へなちょこ勇者の珍道記〜異世界召喚されたけど極体魔法が使えるのに無能と誤判定で死地へ追放されたんですが!!

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第1章

シャロン

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 馬車に乗り、進み始めるとすぐに2人の盗賊が現れた。太一は収納から取り出した1本の槍を投げる。あっさりと胸を貫通し絶命した。もう1人が矢を放ってきたがシャロンが剣で弾いてくれた。

 太一はもう1本槍を取り出し放り投げる。これも盗賊にスッと刺さる。
 周りに敵意ある者がもういないという事を確認し、太一はそいつらから槍を抜き収納に入れる。そして取り出したライフカードも収納に入れていった。シャロンはそんな太一を見てぷるぷると震えていた。何も持っていない筈なのにいつの間にか槍を握り、投げていたからである。

 今2人は御者席に座っている。小型の馬車だが商人の移動用のそれなりにしっかりした造りの馬車だ。

 太一はかなりの血を流しており、ふらふらであったが、気が張っているのかなんとか意識を保っていた。

 そこからは何とか街道に出れた。既に商人や旅人等、人と物の往来もあり、安全な所に来たと判断し道の脇に馬車を止め少女が太一に話してきた。

「あの、腕をお出しください」

 そして矢の刺さった腕を出す。  

「腕をこちらへ」

 そう、矢が刺さった方の腕を何とかしようとしてくれていたのだ 。そして彼女は矢を引き抜くために、矢の根本を掴み、剣でスパッと矢の先を切断したのだが、太一は痛みでぐうっと唸った。

「ごめんなさい。痛いですがどうか我慢してください」

 彼女が何をしようとしてるのか分かっていたので太一は頷いた。

「では3、2、1、0で抜きますからね」

 と言うので太一は分かったというが、彼女は3と言った途端に抜いたのだ。

「ふふふ。0まで待つと体が硬くなっちゃうんですよ」

 彼女は慣れていたのか知識があった。そう完全に身構えて体が硬くなる前に抜いてくれたのだ。その辺にあったハンカチ等でとりあえず腕の傷と手の傷を塞いでいく。

 手にハンカチを巻かれている時に改めて彼女を見るが、どきりとする超絶美人である。いや美少女だ。先程下着姿を見ているが、大きくもなく小さくもなく程よいサイズである。そう太一基準の胸の大きさだ。それと確か可愛くプリプリとしたお尻だったよなあと思ったりする。

 太一の息はだんだん荒くなって来た。彼女の美少女っぷりにうひひひと興奮したからではなく、痛みからだ。

 寝不足、空腹、あまりもの痛さにより息が荒くなってきたのだ。

「あの、冒険者様?私をお助け頂いた冒険者様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、僕は太一っていうんだ。すまないこの2日間何も食べていない所為か体がしんどいんだ。少し横にならせてもらってもいいかな?あと君の名前は?」

「はい。私はシャロンと申します」

 太一は御者席から馬車の中に入ろうとしたが、その途中に倒れこんでしまった。

 空腹と痛みで痙攣しだしたのだ。暫くすると痙攣が治まったが、このままではまずいと思ったシャロンが太一の介抱と治療をせざるを得なくなった。

 太一はヘルムをかぶっている。正確に言うとヘルムではないのだが額当てのような物だ。普段顔は隠れ気味になっていたが、今は髪が纏められており顔があらわになっている。そう基本的に太一は二枚目なのだ。顔も悪い方ではなく、ただ髪型がいけなかったのだ。その為このシャロンという少女は日本での太一の見た目と違い、この人かっこいいかもと思ったりしていた。それよりも見も知らぬ自分を命掛けで助けてくれたこの人は何者なのだろうか?さっきは何もない所から槍を出し、いつのまにか消えていった。カードもそうだった。

 こんな凄いスキルを持っている者は見た事がない。そして見た事もない魔法を使える彼は何者なのだろうか?と気になって仕方がなかった。

 また、太一が倒した筈の盗賊の倒し方もそうだ。首が綺麗に斬り落とされていた。その切り口から、かなりの剣の使い手だと思っていたのである。

 凄腕の剣の腕であり、魔法を使う。自分が目指している魔法剣士がここにいるのだ。シャロンはウキウキとしていた。それはともかく止めた馬車の中でシャロンが僅かにだが使える治療魔法で太一の手の傷と腕の傷を治して行く。しかし止血と痛みを取るるので精一杯だった。

 太一は意識を時折取り戻していた。シャロンが馬車の中を見渡すと食べるられる物が僅かにだがあった。だがしかし、太一は自分では食べられなかった。それ程に太一は衰弱しており、辛そうに呻いていた。口に食べ物を運ぶと食べようとはするが、意識が混濁している所為か中々うまく食べられない。

 仕方がないのでシャロンは食べ物を自分の口の中で咀嚼し、それをマウストゥーマウスで太一の口の中に入れた。そして太一の口に口移しで水を含ませ、強引に喉に押し込んでいった。

 シャロンはキスをした事もないので恥ずかしさもあったが、必死だった。恩人が飢えで死にかけているのだ!羞恥心より助けねばとの思いの方が強かった。

 少しだが食べ物を喉に押し込んでからは太一の呼吸も落ち着いたような感じがする。
 ほっとしたシャロンは王都を目指して馬車を再び進め始めた。

 元々シャロンは師匠のおつかいで手紙を届けに他の町に行っていた。師匠が自分で行ければ良いのだが、今の健康状態から行けなかったのだ。その為に弟子であるシャロンに手紙の運搬をお願いしていた。正確には手紙の運搬ではなく、口伝えによる伝言である。

 書面に残したくなかった用件だ。師匠からの用事を済ませ、帰りはお金を払い商人の長距離の旅の馬車に相乗りしての移動であった。しかし馬車のトラブルから急遽あの場所で野営せざるを得なくなり、野営中に盗賊に襲撃されたのであった。
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