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7.神々
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あっという間に、神無月が訪れた。
銀花と紅月を六花とハルトの家へ送り届け、そのまま出雲大社を目指す。と言っても、華月の計らいで天狗達が朧車を出してくれているので、ただ乗っていれば朝に出て夕方には到着するのだ。
人間の文明を利用すれば一瞬なのだけれど、一度使用した時に蓮が乗り物酔いをしてしまった。様々試した中で、唯一酔わなかったのが朧車というわけだ。
出雲大社に踏み入れると、シャンシャンと鈴の音が鳴り響き、景色が一変する。そこは神の領域だ。
「この感じ、慣れないんだよなぁ」
「え? そうなの?」
「なんかこう、試されてる気がして好きじゃない。天花は平気なの?」
「うーん。気にしたことないかな」
この時点で弾かれた者は、人間や、神議りの手伝いで呼ばれていない妖、もしくは神ではあるが何か問題があり参加不可……といった感じだ。
門をくぐった後に蓮が振り返る。
「皆さん、いらっしゃいますね」
「はい、蓮様」
「大和さんも暁さんも、無事に入れて良かったです」
「ありがとうございます」
双子が入れたということは、少なくとも必要だと判断が下されたからだろう。正直、まだ弱く幼い双子が弾かれる可能性も考えなかった訳ではない。万が一、神の領域に入れなかった時は一度集落まで戻り六花に預ける予定だった。
ホッと息を吐くと、恭吾が察したらしく肩に手を乗せてきた。
「良かったな」
「とりあえずね。神在月の間に問題を起こさなきゃいいけど」
「大丈夫……と思いたなぁー。ははは。神無月、いや、出雲に来たから、もう神在月だな。その間だけでも大人しくしておいてくれと願うばかりだ」
たかが地域的な呼び名の違いだけれど、ここの主がそれを大事にしているので、出雲では神々の集まる土地として神在月と呼ぶ。
「神ばっかりなのに、願うなんて変な話」
「それもそうだな」
笑いあっていると、先に進んでいた蓮に呼ばれて慌てて二人で駆けて行ったのだった。
「大国主大神に、冬の神・蓮がご挨拶申し上げます」
神殿の最奥に鎮座している大国主大神に、蓮を先頭に一同が正座をして頭を深く下げる。
この場所は深く呼吸をしてしまうとむせそうになるほど、芳醇な甘い香が漂う。それを好ましいと思う神が多いというが、どうしてもそれが好きになれなかった。
多分、冬の朝のような爽やかな香りとは正反対だからだろう。
「よく来た。皆、おもてをあげよ」
上座に片膝を立てて座った体格の良い【漢】という風貌の男。それがこの出雲大社の主である大国主大神だ。
普通、高貴な立場の人は御簾の中で顔を出さないらしいが、その御簾を上げて満面の笑みをこちらに向けている。
「蓮も恭吾も変わりなさそうで何よりだ。二人目はまだか?」
「ありがとうございます。そうですね。いつでもと考えてはおりますが、銀花が神在月に共に参れるようになってからの方がと考えております」
「そうかぁ? 吾子は何人居ても良いではないか。余は吾子が百……百八十……くらいそのくらいおいるぞ?? 縁ならここで結べば良いしな」
「うーん、俺としては銀花の手が離れたら、また蓮を独り占めしたい気もしますね」
「んっぷ!! 恭吾ぉ、お前本当にそういうとこあるよなぁ。ほら、見てみろ蓮の顔が真っ赤だぞ?」
大国主大神は大笑いしながら手にしていた扇子で床をコンコンと叩く。この神は、悪気が一切ないのだ。だからこそ、好感が持て……そして、面倒臭い。
「ん? あぁ、後ろの二人。蓮の所で産まれた湖の神だな?」
「はい。大和、暁、ご挨拶を」
ゴクリと思わず唾を飲む。
大国主大神への挨拶。これは、何よりも重要だ。
ここ数日で、練習をし続けたと聞いている。大丈夫。大丈夫。天花のお墨付きだ。
そう心で唱えても不安は拭えない。
こちらの気持ちを知ってか知らずか、双子はあっさりと恭しく頭を下げた。
「大国主大神へ、お初のご挨拶を申し上げます。冬の神、蓮の統括する湖の神として産まれた大和と申します」
「同じく暁にございます。何卒、宜しくお願い奉りまする」
思わず「おおっ」と感嘆の声を上げそうになるのを抑え、成長を感じた双子に目を細める。この挨拶ならば何も問題無く大国主大神も新たな神を受け入れるだろう。
そう思ったが、大国主大神はその挨拶を一瞥し「そうか」とだけ呟いた。
これは宜しくない。
多分、双子以外は全員がそう思っただろう。普段ならば、大国主大神は新たな神に根掘り葉掘りどうでも良いことを質問している。その姿を何度か目撃しているし、同じ神使として来ている者たちにも聞いてきた。
それが無いということは……。どういうことか見当もつかない。もちろん、初めての双子は今の応対が通常だと思うだろう。
何とも言えない雰囲気が数秒流れ、その空気を壊したのもまた、大国主大神自身だった。
「そういえば、天花に風花。一年見ぬ間にまた美しくなったな。あぁ、そうだ。天花よ。華月はもう来ているぞ。神議りの最中は難しかろうが、時間を作って夫婦で出雲を観てまわるといい」
「はい。ありがとうございます」
素直な天花の言葉に満足気に頷いた大国主大神は、今度はこちらに目を向けた。……嫌な予感がする。というか、それはもはや確定事項。毎年恒例行事並の出来事だ。
「風花、昨年の祭事見事だったな」
「大国主大神と蓮様の多大なるお計らいがありましたので、成功したのです」
「謙遜するでない。風花の采配は常に素晴らしい。本質を見抜く目と、的確な指示もだが、何より歳追うごとに美しくなる。風花のような素晴らしい者に今まで出逢ったことがないぞ」
「恐れ多いことにございます」
「はぁー、普段のように口悪くすればいいものを。嫁に来れば変わってくれるか? 嫁なら何人も居るが、まぁ誰も一人増えたからといって目くじらを立てるような阿呆はおらぬ。それに風花なら皆喜んで嫁に迎えるぞ? さぁ、余は今でも良いが」
「お戯れを」
ほんのり社交用の笑みを浮かべると、大国主大神は鼻で笑うように息を吐いて扇子を開いては閉じる。
ふと視界の端に双子が入ったが、様子がおかしい。
だが、思い切りそちらを向くことが出来ず、視線を動かさないように注意しながら片隅に映る双子を窺った。
(なんか、キレそうじゃないか!?)
なぜそんなに仇を見るように大国主大神を睨みつけているのか、皆目見当もつかない。双子に質問はしなかったけれど、立ち去れと言われたわけでもないので今はとりあえず無難に終わらせるべきだと分かっているだろう。なのに。
「余は本気だ」
「お気持ちはありがたいのですが、私は蓮様の神使であります。そして、それを全うして過ごしたいと考えております」
「ふむ。余の神使になるか? 天花と風花は変わった神使の成り方をしたが、使える神を変えることは出来るのだぞ」
「蓮様だけです」
初めて大国主大神に嫁や神使の話をされた時は、肝が凍るくらい何も言えなくなった。しかし、その時に蓮が風花は私の神使だと言ってくれてその場を収めた。
翌年もそれは続き、今度は恭吾が風花にはまだやってもらうことがあるのでと断った。
そしてその翌年からはなんだか慣れてしまい、こうして毎年言葉遊びのように断っているのだ。
(ちっ、双子に先に大国主大神の戯れを伝えとくべきだったな)
未だに睨みつけている双子だが、大国主大神はそんな小者の睨みなどネズミがチューと鳴いているくらいの感覚なのだろう。
「ふむ。今年も振られてしまったな。まぁ、神議りはこれからだ。たんと口説いてやろう。では、今年も宜しく頼む」
「畏まりましてございます」
一同で頭を下げてから退室し、ホッと息を吐く。
毎年恒例と言っても、やはり緊張はする。
肩を回しながら歩いていると、双子が両脇を挟むように立った。自身よりまだ背も低く、幼い風体だが、妙な圧迫感にまた息を吐いた。
「なんだよ」
「大国主大神は風花さんを好いてるんですか?」
まだ睨む顔を戻せていない大和の眉間に人差し指の先を押し付ける。せっかく綺麗な顔をしているのに、その睨む顔でできた皺が人相を五倍は悪くしていると思う。
「好いてるか、好いていないかなら、好いてるんだろうな」
「嫁が何人もいるのに!!」
「おいおい、暁。勉強しただろ? 神々に嫁が多いのは結構普通。最近の神はそうでなくても、大国主大神が生まれた頃の神なら嫁が近親者とかも関係ないしな」
「そうだけど、ふーちゃんは。ふーちゃんは」
心配してくれているのだろう。大国主大神の元に嫁ぐなど、欠片も考えたことがない。しかし、いつかは誰かを嫁に迎えるか、自分が嫁に行くのだろう。
ただ、今は蓮の神使で手一杯だ。
「今は無いよ」
「……いつかはするんですか? 大国主大神と!?」
「いや、大国主大神はないかな……。でも、そりゃ、いつかは結婚したい。それはお前らも一緒だろ? だから、神議りで沢山学んで、神としての力をつけて、神の嫁を貰えるように頑張れよ」
双子が考え込むように黙ったので、きっと理解してくれたのだろう。
そんなやり取りをしているうちに、四季神の神議りの部屋に到着し、襖の前に立った天花が中に声をかける。すると、柔らかい声でどうぞと返事があった。
「失礼致します」
天花が襖を開き、蓮から順に入室すると既に到着していた春の神と秋の神が茶を飲んでいた。
「おや、遅くなってしまいましたか?」
蓮の言葉に、桃色の着物を身に纏った愛らしい少女のような姿の春の神が、手を振りながら「大丈夫よ」と返す。
「まだ、夏ちゃんも来てないからぁ」
「夏が最後なのはいつもだし」
秋の神はいつもながら、かなりラフな格好だ。というか、随分と現代に馴染んでいる。秋の神使に聞いたところ、パーカーとデニムという衣類らしい。見た目の年頃は人で言うと二十後半と言った具合で、少しだけ伸びた髪をひとつに結んでいるが、それもとても似合っている。
用意されていた座布団に蓮と恭吾が座り、その後ろに四人で控え頭を下げる。
「春さん、秋さん、お久しぶりです。本年も神議りの期間、宜しくお願い致します」
「ええ、こちらこそぉ! 天花ちゃんに風花ちゃんもよろしくねぇ。後ろの子がお手紙の子達ね? 大和ちゃんと暁ちゃんだったわねぇ。私は春の神よ。私の神使は、この薄紅の髪の毛の桜ちゃんと橙の髪の毛の山吹ちゃん!」
「桜です」
「山吹です」
「「よろしくお願いします」」
相変わらず礼儀正しい二人の挨拶に春は満面の笑みを浮かべた。再度頭を下げると、双子も倣って頭を下げた。
「ほらほら、秋ちゃんもぉ」
「秋です。よろしく。神使は後ろにいる楓と桂」
秋とは正反対にキッチリと着物を身に纏った楓と桂が頭を下げ、今度は双子が進んで頭を下げた。
「冬の神、蓮様の湖から産まれました。大和と暁です。何卒宜しくお願い申し上げます」
春と秋が頷き、一段落ついたことに安堵する。これだけ出来ていれば、他で問題を起こすこともそうそうないだろう。
「ねぇ、それより天花。文は読んだ?」
「はい。その件で秋様にお伺いしたいことが……」
こうして蓮、恭吾と春。秋と天花が話し出した。
これも、いつもの流れだ。
ホワホワとした春は話を聞いてくれる蓮と恭吾が気に入り、秋は天花が天狗の里で仕入れた知識や書籍の話をすることが好きなのだ。
初日は大体これで終わる。
ここでのんびりとしていても仕方がないので、さっさと次の挨拶に行こうかと立ち上がる。
「じゃぁ大和と暁の部屋に行くか」
「そうしましょう」
大和も同意して立ち上がろうとした時、襖が勢い良くスパーン!! と音を立てて開いた。ビクッと双子は肩を揺らしたが、そんなことをする神はこの部屋で残りの一人しかいない。とりあえず皆が襖に目を向けるが、すぐに蓮と双子以外は元に戻った。
「今日は遅れずに来たぞ!!」
「夏さん、お久しぶりです」
「おお! 蓮!! 久しいな。それにしても相変わらず白いが大丈夫か? 日焼けも大切だぞ?」
「外に出ても焼けないんですよね」
「もっと出たらいいんじゃないか?」
チラリと様子みる。もう十一月だというのに、何故か右側の着物を脱ぎはだけさせ肩を出して、更には素足。そこだけ真夏のような格好は、日焼けした肌に鍛えられた筋肉だからこそ許される所業だ。しかもその見目に、短髪が良く似合う。
そんな風変わりの神、それが夏の神だ。
「まぁ、冬の神らしいっちゃらしいな。ん? なんだ? そのちっこいの二つ」
夏が指を差した先には、大和と暁がいる。二人が頭を下げ、大国主大神の時と同じよう挨拶をした。
その流暢な言葉遣いに思わず心で拍手をしたが……。
「嫌な目だな」
「!?」
夏の言葉にその場が凍りつく。
雑談をしていた秋と天花も、思わぬ事態に言葉が出ないようだ。
「……こっちもそう思ってました」
「!? ――ー!?」
何を言っちゃってるんだ。大和よ。熱でもあるのか? 相手は夏の神だぞ。大国主大神程でなくとも、神格はちっぽけな湖の神と比べ物にならない相手だ。
「ふーん。くそ生意気だな。蓮。こんなのどうして産んだんだ? いるか? これ」
挑発的に蓮を一瞥すると、「大切な私の家族です」とニコリと笑って流してしまった。怒っている訳ではなく、いつもの言葉遊びの一つと捉えているのだろう。……多分。
何か言い出しそうな暁の口を抑え、後ろに追いやって夏の前にでる。
「夏様、お久しゅうございます」
「風花!! 会いたかったぞ!!」
「お元気そうでなによりです。今年の夏はどちらでお過ごしになったのですか?」
夏は人間が好きだ。四季神の中ではダントツで一番に人間に関わっている。逆に関わっていないのは春だ。
春は本当に春の柔らかい風が吹く時しか人間に会わない。しかも祭り限定。突然現れた美しいその姿に、人々が惚れ惚れとし春だなぁなんて言う姿を見て、満足し、桜前線と共に北上。日本の春を満喫したら、暑い夏はそのまま北のどこかで過ごし、神議りに出て、南へ。そして春が来るまで適当に過ごしてまた春にして良い時期を待つらしい。
不思議な雰囲気は、春という麗らかなその名に相応しいと言うべきか。
秋はというと、実は天狗の里と深いかかわりがある。というのも、秋は普通に人間の世界で働いているからだ。本人曰く「最近は夏が強くて秋の期間が少ないから、やることない時は全世界のシステムのハッキングして楽しんでる。戦争を止めたり、ヤバいことを防いだり、人助けハッカーとしてね」らしい。
言ってることの半分も理解出来ないが、その仕事をしているからか、神らしい衣装や風習に興味がないようだ。
そして、夏。
全国の暑い場所、夏特有の盛り上がる祭りには必ず夏がいると言っても過言ではないらしい。そして、人間の前で「俺は夏の神だ!!」なんて豪語しているらしいが、誰も信じず「面白いやつ」で済まされているという。もう、規格外の神だ。
「今年は鳥取にいたんだ!! 近いから遅刻しなかったってわけだな」
「秋になってすぐに発てば、日本各地間に合いますよ」
「そうだな。うーん、なんかこう。まだ暑くなるかもしれない!! って期待するんだよなぁ。十月もそこそこ暑いよな?」
十月になれば、もう完全に秋なのでは? と思わないでもないが、もしかしたら夏にとってはまだ秋になりたてなのかもしれない。
そうすると、夏の感覚で冬はあるのだろうか……。
「で、そいつら何? 風花と話してる間も睨んでくるとか、随分だな」
「!?」
せっかく夏の機嫌を少しだけ良くしたのに、振り向いた先で双子は本当に親の仇を睨むような表情をしている。
「こ、今年、蓮様の湖で産まれた双子の神です! まだ産まれて間もないですが、銀花や紅月と天狗の里で修練もしました!!」
修練は自身が怪我をしてしまったので致し方なくだけれど、今はそれも良いように使わせてもらう。そうでもしないと、後ろの双子と夏は一触即発の雰囲気だ。
無言のままの三人に、神議り前から胃が痛い。
「ふーん。なぁ、風花」
「はい」
「こんな睨んでたら、本当はちょーっと仕置をされても文句は言えないんだわ」
「……」
夏の圧が凄い。しかし、謝らない双子からも謎の圧があり、このままでは心が圧死しそうだ。
そう思っていると、夏がふと表情を和らげた。
「って、言いたいけど。風花を泣かせたい訳じゃないんだわ。でも、このまま引くのもアレだから、一つ聞き入れてくれないか?」
もう何でもいい。聞き入れるから、この場を収めてくれという気持ちで頷く。すると夏は嬉しそうに笑い、酒の相手をしろと言ってきた。
それくらいならお安い御用だ。いつでも相手をすると伝え、双子と共に部屋を出た。
どっと疲れて歩く速度が遅くなる。
「はぁぁぁぁ……」
「ふーちゃん、本当に飲むの?」
「あ?」
「風花さんが相手をする必要があるんですか?」
原因はお前達だろ……と言ってやりたかったが、もうそんな気力も無く、あるんだよと適当に答えて、大和と暁の担当する神議りの部屋に押し込んだ。
双子の部屋の神々も、まだ産まれて長くない。若い神同士仲良く出来るだろう。
あとは自分達でどうにかしてくれ。
廊下に差す晴れ晴れとした太陽を見上げ、一ヶ月か……思わず呟いてしまったのだった
銀花と紅月を六花とハルトの家へ送り届け、そのまま出雲大社を目指す。と言っても、華月の計らいで天狗達が朧車を出してくれているので、ただ乗っていれば朝に出て夕方には到着するのだ。
人間の文明を利用すれば一瞬なのだけれど、一度使用した時に蓮が乗り物酔いをしてしまった。様々試した中で、唯一酔わなかったのが朧車というわけだ。
出雲大社に踏み入れると、シャンシャンと鈴の音が鳴り響き、景色が一変する。そこは神の領域だ。
「この感じ、慣れないんだよなぁ」
「え? そうなの?」
「なんかこう、試されてる気がして好きじゃない。天花は平気なの?」
「うーん。気にしたことないかな」
この時点で弾かれた者は、人間や、神議りの手伝いで呼ばれていない妖、もしくは神ではあるが何か問題があり参加不可……といった感じだ。
門をくぐった後に蓮が振り返る。
「皆さん、いらっしゃいますね」
「はい、蓮様」
「大和さんも暁さんも、無事に入れて良かったです」
「ありがとうございます」
双子が入れたということは、少なくとも必要だと判断が下されたからだろう。正直、まだ弱く幼い双子が弾かれる可能性も考えなかった訳ではない。万が一、神の領域に入れなかった時は一度集落まで戻り六花に預ける予定だった。
ホッと息を吐くと、恭吾が察したらしく肩に手を乗せてきた。
「良かったな」
「とりあえずね。神在月の間に問題を起こさなきゃいいけど」
「大丈夫……と思いたなぁー。ははは。神無月、いや、出雲に来たから、もう神在月だな。その間だけでも大人しくしておいてくれと願うばかりだ」
たかが地域的な呼び名の違いだけれど、ここの主がそれを大事にしているので、出雲では神々の集まる土地として神在月と呼ぶ。
「神ばっかりなのに、願うなんて変な話」
「それもそうだな」
笑いあっていると、先に進んでいた蓮に呼ばれて慌てて二人で駆けて行ったのだった。
「大国主大神に、冬の神・蓮がご挨拶申し上げます」
神殿の最奥に鎮座している大国主大神に、蓮を先頭に一同が正座をして頭を深く下げる。
この場所は深く呼吸をしてしまうとむせそうになるほど、芳醇な甘い香が漂う。それを好ましいと思う神が多いというが、どうしてもそれが好きになれなかった。
多分、冬の朝のような爽やかな香りとは正反対だからだろう。
「よく来た。皆、おもてをあげよ」
上座に片膝を立てて座った体格の良い【漢】という風貌の男。それがこの出雲大社の主である大国主大神だ。
普通、高貴な立場の人は御簾の中で顔を出さないらしいが、その御簾を上げて満面の笑みをこちらに向けている。
「蓮も恭吾も変わりなさそうで何よりだ。二人目はまだか?」
「ありがとうございます。そうですね。いつでもと考えてはおりますが、銀花が神在月に共に参れるようになってからの方がと考えております」
「そうかぁ? 吾子は何人居ても良いではないか。余は吾子が百……百八十……くらいそのくらいおいるぞ?? 縁ならここで結べば良いしな」
「うーん、俺としては銀花の手が離れたら、また蓮を独り占めしたい気もしますね」
「んっぷ!! 恭吾ぉ、お前本当にそういうとこあるよなぁ。ほら、見てみろ蓮の顔が真っ赤だぞ?」
大国主大神は大笑いしながら手にしていた扇子で床をコンコンと叩く。この神は、悪気が一切ないのだ。だからこそ、好感が持て……そして、面倒臭い。
「ん? あぁ、後ろの二人。蓮の所で産まれた湖の神だな?」
「はい。大和、暁、ご挨拶を」
ゴクリと思わず唾を飲む。
大国主大神への挨拶。これは、何よりも重要だ。
ここ数日で、練習をし続けたと聞いている。大丈夫。大丈夫。天花のお墨付きだ。
そう心で唱えても不安は拭えない。
こちらの気持ちを知ってか知らずか、双子はあっさりと恭しく頭を下げた。
「大国主大神へ、お初のご挨拶を申し上げます。冬の神、蓮の統括する湖の神として産まれた大和と申します」
「同じく暁にございます。何卒、宜しくお願い奉りまする」
思わず「おおっ」と感嘆の声を上げそうになるのを抑え、成長を感じた双子に目を細める。この挨拶ならば何も問題無く大国主大神も新たな神を受け入れるだろう。
そう思ったが、大国主大神はその挨拶を一瞥し「そうか」とだけ呟いた。
これは宜しくない。
多分、双子以外は全員がそう思っただろう。普段ならば、大国主大神は新たな神に根掘り葉掘りどうでも良いことを質問している。その姿を何度か目撃しているし、同じ神使として来ている者たちにも聞いてきた。
それが無いということは……。どういうことか見当もつかない。もちろん、初めての双子は今の応対が通常だと思うだろう。
何とも言えない雰囲気が数秒流れ、その空気を壊したのもまた、大国主大神自身だった。
「そういえば、天花に風花。一年見ぬ間にまた美しくなったな。あぁ、そうだ。天花よ。華月はもう来ているぞ。神議りの最中は難しかろうが、時間を作って夫婦で出雲を観てまわるといい」
「はい。ありがとうございます」
素直な天花の言葉に満足気に頷いた大国主大神は、今度はこちらに目を向けた。……嫌な予感がする。というか、それはもはや確定事項。毎年恒例行事並の出来事だ。
「風花、昨年の祭事見事だったな」
「大国主大神と蓮様の多大なるお計らいがありましたので、成功したのです」
「謙遜するでない。風花の采配は常に素晴らしい。本質を見抜く目と、的確な指示もだが、何より歳追うごとに美しくなる。風花のような素晴らしい者に今まで出逢ったことがないぞ」
「恐れ多いことにございます」
「はぁー、普段のように口悪くすればいいものを。嫁に来れば変わってくれるか? 嫁なら何人も居るが、まぁ誰も一人増えたからといって目くじらを立てるような阿呆はおらぬ。それに風花なら皆喜んで嫁に迎えるぞ? さぁ、余は今でも良いが」
「お戯れを」
ほんのり社交用の笑みを浮かべると、大国主大神は鼻で笑うように息を吐いて扇子を開いては閉じる。
ふと視界の端に双子が入ったが、様子がおかしい。
だが、思い切りそちらを向くことが出来ず、視線を動かさないように注意しながら片隅に映る双子を窺った。
(なんか、キレそうじゃないか!?)
なぜそんなに仇を見るように大国主大神を睨みつけているのか、皆目見当もつかない。双子に質問はしなかったけれど、立ち去れと言われたわけでもないので今はとりあえず無難に終わらせるべきだと分かっているだろう。なのに。
「余は本気だ」
「お気持ちはありがたいのですが、私は蓮様の神使であります。そして、それを全うして過ごしたいと考えております」
「ふむ。余の神使になるか? 天花と風花は変わった神使の成り方をしたが、使える神を変えることは出来るのだぞ」
「蓮様だけです」
初めて大国主大神に嫁や神使の話をされた時は、肝が凍るくらい何も言えなくなった。しかし、その時に蓮が風花は私の神使だと言ってくれてその場を収めた。
翌年もそれは続き、今度は恭吾が風花にはまだやってもらうことがあるのでと断った。
そしてその翌年からはなんだか慣れてしまい、こうして毎年言葉遊びのように断っているのだ。
(ちっ、双子に先に大国主大神の戯れを伝えとくべきだったな)
未だに睨みつけている双子だが、大国主大神はそんな小者の睨みなどネズミがチューと鳴いているくらいの感覚なのだろう。
「ふむ。今年も振られてしまったな。まぁ、神議りはこれからだ。たんと口説いてやろう。では、今年も宜しく頼む」
「畏まりましてございます」
一同で頭を下げてから退室し、ホッと息を吐く。
毎年恒例と言っても、やはり緊張はする。
肩を回しながら歩いていると、双子が両脇を挟むように立った。自身よりまだ背も低く、幼い風体だが、妙な圧迫感にまた息を吐いた。
「なんだよ」
「大国主大神は風花さんを好いてるんですか?」
まだ睨む顔を戻せていない大和の眉間に人差し指の先を押し付ける。せっかく綺麗な顔をしているのに、その睨む顔でできた皺が人相を五倍は悪くしていると思う。
「好いてるか、好いていないかなら、好いてるんだろうな」
「嫁が何人もいるのに!!」
「おいおい、暁。勉強しただろ? 神々に嫁が多いのは結構普通。最近の神はそうでなくても、大国主大神が生まれた頃の神なら嫁が近親者とかも関係ないしな」
「そうだけど、ふーちゃんは。ふーちゃんは」
心配してくれているのだろう。大国主大神の元に嫁ぐなど、欠片も考えたことがない。しかし、いつかは誰かを嫁に迎えるか、自分が嫁に行くのだろう。
ただ、今は蓮の神使で手一杯だ。
「今は無いよ」
「……いつかはするんですか? 大国主大神と!?」
「いや、大国主大神はないかな……。でも、そりゃ、いつかは結婚したい。それはお前らも一緒だろ? だから、神議りで沢山学んで、神としての力をつけて、神の嫁を貰えるように頑張れよ」
双子が考え込むように黙ったので、きっと理解してくれたのだろう。
そんなやり取りをしているうちに、四季神の神議りの部屋に到着し、襖の前に立った天花が中に声をかける。すると、柔らかい声でどうぞと返事があった。
「失礼致します」
天花が襖を開き、蓮から順に入室すると既に到着していた春の神と秋の神が茶を飲んでいた。
「おや、遅くなってしまいましたか?」
蓮の言葉に、桃色の着物を身に纏った愛らしい少女のような姿の春の神が、手を振りながら「大丈夫よ」と返す。
「まだ、夏ちゃんも来てないからぁ」
「夏が最後なのはいつもだし」
秋の神はいつもながら、かなりラフな格好だ。というか、随分と現代に馴染んでいる。秋の神使に聞いたところ、パーカーとデニムという衣類らしい。見た目の年頃は人で言うと二十後半と言った具合で、少しだけ伸びた髪をひとつに結んでいるが、それもとても似合っている。
用意されていた座布団に蓮と恭吾が座り、その後ろに四人で控え頭を下げる。
「春さん、秋さん、お久しぶりです。本年も神議りの期間、宜しくお願い致します」
「ええ、こちらこそぉ! 天花ちゃんに風花ちゃんもよろしくねぇ。後ろの子がお手紙の子達ね? 大和ちゃんと暁ちゃんだったわねぇ。私は春の神よ。私の神使は、この薄紅の髪の毛の桜ちゃんと橙の髪の毛の山吹ちゃん!」
「桜です」
「山吹です」
「「よろしくお願いします」」
相変わらず礼儀正しい二人の挨拶に春は満面の笑みを浮かべた。再度頭を下げると、双子も倣って頭を下げた。
「ほらほら、秋ちゃんもぉ」
「秋です。よろしく。神使は後ろにいる楓と桂」
秋とは正反対にキッチリと着物を身に纏った楓と桂が頭を下げ、今度は双子が進んで頭を下げた。
「冬の神、蓮様の湖から産まれました。大和と暁です。何卒宜しくお願い申し上げます」
春と秋が頷き、一段落ついたことに安堵する。これだけ出来ていれば、他で問題を起こすこともそうそうないだろう。
「ねぇ、それより天花。文は読んだ?」
「はい。その件で秋様にお伺いしたいことが……」
こうして蓮、恭吾と春。秋と天花が話し出した。
これも、いつもの流れだ。
ホワホワとした春は話を聞いてくれる蓮と恭吾が気に入り、秋は天花が天狗の里で仕入れた知識や書籍の話をすることが好きなのだ。
初日は大体これで終わる。
ここでのんびりとしていても仕方がないので、さっさと次の挨拶に行こうかと立ち上がる。
「じゃぁ大和と暁の部屋に行くか」
「そうしましょう」
大和も同意して立ち上がろうとした時、襖が勢い良くスパーン!! と音を立てて開いた。ビクッと双子は肩を揺らしたが、そんなことをする神はこの部屋で残りの一人しかいない。とりあえず皆が襖に目を向けるが、すぐに蓮と双子以外は元に戻った。
「今日は遅れずに来たぞ!!」
「夏さん、お久しぶりです」
「おお! 蓮!! 久しいな。それにしても相変わらず白いが大丈夫か? 日焼けも大切だぞ?」
「外に出ても焼けないんですよね」
「もっと出たらいいんじゃないか?」
チラリと様子みる。もう十一月だというのに、何故か右側の着物を脱ぎはだけさせ肩を出して、更には素足。そこだけ真夏のような格好は、日焼けした肌に鍛えられた筋肉だからこそ許される所業だ。しかもその見目に、短髪が良く似合う。
そんな風変わりの神、それが夏の神だ。
「まぁ、冬の神らしいっちゃらしいな。ん? なんだ? そのちっこいの二つ」
夏が指を差した先には、大和と暁がいる。二人が頭を下げ、大国主大神の時と同じよう挨拶をした。
その流暢な言葉遣いに思わず心で拍手をしたが……。
「嫌な目だな」
「!?」
夏の言葉にその場が凍りつく。
雑談をしていた秋と天花も、思わぬ事態に言葉が出ないようだ。
「……こっちもそう思ってました」
「!? ――ー!?」
何を言っちゃってるんだ。大和よ。熱でもあるのか? 相手は夏の神だぞ。大国主大神程でなくとも、神格はちっぽけな湖の神と比べ物にならない相手だ。
「ふーん。くそ生意気だな。蓮。こんなのどうして産んだんだ? いるか? これ」
挑発的に蓮を一瞥すると、「大切な私の家族です」とニコリと笑って流してしまった。怒っている訳ではなく、いつもの言葉遊びの一つと捉えているのだろう。……多分。
何か言い出しそうな暁の口を抑え、後ろに追いやって夏の前にでる。
「夏様、お久しゅうございます」
「風花!! 会いたかったぞ!!」
「お元気そうでなによりです。今年の夏はどちらでお過ごしになったのですか?」
夏は人間が好きだ。四季神の中ではダントツで一番に人間に関わっている。逆に関わっていないのは春だ。
春は本当に春の柔らかい風が吹く時しか人間に会わない。しかも祭り限定。突然現れた美しいその姿に、人々が惚れ惚れとし春だなぁなんて言う姿を見て、満足し、桜前線と共に北上。日本の春を満喫したら、暑い夏はそのまま北のどこかで過ごし、神議りに出て、南へ。そして春が来るまで適当に過ごしてまた春にして良い時期を待つらしい。
不思議な雰囲気は、春という麗らかなその名に相応しいと言うべきか。
秋はというと、実は天狗の里と深いかかわりがある。というのも、秋は普通に人間の世界で働いているからだ。本人曰く「最近は夏が強くて秋の期間が少ないから、やることない時は全世界のシステムのハッキングして楽しんでる。戦争を止めたり、ヤバいことを防いだり、人助けハッカーとしてね」らしい。
言ってることの半分も理解出来ないが、その仕事をしているからか、神らしい衣装や風習に興味がないようだ。
そして、夏。
全国の暑い場所、夏特有の盛り上がる祭りには必ず夏がいると言っても過言ではないらしい。そして、人間の前で「俺は夏の神だ!!」なんて豪語しているらしいが、誰も信じず「面白いやつ」で済まされているという。もう、規格外の神だ。
「今年は鳥取にいたんだ!! 近いから遅刻しなかったってわけだな」
「秋になってすぐに発てば、日本各地間に合いますよ」
「そうだな。うーん、なんかこう。まだ暑くなるかもしれない!! って期待するんだよなぁ。十月もそこそこ暑いよな?」
十月になれば、もう完全に秋なのでは? と思わないでもないが、もしかしたら夏にとってはまだ秋になりたてなのかもしれない。
そうすると、夏の感覚で冬はあるのだろうか……。
「で、そいつら何? 風花と話してる間も睨んでくるとか、随分だな」
「!?」
せっかく夏の機嫌を少しだけ良くしたのに、振り向いた先で双子は本当に親の仇を睨むような表情をしている。
「こ、今年、蓮様の湖で産まれた双子の神です! まだ産まれて間もないですが、銀花や紅月と天狗の里で修練もしました!!」
修練は自身が怪我をしてしまったので致し方なくだけれど、今はそれも良いように使わせてもらう。そうでもしないと、後ろの双子と夏は一触即発の雰囲気だ。
無言のままの三人に、神議り前から胃が痛い。
「ふーん。なぁ、風花」
「はい」
「こんな睨んでたら、本当はちょーっと仕置をされても文句は言えないんだわ」
「……」
夏の圧が凄い。しかし、謝らない双子からも謎の圧があり、このままでは心が圧死しそうだ。
そう思っていると、夏がふと表情を和らげた。
「って、言いたいけど。風花を泣かせたい訳じゃないんだわ。でも、このまま引くのもアレだから、一つ聞き入れてくれないか?」
もう何でもいい。聞き入れるから、この場を収めてくれという気持ちで頷く。すると夏は嬉しそうに笑い、酒の相手をしろと言ってきた。
それくらいならお安い御用だ。いつでも相手をすると伝え、双子と共に部屋を出た。
どっと疲れて歩く速度が遅くなる。
「はぁぁぁぁ……」
「ふーちゃん、本当に飲むの?」
「あ?」
「風花さんが相手をする必要があるんですか?」
原因はお前達だろ……と言ってやりたかったが、もうそんな気力も無く、あるんだよと適当に答えて、大和と暁の担当する神議りの部屋に押し込んだ。
双子の部屋の神々も、まだ産まれて長くない。若い神同士仲良く出来るだろう。
あとは自分達でどうにかしてくれ。
廊下に差す晴れ晴れとした太陽を見上げ、一ヶ月か……思わず呟いてしまったのだった
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