世界最強の幼馴染に養われている。

結生

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血染めのアリア

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 場所は再び最上階へと戻る。


「この事件の裏を見破る為に必要だったものは2つ。1つはヴェスパーを自分の思い通りに動かせる奴」
「それに当てはまるのが私だと?」
「ああ、そうだ。ヴェスパーは言わばヴィーナス・ヴァレットのファンクラブ見たいなもんだ。アンタの言うことなら何でも聞くだろうよ」
「それで2つ目は?」
「俺と紫苑の行動を誘導出来た人物だ」
「あなたたちの行動を? それに何の意味があるのかしら?」
「俺たちを事件に巻き込みたかったんだろ? エルフ王女誘拐事件の時、DDD序列1位の紫苑が近くにいて助けられなかったと知れたら、DDDの信用は間違いなく地に落ちる。そして、黒柳議員暗殺事件。あれは出来すぎだ。俺たちが行った旅館で、たまたま議員が暗殺され、たまたまその犯人候補が紫苑の後輩で、たまたま犯人が残した手紙にヴェスパーであることの証拠を残していた。こいつは偶然か?」
「そう言うこともあるんじゃないかしら?」
「そうだな。この旅行に俺たちを行かせたのがアンタじゃなかったらな」
「あなたたちにチケットを渡した瞬間から罠にかけていたと?」
「そうだよ。それにエルフ王女誘拐事件の時、紫苑にアンリエッタが来るって情報を与えたのはアンタだ。この2つの事件に俺たちが関わったきっかけは全部アンタなんだよ」
「それも偶然じゃないかしら?」
「DDD本部襲撃事件。あの事件での唯一の生き残りはアンタだけだ。それも偶然か?」
「何が言いたいのかしら?」
「本当は犯人がアンタで、被害者のふりをするために自分の腕を切り落としたんじゃないかってな」
「あら、やだ。3つの事件を通して一番怪しいのは私ってことになるわね」
「とぼけやがって。大方、DDDから情報を盗んで、その罪をヴェスパーに被せる為に一連の事件を起こしたんだろ? ついでに邪魔なDDDを潰せれば行幸ってか?」
「ええ、そうね。彼らがいる限り、私はこの香水で匂いを消して、吸血鬼であることを隠して生きていかなくなるわ。それって、面倒でしょう?」
「それで、ここまでしてアンタが欲しがっていたDDDの情報ってのは何なんだ?」
「ふ~ん、そこにはまだたどり着いていないようね」
「あいにくな。ま、ここでアンタを捕えちまえば、いいだけの話だがな!」
「息まいているところ悪いけれど、こんな悠長にしてていいのかしら? 既にヴェスパーはこの塔の地下に侵入しているわよ?」
「ああ、その話か。問題ねぇ。さんざん先手とられまくったんだ。今度はこっちが先手を打たせてもらった」


------------------------------------------------------------------


 第二支柱地下制御室。


「ここですかね?」


 起動式の制御装置の前まで来たのは吸血鬼のフラン・リッター。


「では、壊させていただきますね」


 フランはそっと制御装置の上に手を置こうとした。
 だが、次の瞬間……。


「……………おや?」


 フランとその部下たちは一瞬にして制御室の前まで移動していた。
 何が起きたか分からなかった部下たちは戸惑いを隠せずおろおろしていた。


「これは……転移?」
「その通りです」


 フランの疑問を答える声が上から聞こえた。
 その声の主を探すようにフランは顔を上げる。


「おや、おやおやおやおや? どうしてあなたがここにいるのですか? アンリエッタ王女」


 フランの前に現れたのは先ほどまで塔の最上階にいたはずのアンリエッタだった。


「つい数秒前まで最上階のダンスホールにいたという情報があったのですが、なぜここに? 一瞬で来れるような距離ではないのですが」
「分からないのかしら? 今、あなた方がしたことと同じことをしただけです」
「なるほど。やはり転移魔法でしたか」
「そう、これが私の特異魔法」


 アンリエッタは両手を合わせ、そして、大きく広げる。
 すると空中に魔方陣のようなものが無数に浮かび上がった。


「術式魔法。一度魔方陣をセットすると、魔法が発動するまでその場にとどまり続け、触れた瞬間、自動で発動するエルフヘイムの秘術です。下手に動かない方がいいですよ?」
「は! 何が術式魔法だ! そんなもんはったりに決まっている。お前はここに来たばかりじゃないか! そんなもの仕込んでいる暇はなかったはずだ!」
「た、確かに」
「そうだ! そうだ!」


 フランの部下が言った言葉に他の部下たちも賛同し、アンリエッタの忠告を無視して、正面から襲い掛かる。


「愚かな人たち」


 その様子を見てアンリエッタはそっと、目を閉じる。


「行くぞ!!!」


 フランの部下が一歩踏み出した、その瞬間……。


「………………な!」


 ドン!!!!
 と巨大な爆発音が響き渡った。


「地雷が仕込まれているというのはハッタリではないということか」


 爆発に巻き込まれ吹き飛んだ仲間を見ながら、フランは至って平静に状況を読む。


「だが、彼の言っていたことも間違ってはいないはず。俺たちの侵入に気が付き、急いでここに来たとして、ほんの数秒。それだけの間にこの規模の術式魔法を仕込むことは不可能なはずです」
「あなた、もしかして自分より頭のいい人間は存在しないと思っている人ですか?」
「どういう意味だ?」
「あなた方が、ここに来ることもそのタイミングも全て知っていたということです」
「なんだと?」


 そこで初めてフランの表情が揺らいだ。


「最初からあなた方が来るのが分かっていれば、事前に罠を仕掛けておくなど容易なことなのです」
「ほう、面白い。俺より頭のいい奴がいるのですか。是非ともお会いしてみたいものです」
「残念ながら、それは無理な相談です。あなたはここで私に負けるのですから」



------------------------------------------------------------------



「おいおい、どうなってんだこりゃ?」


 第一支柱地下制御室に入ったはずのグレオン一行。
 けれど、今彼らが立っている場所は明らかに制御室と呼べるような場所ではなかった。


「なんもねぇ。真っ白だ」


 グレオンたちがいるのは巨大な箱の中のような場所。天井は高く、周囲を壁で覆われており、出入り口が見当たらない。
 また、グレオンの言う通り、この場所には何もなく、白塗りの壁で覆われた空間だけがそこにはあった。


「お前ら、この状況を説明しろ」
「い、いや、無理ですよ! 自分たちも何が起きたのか分からないんですから!」
「っち」


 何も知らないと答えた部下に対し、グレオンは不満げに舌打ちをする。


「簡単な話っス。君たちはここに転移して来たんス」
「っ! 誰だ!」


 知らない女の声が聞こえ、グレオンは警戒心を上げる。


「ここっスよ。ここ。さっきから目の前にいるじゃないスか」


 グレオンがゆっくりと視線を下に向けると、そこにいたのは獣人の少女だった。


「おい、小娘。ここはどこだ? アウローラの地下じゃないな?」
「はいっス。転移魔法を使って君たちに来てもらったのは、DDD特別修練室の一室っス」
「DDD特別修練室?」
「そうっス。DDDには強力な能力を持った人たちがいますからね。そんな人たちの修行に耐えられる壁で出来た世界最硬の部屋っス。核兵器を使ったって傷一つつかないレベルって話なんで、あの壁壊してここから逃げようなんて考えても無駄っスからね」
「逃げる? その必要はねぇな。貴様を殺してここを出る」
「貴様じゃないっスよ。私はレオナ・ハイルディン。DDDの局員っス」
「この小娘がDDD? はっ! DDDもついに人手不足か?」
「失礼っスね~。誤解がないように言っておくっスけど、人手不足なんじゃなくて、君たちの相手は私一人で充分って判断されたんス」
「…………」


 その言葉を聞き、グレオンは無言でレオナを殴り飛ばした。


「舐めすぎだ、ガキが」


 なすすべなく殴り飛ばされたレオナは壁に背中を打ち付け、その場に倒れてしまった。


「ここの壁が頑丈ってのは本当みたいだな。壁をぶち抜くつもりでぶん殴ったが、傷一つついてねぇ。こりゃ、壁ぶっ壊して出るってのは出来なさそうだ」
「どうしますか? グレオンさん」
「必ず出入り口があるはずだ。手当たり次第、探せ」


 部下たちが散開し、グレオンも出口を探そうとした。
 その時……。


「ぐあ!」


 部下の一人がグレオン目掛けて飛んできた。


「邪魔だ」


 だが、グレオンは眉一つ動かさず、飛んできた部下をそのまま投げ飛ばした。


「…………へぇ」


 部下が飛んできた方向を見ると、そこには先ほど倒したはずの少女の姿があった。


「殺したつもりだったが、生きていたか。久しぶりに遊び甲斐のあるやつに会ったな」
「私もっス。久しぶりにスイッチが入っちゃうかも」
「……………」
「……………」


 二人はしばらく睨み合い、そして、


「ふん!」
「はぁ!」


 拳が交わる。


------------------------------------------------------------------



 第三支柱地下制御室。


「……………」
「……………」


 そこでは既に会敵したアリアとダグラスが睨み合っていた。
「大人しく帰ってもらうことは可能でしょうか?」
「愚問だな」
 ダグラスはアリアの言葉を蹴り、そのまま部下たちに『殺れ』と視線を送った。
 武装したダグラスの部下たちは上司の言うことに従い、集団でアリアを襲う。
「それがお答えですね。では、こちらも出迎えの準備をさせていただきます」
 アリアは敵の数に怯えることなく、ゆっくりとスカートの裾から2本の短剣を取り出す。
「では、行かせていただきます」
 メイド服のフリルを揺らしながらアリアは真っすぐに敵へ向かっていく。
「敵はたった一人!」
「しかも女だぁ!」
「やっちまえ!」
 まるで三下のようなセリフ。
「さようなら」
 アリアがその一言を言う、ほんの一瞬。
「っ!」
 それだけで、アリアに向かってきた敵の8割が肉片と化した。
「あらあら、また汚れてしまいました」
 攻撃に使ったナイフも、髪もメイド服も、全て敵の返り血により、真っ赤に染まっていた。
「まさか、貴様……」
 その姿を見て、ダグラスの頭の中にはある人物が思い浮かんだ。
「“血染めのアリア”。目にも止まらぬスピードで敵を圧倒し、瞬殺していく。その類まれなる戦闘センスはあらゆる異世界の中でもトップクラス。一人で滅ばした国は数知れず。と色々言われているが、誰もが必ず最後にはこう綴っている」


 エルフヘイム最強の戦士。
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