストン…えっ?」

ファンが興奮して足をバタバタ鳴らしている。

これが重低音ストンピングというらしい。

ボクシングでは滅多に起こらない現象だ。


試合は外国人レスラーが体格を生かしたパワーで追い詰める。


しかし、日本人レスラーは腕を掴み、そのまま飛び付き、回転して腕ひしぎ逆十字固めに捕らえた。


「よし、飛び付き腕十字!これで決まったか?」

どっから声出してんだ、彩音は?


だが、観てると確かに興奮する。

凄い熱気だ。

割れんばかりのコールで、隣にいても会話が出来ない程だ。

「そのまま締め上げろ!ロープなんかに逃げるな!あぁ~…何やってんだよ、ったく!そこで極めちゃえよ!」

「仲村くん…酒井さん恐いんだけど…」

彩音の豹変ぶりに沙織は恐れ慄く。


こんな形相、見たことないぞ!


【カンカンカンカンカンカン】

「あぁー、フルタイムドローか!」

結局、外国人レスラーがガンガン攻めたが、時間切れの引き分けに終わった。

「いいぞーっ、ナイスセールだったぞ~っ!」

「セールって何?」

「セールとは、相手の技を受ける事です。セールが上手いと技が映えるんです!」

受けが上手いと技がキレイに見えるんだ。

奥が深いな、プロレスは…

「後、何試合あるのかしら?これじゃ身体がもたないゎ…」

沙織はグロッキー状態だ。

ここはまるで異次元の世界に迷いこんだ空間のようだ。


「高橋さん、仲村さん!プロレスとは、エンターテイメントな要素を含んでいるんです!だからダイナミックでスリルな展開がいっぱいあるんです!」


「…酒井さん、声枯れてるけど、大丈夫?」

声を張り上げ過ぎたのか、ガラガラな声になってる。

キャンディボイスの彩音が大声を張り上げガラガラなハスキーボイスになっちゃうなんて…

その後も彩音は絶叫し、沙織は目を白黒させ、オレは会場の熱気に圧倒された。


そしてメインの試合が始まった。

もう、彩音はほとんど声が出ていない。

「あ、あの何なの?サーカスみたいな曲芸みたいな技は?」

「あ"れ"ば、ラ・ゲブラータです…」


ヒデー声だ。

「酒井さん…声がガラガラだよ。あんまり声だすと喉がおかしくなるから、ね?」


「大丈夫でず…最後ま"で頑張りま"ず…」

…今にも死にそうな感じだぞ、彩音!

何がキミをそこまでさせるんだ?

プロレス観戦にそこまで命懸けることはないだろ!

「高橋さん、酒井さんかなりヤバくないすかね?」

「もう、無理!脚はパンパンだし、酒井さんはあんなんだし…」

沙織は疲労困憊だ。

何でこんなに疲れるんだ?

「ヘソだ、ヘソー!バックドロップはヘソで投げろ~っ!」

もう無理!色々と無理!

ここにいるのは彩音の格好したオッサンだ!

あの可愛い彩音はどこいったんだ?




プロレス観戦って、エネルギーの消費量がハンパじゃない…
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