世界最強の幼馴染に養われている。

結生

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アンリエッタVS.フラン

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「ちょっと、これは……想定外ですね……」


 アンリエッタは冷や汗をかいていた。


「ここまで悪だったとは知りませんでした」


 地下制御室にはアンリエッタが仕掛けた術式魔法のトラップがいくつも仕掛けられていた。
 だが、フランは非人道的な方法でその全てを――破った。


「部下とは駒。駒がいくら壊れようとも問題ない」


 そう、フランは全ての地雷を部下に踏ませたのだ。


「全員が全員、そんな馬鹿げた命令に聞くとは思えないのだけれど?」
「確かにそうだ。臆して逃げる奴はいただろう。だから、洗脳をかけ、俺の命令に従順に従う様にした。命令に背く部下など、俺の完璧な作戦の邪魔でしかありませんからね」
「ほんと、悪魔・・みたいな人ですね。反吐が出る」
「あらあらあらあら? 王女様らしからぬ言動ですね」
「黙りなさい! あなたは今ここで私が倒します!」


 アンリエッタは手をかざし、術式を展開する。


「“アントヘイトの太刀風”」


 アンリエッタが展開した術式から風で出来た矢が無数に放たれる。


「戦闘は専門外ですが、少しお相手をしてあげましょう」


 スルスルスル~~~っとフランは風の矢を華麗に躱していく。


「さて、脳筋ではない、優雅な吸血鬼の戦い方と言うものをお教えしましょう」


 そう言った瞬間、フランの姿が変容した。
 大きな黒い翼に鋭い牙、体には黒いマントを羽織り、その後ろでは無数のコウモリが舞っていた。


「ナイト・ディストーション」


 フランが手を振ると、それに合わせコウモリたちがアンリエッタを囲み、襲い始める。


「っ!」


 アンリエッタは必至で処理しようとするが、コウモリの数が多すぎてさばき切れていない。
 さらに、フランのコウモリはいくら倒しても無限に湧いて出てきており底がない。


「術式魔法は普通の魔法より強力です。しかし、その分発動までに時間がかかる。罠としては有用ですが、種が尽きた状態での戦闘では圧倒的に不利。このまま魔法をまともに使わせずじわじわと削っていけば容易に勝てます」


 フランの言葉通り、アンリエッタは思うように魔法が使えず、苦戦を強いられていた。


「いいえ、問題ありません。後、5秒」
「諦めが悪いのは美しくありませんよ」


 アンリエッタは必至で抵抗するが、物量に負け、コウモリたちにどんどん咬まれていく。
 咬みつかれた場所からどんどん血が流れだし、このままでは失血死で死んでしまうだろう。


「エマージェンシーコード……起動……」
「なんです?」


 しかし、コウモリに襲われながらアンリエッタは何やら呟いていた。


「ファーストスペル……解放……」
「これは……魔法?」


 アンリエッタの体が急に光を帯びだした。


「“リジェクション”」


 そして、次の瞬間、その光が弾け、アンリエッタに群がっていたコウモリたちが霧散した。


「どういうことです? 術式魔法が使えるほどの隙は与えていないはずですが?」
「いいえ、ありました」
「攻撃を受け、抵抗し続けながら魔法を構築するのは不可能です」
「でしょうね。一から魔法を構築するのであれば」
「引っかかる言い方をしますね。はっきり言ったらどうです?」
「言ったところであなたは信じないでしょう。ですから、証明してあげましょう」


 アンリエッタは指を3つ立てる。


「3手。後3手であなたを倒します」
「ふふふ、面白いことを言いますね。ですが、あなたのその傷ではまともに動けないでしょう」
「心配いりません。もうここから動く必要はないですから」
「では、やってみなさい」


 フランはトンっと後ろに飛びながら、指を噛む。


「“ブラッドソウル”」


 指から流れる血を操り、弾丸のようにして放つ。


「セカンドスペル、解放」


 アンリエッタの声に反応し、目の前に術式が浮き上がる。


「“バースト”」


 その術式から炎が噴き出し、飛んで来た血液を焼き尽くす。そして、そのまま直線状にいたフランに襲い掛かる。


「甘いですよ」


 フランは横に飛び、避けようとする。
 しかし、


「サードスペル、解放。“ランパート”」
「っぐ!」


 突如、石壁が出現し、フランの逃げ道を防ぐ。


「仕方ありませんね」


 左右、後ろ、上。全ての逃げ道が防がれてしまったフランは咄嗟に血で盾を作り、炎の攻撃を受ける。


「ラストスペル、解放」
「これは……!」


 最後の魔法。


「“ディスペル”」


 それは魔法を無効化する魔法。
 フランが魔法で作り出した血の盾が霧散する。
 そして、盾を失ったフランを業火が焼く。さらに、石壁によって熱の逃げ場はなく、しばらくの間、フランは焼かれ続けた。


「流石にこれだけやられれば、吸血鬼と言えども立てはしないでしょう?」


 炎が消えた後、術式魔法で自分の傷を治しながら、アンリエッタは倒れたままのフランに近づく。


「ええ、指一本動かせそうにありません」


 全身に火傷を負ったフランは口を動かすだけで精一杯のようだった。


「あなたの魔法。あれはどういうカラクリですか?」
「術式魔法は普通の魔法より威力はあります。ですが、それだけでは秘術と呼ぶにはお粗末すぎます。この魔法が秘術と呼ばれる所以は、未来にも術式を設置することが出来ることにあります」
「未来……? 確かに時間に干渉する魔法は秘術と呼べるでしょう。ですが、あなたが使った魔法は明らかに今発動したとしか思えないほどタイミングがピッタリでした。事前に私の動きを予知することなど……」
「出来ていたとしたら?」
「なんですって……?」
「昨日の段階で、あなたがここに来ることも、あなたが部下を使い全ての術式魔法を潰すことも、戦闘時のあなたがいつどんな魔法を使い、どう動くか分かっていたとしたら?」
「未来予知の魔法でも異能力でもあるのですか? 聞いたこともありませんが」
「いいえ、本人はただの人間、しかも無能力者だと言っていました」
「それは……信用出来なさそうですね……」


 そこでフランの意識は途絶えた。
 その答えなのか、アンリエッタはどこか遠くを眺めながら小さく呟く。


「ええ、私もそう思います」
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