義父の連れ子から逃れたい。猛勉強して志望校変更したら、家庭内ストーカーになった義弟

東山 庭子

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両思い編

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「アンタたち、一体どうなってるのよ??」

訝しげなママの表情に、とうとう来たかと思った。

「どうって……」
「蓮ったら、文化祭の日に泣きじゃくりながら帰って来たと思ったら『南と婚約破棄した』って言い出すんだもん、吃驚しちゃった。でも中学の時みたいに険悪になるのかと思ったけど、家では相変わらず仲良いし、一緒に出掛けたりもするでしょ?結局ど~~なってるの?」
「ん~~、今はきょうだいだよ?」
「きょうだいねぇ~~……」

『俺が義弟でも友達でも、どんな関係でも南のことはずっと愛してるっっ!!♡♡♡ だから、これからもよろしくね~~~!!♡♡♡』

先日遊びに行った時のことを思い出した途端に顔が熱くなる。

「あんた……まあ、ゆっくり答えを出しなさいな♡♡♡」
「……手のかかる娘でごめんなさいねぇ~~」

多分そういうことだろう……それでもまだ答えを出さない理由は……

まだ一人を満喫したいから♡♡♡





「うっっひょおぉぉ~~~い♡♡♡ さっぶうぅぅ~~~いっっ♡♡♡」

新幹線に乗って、意外とサーファーが多い北の海に来た。この鉛色の空……堪んねぇぇ~~っっ♡♡♡ 今日は大浴場付きのビジホに一泊予定なのだ♡♡♡ 一人で一泊旅行をすると聞いた蓮の顔は、何ともまあ複雑な表情を浮かべていたな……。今回の旅行は、一応私の中で理由があるのだ。



遡ること一週間前……

ツーリングをした時に迷い込んだ神社での出来事を思い出した私は、椿にそのことを話した。

「……今から話すことは話半分、いや十分の一くらいで聞いてくれて構わないんだが……因みに南は、自分の過去世知りたいか?知りたくないなら話さない」
「そこまで言ったなら話してよぉ~~!!」
「そうか……じゃあ、話すぞ……?」

深く息を吐いた椿が、ゆっくり話し始めた。



「私が見えるのは、南の前世と前前世だと思う。前前世の南は、幼い頃に実の母親と逸れて迷子になった。そしてそのまま行方不明になったんだ」
「えっ!?迷子で行方不明!?」
「昔はよくある話だったんだろう。神隠しなんて言葉もあるくらいだからな。母親と大きな祭りを見に言って、人混みに揉まれてるうちに親と逸れた。そんで……その時の母親が、蓮なのさ」
「えっ!!?」

まさか蓮がお母さんだったとは……。

「迷子になった南は、その後気の良い百姓の男に保護されて、そのまま養子になった。その後割と幸せに暮らしていたんだけど、一方の母親の方は、子供に会いたい子供を返してくれと毎日泣き明かしてなぁ……悲壮な晩年だったよ……で、時は流れて前世の話になるんだが、南は大陸から連れられて来た巫女だった。街で前世の南を見つけた前世の蓮は、自分の子供だと直感で分かったんだろうな。ものすごい勢いで南にアプローチしたんだけど、その頃には既に南は軍人と婚約しててな…………で、その婚約者の軍人ってのが………私だ……」
「ええぇぇぇーーーーっっ!!?」

まじまじと椿を見つめると、ちょっと不貞腐れたような表情になった。

「その節はどうも~~……」
「いや、覚えてないんだろ?w まあ婚約者っつっても、政略結婚だけどな」
「ほほぉ~~……」
「まぁとにかく、婚約者がいるってことに絶望した前世の蓮は、南を攫って、その……北の海で、無理心中してしまったんだな……」

喉の奥が、キュッと締まった……私、前世で蓮に殺されてたんだ……

「元々は子供を思う親心だった筈なのに、そこで因縁がこんがらがってしまってな……だから私はずっと蓮を警戒していたし、南のことが心配だった……」
「心配かけてごめんね……」
「私の自己満足だ。気にするな」

そう言って笑う椿は、誰よりも男前に見えた。きっと前世の私は、例え政略結婚でも椿に惚れていたのだろう。

「まぁその因縁も、文化祭の一件でだいぶ浄化された。蓮は執着を手放したんだ。今の蓮にあるのは、かつての子供を思う母親のような、深い無条件の愛だよ……」

そう聞いた瞬間、熱いものが込み上げてきた。気付いたら、涙が私の頬を伝っていた……。

「前世の私って……どんな最期だった……?」
「それは言えない……」

気まずそうに俯く椿。そりゃそうか。死ぬ間際の話なんてしたくないよね……。

「椿……生まれ変わったら……お嫁さんにしてね?」
「お前……これ以上因縁作ってどうする!?」
「あははは!だって椿男前なんだもん♡」
「来世より今幸せになれよ」
「もう幸せだも~~ん♡♡♡」
「だろうなw 」

そんなやり取りの後、私は北の海に旅に出ることを決めたのだ。




何となく直感で選んだ旅先とホテル。クリスマス仕様に飾られている駅に着いて、ホテルに荷物を預けた私は、グルメ天国と名高い駅前エリアに飛び込んだ♡♡♡



「うっっめぇ~~!!♡♡♡ 寿司美味えぇぇ~~!!!♡♡♡」

海鮮も米も美味い♡♡♡ メニューも多くて大人数で来たくなるお店だった♡♡♡

「蓮もお寿司好きなんだっけ……」

南が好きだから好きだと本人は言ってたけど、寿司は本当に好きなのだと見ていれば分かる。スマホでお寿司を撮影すると、蓮のチャットに送った。

『美味しそう♡』
『次は一緒に行こうね♡』

送られて来たスタンプが、ハート飛ばしまくりで大喜びしている犬だった。本人も今飛び跳ねて喜んでるんだろうな……と思ったら、無性に蓮に会いたくなった。

『会いたいな』

思わずそう送ってしまって、我に帰り赤面した。明日には帰るのに……

『今すぐ行きます!!』
「えっ……?」

「ちょっと蓮!?冗談だからね!?無理して来なくて良いからね!?」
『俺だって会いたいもんっ!!南は!?俺が行ったら迷惑!?』
「そりゃ嬉しいけど……」
『絶対行くーーーーッッ!!!♡♡♡♡♡』


数時間後、本当に駅の前にいた蓮のフットワークの軽さに、ただただ驚いたのだった……。

「会いたいって言ってくれて、本当に嬉しかった!!♡♡♡」
「来てくれて……ありがとう……」

真っ直ぐに想いを伝えてくれる蓮が可愛くて、私も素直にお礼を言う。

「ヤバイヤバイヤバイ!!漏れそう♡♡♡」
「漏らさんといてーー!!?」

ちょっと……かなり?シモが緩いのは困るけど……



「美味え~~っっ!!♡♡♡」

市場に並ぶ海鮮の串焼き。私は鮎の塩焼きを、蓮は赤魚と焼き鳥を食べてグルメを満喫した。

途中で蓮と合流したから、一日目は殆ど観光せずにホテルに向かう。そう……ダブルルームの部屋に……。

「あわ……あわわわ……」

今にも泡を吹きそうな蓮。元々一人で泊まるつもりだったダブルルーム。追加で部屋を予約しようにも、空いていなかったのだ。やはりインバウンド効果なのか……

「仕方ないから今夜は一緒に寝るか……」
「はあっ!!?俺と……男と一緒に寝るんだよ!?分かってんの!?」
「今さら何言ってんのよ……」
「俺ッッ……俺……俺が我慢出来なかったらどうするのッッ!!?俺は弟だけどッッ!!弟だけど……ずっと南に下心持ってんだぞッッ!?」
「知ってるよ……もうそうなったらそうなったで良いよ別に。本当はこんなところで言うのもどうかと思うけど……私は、蓮が好き……」

……とうとう言ってしまった……さらば私のお一人様ライフ……

「はあッッ!!?はあぁぁーーーーッッ!!?……えっ?えっ??はあぁぁぁーーーッッ!!?」
「飲み込み遅いよ……」
「えっ??えっ??嘘やん……はあ!?はあ!?……ヤバイ……漏れそう……」
「あ゛ーーーッッ!?待って待って待って!!トイレすぐそこだから待てーーーッッ!!!」

間一髪で、トイレに蓮を押し込んだ。アレはマジで漏らしそうな顔だったな……。

「間一髪~~♡♡♡ 話戻るけど、キスしたりセックスしたりする系の好きで良いんだよね?♡♡♡」
「普通に恋愛感情って言ってよ……うん……私、蓮のこと好き♡♡♡」
「あわわわわわ~~~……」
「えっ!?もう漏らさないよね!?」

蓮は無言で、再びトイレに入った……。




「……何してんの……?」

大浴場から戻ったら、蓮が壁にへばり付いて寝ていた。

「俺は隅にいますので……おかまいなく……」
「寝れる?その大勢で……」
「……俺は……母さんの信頼に応えるんや……卒業までは致さんのや……」

どうやら、蓮は蓮なりにけじめをつけようとしているようだ。

「まぁ何でも良いけど、大勢キツイなら普通に寝なさいよ?」
「…………」

いつまでも付き合っていられないと思い、いつも通り普通に寝た。





ーーーーーーー


おはよう新しい俺。ブランニュー俺。生まれ変わった俺。そんな真新しい俺は、今、コンビニに俺のパンツを買いに行ってくれている南を待っている最中だ……。

一晩で5回は夢精したであろう俺のパンツは、最早使い物にならなかった。こんな情けない俺を見捨てず、パンツを買いに行ってくれる南は天使以外の何者でもないだろう!?♡♡♡ 

「好きだって……南が……俺のこと……好きだってぇぇ~~~♡♡♡♡♡」

グフグフと笑いながらベッドの上を転げ回っていると、コンビニから帰って来た南がげんなりした顔で立っていた。

「……さっさと着替えて、朝食行くよ」

ビジホにしては豪華な朝食ビュッフェを堪能した後、俺たちは海に向かった。




「さぶっっ!!!」
「ね~~?寒いね~~♡♡♡」

くっっそ寒い中嬉しそうな南……くっっそ可愛いっっ!!♡♡♡♡ ねぇ奥さん、聞いてくださる!?この子、アタクシの彼女なんですのよ!?♡♡♡♡♡

観光スポットに行くのかと思ったら、ただただ海岸を歩く南。何でわざわざこんな北の海を歩いてるんだ?と訝しんだけど、俺の腕に絡まる南の腕が嬉し過ぎてどうでも良くなる。腕組みとか、めっちゃ恋人やん!!?あ……イカンイカン、こんなところで漏らす訳にはいかん。

「あ、あそこに階段があるよ?ちょっと座ろうか?」
「あ……うん……」

近くにはトイレと階段くらいしか無い場所で座ろうと言い出した南。え?寒くない?俺はともかく、南が風邪とかひいたらヤだな……。

「体調、大丈夫……?」
「うん、大丈夫だよ。ごめんね蓮……寒いよね……」
「ぜんっぜん!!全然寒くない!!俺は大丈夫だよ♡♡♡」

何しろ恋人になって初めてのデートなのだ♡♡♡ 南の願いならどんなことでも叶えてやりたい♡♡♡ 南は階段に座り、ただ波の高い海を眺めていた。

「……寒かっただろうな……二人なら寒くなかったのかな……?」
「え?何?」
「ううん……再来週には、もうクリスマスだね~~♡♡♡ 一年あっという間だね」
「そうだね……去年の南はクリスマスも年末年始も、ずっと外に遊びに出掛けてたよね」
「蓮はあの頃、ショートヘアの後輩と付き合ってたよね~~♡♡♡」
「ゔ……申し訳ありません……」

ちょっとイヤミを言ってしまったら、イヤミで倍返しされてしまった……。

「今年は何しようか……?」
「南……」
「恋人とのクリスマスって、何気に初めてだからさ~~、何か特別なことしたいよね~~?」
 
当たり前みたいに俺を恋人だと言ってくれて、未来の話をしてくれる南。それがあまりにも嬉しくて、涙が溢れた。良かった……溢れたのが、上の蛇口の方で……。

「泣き虫め……♡♡♡」
「だってぇ~~……夢みたい……♡♡♡」
「もぅ~~、先が思いやられるなぁ~~♡♡♡」

泣きじゃくる俺の頬に、ハンカチを当ててくれる南。涙を拭いてくれた南の顔が近付いてきたと思ったら……

チュッ……♡ 

一度離れた唇が今度は……

はむっ…♡ はむはむっ……♡

啄むような口付けを仕掛けてくる南に、俺はされるがままだった…………

「……ん?……蓮……?」
「…………ごめん南……ちょっとコンビニに行って……パンツを買ってきてくれない……?」

そーっと体を離した南は、無言で頷き、コンビニに向かってくれたのだった……。




「ちょっと本格的に体質改善しようね?」

パンツを手渡す南から、割と真剣にそう言われてしまった俺……。まだ若いのに俺の介護をさせてしまって申し訳ない……と思いつつ、くっっそ興奮していたけれど♡♡♡


海を去った俺たちは、展望台に登って景色を一望したり、庭園を散策したりした。元々出不精の俺は、南のおかげで自分だけでは出来ない体験を沢山させて貰っている♡♡♡ そんな愛しい南が俺の恋人……こいびと……こ!い!び!と!彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女ッッ!!!♡♡♡♡♡♡

妄想じゃなくて現実の!!か!の!じょーーーッッ!!!♡♡♡♡♡♡

あ、イカンイカン、あまり興奮するとまた漏らす。落ち着け落ち着け……落ち着いて南の顔を見るんだ……え?可愛いな?えっ!?めちゃくちゃ可愛くない!?何か後光さしてない!?えっっ!?俺の……彼女??♡♡♡♡♡ えっ!?えーーーーッッ!!?♡♡♡♡♡

「南ぃぃーーーーーッッ!!!♡♡♡♡♡」

思わず南の肩に手を置いて、顔を近付けると、思いっ切り手のひらで阻まれた……。

「二人きりの時だけって言ったでしょおぉぉーーーッッ!!?」

どうやらあの約束が復活したようだ♡♡♡ つまり、二人きりの時ならいつでもキスが出来る間柄、リターンなのだ♡♡♡





「婚約破棄を破棄しました♡♡♡♡♡」

俺の言葉に、一瞬鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする母さん。

「あ……あら、そう~~♡♡♡ おめでとう~~♡♡♡」

義理とはいえきょうだいの俺たちを祝福してくれる母さんに深く感謝し、お土産を渡した。

「昨日は慌てて蓮が飛び出して行ったから何事かと思ったけど、収まるところに収まったのねえ~~♡♡♡……で、まだ手は出してないわよねぇ……?」
「もちろんです!!!」

凄む時の母さんの顔が、いつかの南を彷彿とさせてキツイけど、信頼を勝ち取るべく潔白を宣言する。

「なら良いわ~~♡♡♡ これからも、節度あるお付き合いをしてね?♡♡♡」
「ハイッ!!!」
 
何故か以前より念押しが強くなった母さん。単純な危険度で言ったら、春頃の俺の方がよっぽどヤバかったんだけどな……。しかし俺は約束を守れる男!!母さんの信頼に応えるべく、卒業までは清い交際を……

「今夜はどうする?私の部屋で寝る?」

フォォーーーーッッッ!!?♡♡♡♡♡

南の方から!?南の方から一緒に寝たい♡って!?(※言ってない)えっ!?えっ!?……夢?

「……いいの……?」
「いや、一人で寝たいなら一人で寝て欲しいんだけど……」
「一緒に寝ようッッ!!!♡♡♡♡♡♡」

あっっぶねぇぇ~~……自らチャンスを潰すとこだったぜぇぇ~~……今日からまた南と同じベッドで……♡♡♡♡♡ あ゛~~~!!幸せ過ぎるぅぅ~~~~!!!♡♡♡♡♡

パジャマに着替えた超絶可愛い南を両手を広げてお迎えする♡♡♡ 以前のような諦め顔じゃなくて、頬を染めて腕の中に来てくれる南に、俺の下半身は既に爆発しそうだ♡♡♡

「ふふ……久しぶりだからかな……なんか照れるね……♡♡♡」

初めて、俺の背中に南の腕が回る……♡♡♡ 回された腕から、ギュッと力を込められるから……俺は……

「……ごめん南……もう一回お風呂入ってくるね……ついでにドラッグストア行ってくる……」
「……何でドラスト……?」
「……オムツ……買ってこようかなって……」
「それはダメ」

ドラッグストア行きを却下され、取り敢えず風呂に向かったのだった……。



「オムツなんてしたら、安心して余計に漏らしちゃうでしょ?ちゃんとリハビリしなきゃダメだよ?」

真剣な顔でそう言う南に見惚れていると、頬を摘まれた。

「聞いてる?」
「ひゃい……♡♡♡」

両思いになって早々に俺の介護をする羽目になったお労しい南だけど、真剣に向き合ってくれる姿が嬉しくて、舞い上がってしまう♡♡♡

「もしかして、一緒に寝てくれるのって、リハビリも兼ねてる……?」
「ん~~……慣れていこうね?♡♡♡」

ハッキリそうだと言わない南の優しさに応えたい♡♡♡ 卒業までに体質改善して、最高の初体験を迎えるためにも、頑張るぞ~~♡♡♡


南を抱き締めながらベッドに横になって、怒涛の二日間を思い返しながら幸せな眠りについた♡♡♡



翌朝、ガビガビになったパンツに絶望の涙を流していると、目を覚ました南が頭を撫でてくれた♡♡♡ 全てを受け入れて貰えた気になった俺は、南を抱き締め、柔らかい頬におはようのキスをしたのであった♡♡♡
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