漆黒の私刑人〜S級パーティーを追放されたので今度は面倒事から逃げてのほほんとしたいのに・・・〜

KeyBow

文字の大きさ
17 / 119
序章 私刑人誕生編

第17話 初日の成果

しおりを挟む
 初日はまずまずの出来だったとだけ言っておこう。いやボチボチだったか?
 なんと一応結界魔法自体は覚えたんだ!マリニアに言ったら見直してくれるかな?
 ゲロビーの真実を知られ、俺の威厳は地に落ちているから、ここらで挽回したい!

【ハリアップル】

 意味不明だがそれが呪文名で、敵性のある属性魔法は万能者のお陰で呪文も呪文名も唱える必要がない。
 適正が無いと400字程の呪文が必要なのと、折角その呪文を覚えてもそもそも結界師にはなれない。

 戦闘中に400字以上の呪文を唱えるのは非現実的であり、覚えようという物好きはいないのだそうだ。

 だが、中々思った大きさの結界が出来ず悪戦苦闘していた。
 正直なところかなり舐めていたから、今日は大変だった。

 自分の体には効かないので、自ら張った結界で怪我をする事は無いが、周りの者を傷付ける可能性があるのだ。

 だから先ずは自分の目の前、つまり手の先を先端とした結界を使う所からスタートだった。

 慣れない事をした為か俺はクタクタで、やっとの思いで帰路についたとまでは行かないが、フラフラだったのは間違いない。

 宿に着くと既にマリニアがいて、俺の帰りをまだかまだかと首を長くして待っていた。
 そして俺に半ば抱着くように迫ってきた。

「あのねランスタッド!ボク、ボクが魔法を使えるようになったんだよ!ねえ見て見て!」

 何故か空の桶を持ってきた。
 いや、何故持っている?しかも濡れている?

「我が名はマリニア!我の望みに応えその力を示さん事を!ウォーター」

 目の前に直径15cm程の水球が出現し、手振りで桶の方に射出するようにするとスーッと飛んで行き、桶に当たると水が溜まった。

 初級魔法なのに呪文を唱えている事から、水は得意属性ではないな。
 最初は得意属性を覚え、他に手を広げるはずだが?何故だ?

 俺は素直にマリニアの頭を撫でた。
 子供扱いしないで!と言い返すかと思ったら目をキラキラさせてニッコリしていた。

「初日から凄いな。こりゃあ俺も負けてはいられないなぁ!腹が減ったから飯を食いながら続きを聞こうか」

 マリニアは腕をぐいっと引っ張りプニッと腕を組む感じにしてきた。
 そうやって早く早く!と俺を急かす感じだ。

 マリニアは余程嬉しかったのだろうか?珍しくはしゃいでいて、こいつこんな笑顔ができるんだなぁと少しほっこりした。

 俺は疲れから早く寝たかったが、マリニアが喜々として話しているので聞き手に徹し、うん、凄いな、そうか、流石だな、良かったな等々相槌を打っていた。
 この魔法のワードがあれば聞き流してもちゃんと聞いているように思われるから便利だよな!

 得意属性について話していたが、俺の予測通り風だった。
 探索者と相性がよく、殆どの探索者が風を使えるのだ。

 最初に覚えたのがウインドカッターだったから部屋で使えなかったのだろう。
 又、どうしても土が苦手属性になるが、それでも驚いた事にファイヤーボールも覚えたとの事で3属性行けるのだ。

 そもそも魔法を使えるいわゆる魔力持ちは少ない。
 これは言い回しで、魔力自体は皆持っている。
 どんなギフトやスキルも発動するのに魔力を使うのだ。

 で、それでも魔力持ちという言葉があるのには理由がある。
 魔法として魔力を外に放出する事が可能な者を指すのだ。
 魔力持ちは10%で、2属性持ちは1%、つまり希少なのだ。
 そして3属性持はその中の0.1%つまり1万人に1人の希少中の希少な存在で、講師にかなり驚かれていたそうだ。

 俺が偶々拾ったのはダイヤの原石だったと表現するような希少な存在だ。

 万能者のようなのは別としてだ。
 万能者の場合特殊で、他に賢者が基本の全属性行ける。
 賢者はレベルが上がると勝手に上級も覚えるが、万能者は中級止まりだ。
 万能者は色々なギフトの劣化版の寄せ集めと揶揄されていて、何もかも中途半端だ。
 通常賢者は近接戦闘がからきしで、万能者は近接戦闘もかなり行ける。
 なので、実際は賢者よりも生存率が高い。
 万能者はオールマイティーに戦えるから、魔物に大して得手不得手がない。

 マリニアが天狗になりそうだったので食べ終わった時に諭す事にした。

「今の段階でどんな魔法も試し撃ちを部屋の中ですべきじゃない。俺も結界を覚えたが制御が全く出来ていない。そんな覚えたてが安易に魔法を使うと暴発して部屋を壊し兼ねないから、師匠の指示に従うんだぞ!」

「あっ、はい。気を付けます!」

 その言葉通り、マリニアは夜に何が出来るようになったかについて話してくるが、実際に見せる事をするのを控えていた。
 だが、俺に見て貰いたくてウズウズしているのは分かる。
 なので修行が終わったら魔物の討伐依頼でも受け、その時に習得した魔法を試すと約束する事で今は我慢して貰った。

 うんうん。聞き分けが良くて助かる。
 修行は順調に進み、明日が最終日となったのだが、マリニアは初級以外に中級も覚えたとの事で、俺は本当に驚いたのだが、何を覚えたのか今は教えてくれなかった。
 いざ本番で見せるからと、その日を楽しみにする事になったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

処理中です...