上 下
16 / 119
序章 私刑人誕生編

第16話 生理用品を買わさられる

しおりを挟む
 修行というか勉強だが、先ずは結界魔法の基礎の説明から始まった。
 火属性の上級を教えられる者は多数いるが、結界を使えるいわゆる結界師はこの国に3人しかおらず、クルシュ以外の2人は現役の冒険者らしい。
 それもあり、実際問題として教える事が可能な者はこのクルシュしかいないとの事だ。
 この機会を逃すと次はないと思われるので、結界を覚える事が最優先となった。

 時間とお金に余裕があるなら、予定を変えてでも結界をきっちり覚えろと言われた。
 まだ2人パーティーだからどうにかなるが、これが以前のように数人のパーティーとなるとこうやって学ぶ機会を作るのは厳しく、もしも他の町に行く事を考えているのなら尚更だ。

 尤もな事だ。
 学べる機会はそう多くない。
 面倒くさがり屋の俺だが、今学ばずに後に後悔する方が面倒くさいなと判断し、俺にしては珍しく精力的に学ぼうと思う。

 しかしだ・・・修行の方針と結界について基本的な事を説明された後、肩を揉まされたり、指定された物を買いに走らされていた・・・
 流石に木札に必要な物を書いてもらった。

 実は紙は高く先程の魔道具のように紙を使わざるを得ない時以外は、木札等を紙の代わりにしている。
 紙と言っても和紙のように1枚ずつ手漉きで作るので手間と時間が掛かり、A4位の大きさで1枚でも金貨1枚する。

 マリニアが泊まっていた宿の数日分だ。
 今の日本の貨幣価値に直すとA4の紙で1万円程だ。
 買えなくもないが、気兼ねなく使えず、一般人が使うには躊躇う値段だ。

 買い物の中に俺が使う紙が入っていたから仕方がないが、どう見ても関係のないついでの買い物があった。

 おやつと女性のおりものをガードする綿で出来たシートだ。
 売っている店の名前と場所を聞いていたが、女性向けの化粧品店だった。
 しかも店に行き初めてそれがいわゆる生理用品だと分かり、俺はいづらくなった。
 勿論他の買い物客から白い目で見られたが、店員に事情を説明して木札に書いたリストを見せてなんとかなった。

 あのロリババア!やってくれたな!しめちゃる!って出来んな・・・
 と唸るも、訓練に必要な物だった。そうだと説明してくれたら良いのに、恥ずかしかったぞ!

 この結界魔法はロリババアの言うには、勇者以外で魔王を倒す事が出来る数少ない技との事で、希少なのだとか。

 但しだ。
 結界魔法を使うには膨大とはいわないが、通常の魔法よりも魔力を必要とし、このロリババアでも魔王を殺す事の出来る魔法は1度が限界だ。
 しかも魔王と対峙する前に魔法を全く使わずに魔力を温存したとしてだ。
 それに魔力が枯渇し確実に気絶すると言っていたので、現実問題として無理だと言っていた。

 だが、俺の適正を調べる時に魔力量を調べたのだが、測定上限を超えていると分かった。
 少なくともロリババアの10倍はあるとの事だ。


 結界魔法はエグい。
 結界自体は薄い膜なのだが、自身や仲間を守る結界以外に攻撃に使える。

 結界を張るとその膜の部分がズバッと切れるのだ。

 例えば岩の途中に結界を張り、一部見えているようにする。その部分を引っ張ると結界の形で岩が切り出される。

 これを生き物にすると、体の中に切り込みが入るのだ。結界が消えてもその切込みは残る。
 頭や心臓を防御力無視で内部から切り裂くのだ。
 防ぐ事が出来るのは結界師だけだ。
 結界師にはそもそも効かないので、仮に結界師同士が戦う場合、結界魔法以外を使うそうだ。
 はっきり言うとチートだ。

 初級とそれ以上の区別はなく、大きさや発動する数、術者からどれだけ結界を張る距離が離れているかに比例して魔力を消費する。
 覚えるのは容易いが制御が厳しいと言う。

 防御無視での必殺技だ。
 殆どの結界師がここぞと言う時や命の危険に晒された時に使い、攻撃には滅多に使わない。
 距離が離れると極端に使う魔力が増えるからで、使いどころを考える必要があると教えられた。
 自分の限界を知る事も必要であり、修行はそれらの事や細かい制御が出来るようにする事がメインだと言われた。

 因みに買わされたおやつは合間合間に食べ、脳へ栄養を回す為に必要なタイプだとの事で、普段食べないから買いに行かされたようだ。

 そうやって修行がスタートしたのであった。
しおりを挟む

処理中です...