世界最強の幼馴染に養われている。

結生

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原神の遺産Ⅱ

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「ぷふ~、いや~食った食った!」


 一通り料理を平らげた紫苑はご満悦の表情だった。
 結局、俺は高級料理に手を付ける勇気がなく、紫苑が俺の分の料理まで食べてしまった。
 紫苑は超甘党と言う偏食だけでなく、大食漢である。
 そう言えば、大食漢は男性に対して使われる言葉だったな。いやでも、紫苑だしいいだろ。


「ご満足頂けたみたいで、良かったわ」


 せっかくの料理を白い粉で台無しにしてしまったのにもかかわらず、アンリエッタは気にした素振りを見せなかった。


「食事も済んだところで、お二人には話しておかなければならないことがあります」


 アンリエッタのその雰囲気から談笑ではなく、真面目な話であることが伺えた。


「それって、もしかして……」


 紫苑も何かを察したのか、じっとアンリエッタの方を見る。


「メアリーたんの下着の話?」


 俺は無言で紫苑の頭を叩いた。
 んなこったろうと思ったよ。紫苑が真面目な話をするはずがない。


「何するのよ! 伊織は気にならないの? 美少女の下着だよ!?」
「あのな、空気を読め。今はそんな話……」
「ちなみに私は昨日、助けた時に見たよ」
「何色だ」
「アダルティーな赤。しかも紐パン」
「紫苑さん!?」


 下着の色をバラされたメアリーは顔を真っ赤にして、スカートの裾を押さえる。
 どうやら、本当の様だ。


「……伊織殿?」


 メアリーの下着の色を想像していると、背後からビリビリと殺気が放たれているのに気が付いた。
 そして、首筋に短刀が突き付けられていた。
 振り返らなくても分かる。妹を辱められて怒った姉の姿が。


「あのホント、すみません!」


 俺としたことが、紫苑に乗っかって自重できなかった。


「それで、あれですよね。話があるんですよね」


 命の危機を脱出する為に、アンリエッタに話を振るが、彼女は件のメアリーの方を見て笑っていた。


「ちゃんと使ってくれていたのね。誕生日プレゼントとして上げた時の反応が悪かったので、心配だったけど。嬉しいわ」


 どうやら、赤い下着はアンリエッタの趣味だったようだ。


「王女様、グッジョブ」


 紫苑とアンリエッタは目配せして、ガシッと手を繋ぐ。
 今ここにかけがえのない友情が生まれたのだった。


「こほん」


 しかし、この場でそれを望まないものが一人いた。


「アンリエッタ様、お話があったのでは?」


 アリアに睨まれたアンリエッタは手を離し、オホホホと笑って誤魔化した。


「そうです、お二人に話したかったことが。例の事件の犯人についてです」


 仕切り直し、アンリエッタは話を戻す。
 例の事件とは昨日の偽装誘拐事件のことだろう。


「それならニュースで見ましたよ。犯人たちは黙秘を続けていると」


 まぁ、俺たちはクロエさんから聞いてなんとなく誰が犯人か分かっているが。


「ええ、世間ではそうなっているはずです」


 世間では。と言うことは、表に出ていない情報があるということだ。


「犯人グループの名前はヴェスパー。過激派宗教団体の一つです」
「ヴェスパー?」


 聞きなれない言葉に紫苑は首を傾げた。
 なんで聞き覚えないんだよ。さっきクロエさんから教えてもらったばっかだろ。
 まぁ変に騒ぎ立ててくれないのなら好都合だが。


「ヴィーナス・ヴァレットを教祖とした宗教団体。だよな」
「やはり知っていましたか。流石ですね」


 感心するアンリエッタ。対して、俺の隣ではまたしても紫苑が首を傾げていた。


「しんそ、って何?」


 またその質問か。さっき答えてし、無視してもええやろ。


「にしても、教祖であるヴィーナス・ヴァレットがいないのに、今さら彼らは何をしようと言うんですか?」
「彼らの目的についてはこちらもまだ把握は出来ていない。だが、どうやらヴェスパーと言う組織はヴィーナス本人ではなく、その眷属によって作られたものらしい」
「ヴィーナス・ヴァレットの眷属……。有名なところだと、バトラー兄弟が思い当たるな」


 兄のダグラス・バトラーと弟のグレオン・バトラー。
 彼らは悪逆の限りを尽くし、多くの人を手にかけた。
 とくに有名なのが緋色のハロウィン。一夜にして一国を滅ぼしたこの事件によって、バトラー兄弟の名は世界に知れ渡った。


「そのバトラー兄弟もヴェスパーの一員であることが分かったわ。いえ、一員ではなく、トップと言うのが正しいわね」
「それは、ヴェスパーはツートップで成り立っている組織だと言うことか?」
「いいえ、バトラー兄弟を含めた三人の吸血鬼によって運営されているそうよ」
「バトラー兄弟と肩を並べるほどの吸血鬼……。力にものを言わせるバトラー兄弟だけでは組織運営は難しいだろう。その点を踏まえるともう一人は、フラン・リッター」


 その名を聞いたアンリエッタは一瞬固まった。


「……驚いたわ。フランを知っているなんて」


 フラン・リッター。
 彼は表立って何か犯罪を起こした経歴はない。その為、一般的にその名は知られていない。


「記録には残ってないけど、陰で暗躍しているという噂は流れてる。まぁ、ほとんどが都市伝説みたいなものだが」
「都市伝説じゃないわ。彼が関わったとされる事件は100を超えているわ」

 うん、知ってる。
 警察庁のアーカイブにハッキングして何度か見てるから。
 とはもちろん、ここでは言えないので、噂程度に知っていることにしておく。


「なるほど、世間に公表できないわけだ」


 表沙汰に出来ない大物が仕切っている組織。
 これがネットニュースなんかで流れたら、不安を煽るだけだ。それならまだ、何にも分かりませんと伝えた方がいくらかマシだろう。


「ヴェスパーについてはエルフヘイムとセントラルが共同して今後も追っていく予定です。今回の事件について知っているお二人には一応報告した方が良いと思いお話ししました」


 要するにこれ以上今回の件について部外者である俺は踏み込むなと言うことだろう。
 面倒そうなので言われなくても今後、一切関わるつもりはないが。


「~~♪ ~~~♪」


 途中から話についていけなくなった紫苑は鼻歌を歌いながら(入れすぎて解けきれてない角砂糖まみれの)ミントヴルムの紅茶をすすっていた。


「それで、お話というのはもう終わりか? もしそうなら、俺たちはこの辺でかえらせてもらうが?」


 あまり長居しても相手に悪いと思い、俺は席を立つ。
 しかし、アンリエッタはそれを止めた。


「待ってください。本題は別にあるのです」
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