お狐様とひと月ごはん 〜屋敷神のあやかしさんにお嫁入り?〜

織部ソマリ

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18.六日目:変化

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 六日目

 本日の朝食はホカホカのごはんだ。この前スイートポテトを作ったけど、ダンボールにはさつま芋がまだまだどっさりと入っていたので、今日は『さつま芋の炊き込みご飯』にしてみた。

 台所の付喪神さんたちにレシピを知ってる? と聞いてみたのだけど、どうやらうろ覚えらしかったので、アプリを見ながら作ってみる事にしたのだけど……。

「あ、意外と簡単そう! 私がお芋を洗うから、二人は1.5センチ角……えっとね、これくらいに切ってくれるかな? あ、皮はそのままで切ってください!」

 と、包丁さんとまな板さんにタブレット画面を見せ、お願いする。すると包丁さんは、トコトン! と了承の合図にその柄でまな板さんを叩いた。

 そこからはもう簡単。ひたすら綺麗に洗い、切ってもらったさつま芋を水の入った米の上に乗せ、塩を振ってひと混ぜ。あとは竈神さんにお任せするだけだ。


「あ、上手くいってそう……?」

 そろそろ炊けそうなお釜からは、ご飯のほんのり甘い優しい匂いと、さつま芋のホクホクとしたあの甘い匂いが漂ってきている。良かった、美味しく炊けてそうだ。

 あとは炊けた後にゴマを振るのを忘れないようにしなければ。ゴマがあるとないとでは美味しさが変わってしまう。そう、あの香ばしさが味を締めてくれているのだ、きっと。

「炊飯器もあるけど……やっぱり竈神さんのご飯は美味しいもんね!」

 パチパチ! と竈の小枝が爆ぜた。これは嬉しい時の竈神さんの定番仕草だ。

 ――それに、炊飯器じゃご飯が足りないしね。
 最近子狐ちゃんたちがやけに食べたがるので、沢山炊けるお釜でないと間に合わないのだ。銀もよく食べるし……。

「成長期なのかな?」

 もしかしたら、沢山食べないといけないのかもしれない。

 
「おお、良い匂いだと思ったら、炊き込みご飯に豚汁か! ああ、小松菜のおひたしも良いな。柚子の香りがまた良い……」
「それ庭になってた柚子なの。刻むとほんと香りが立つよね」

「ではいただこう。……ん? 美詞、豚汁の具が多すぎやしないか? 随分と重い……」
「うん、みんなよく食べるから具沢山にしたの。お代りもあるからいっぱい食べてね! あ、子狐ちゃんたち、フーフーを忘れずにね!」

 毎食のことなのにがっついて火傷をする子がいるので、これだけは毎回しつこく言うようにしている。毎食だけど、八匹もいるのできっと代わる代わるやっているのだろう。多分。

 ずず、と熱い豚汁をすすると、擦り下ろした生姜の良い香りが鼻に抜けた。そして銀杏切りにした大根とニンジン……うん、味もよく染みてる……!

「美味しい~! は~あったまるね」
「そうだな。このゴボウも甘いな? 美味い」
「ね! あ、こんにゃく発見。私好きなんだよね……こんにゃく……っ、あちっ」

 子狐ちゃんたちがチラッと私を見ていた。そして一匹が「ふーふーだよ」と息を吹く仕草をして「きゅきゅっ!」と笑う。
 ああ、私の大人としての威厳が……! 毎食注意しているのに自分でやってしまうとは。

「お、里芋も入れたのか」
「そう。いつもおばあちゃんが入れてたでしょう? あと沢山あったしね」

 ああ、しっとりトロッとしていて美味しい。もう少し煮込めば形が崩れてお味噌が染みて、それもまた美味しくて好きだ。

 座敷に並ぶ銀に子狐ちゃんたち、そして「美味しくできたね」と賑やかに踊っている台所の付喪神さん――。

「あれ?」

 私は少しの違和感に箸を止めた。

「どうした、美詞」
「あ、うん。なんだか……今日はみんないつもより静かだなって……」

「……そうか? ああ、今日は雪が降っているから音が吸われているのだろう」
「そうなんだ……?」

 カタカタ、トントコ。付喪神たちの奏でる音楽は確かにいつも通りに聞こえてはいる。だけど少し元気がないように感じるのだけど……それは私だけのよう。
 銀も子狐ちゃんたちも、そのままいつも通りに食事を続け、これまたいつも通りに綺麗に平らげた。

「ごちそう様でした」
「ご馳走様でした」
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