へなちょこ勇者の珍道記〜異世界召喚されたけど極体魔法が使えるのに無能と誤判定で死地へ追放されたんですが!!

KeyBow

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第2章

絡まれた

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 ラブラブな2人は甘い時間を堪能するかの如くゆっくりと歩いていた。ふと見ると冒険者向けの道具屋があり、寄る事にした。
 閉店間際だったので、太一が欲しいと思っていた物を急いで買う事にした。

 鍋とフライパン、ヘラ、お玉だ。それと皿とカップ、フォークにスプーンを少々だ。特に金属の物を買う。また、タオルやバスタオルも少し選んだ。
 これでかなり野営や休憩が快適になり、昨夜とはかなり違うだろうと太一は満足していた。
 店主は太一達が出るとクローズの札を入り口に掛けていた。太一は閉店間際で申し訳ないと誤ったが、店主は手を振り、いえいえと恐縮していた。

 やはり誰にも見えない所に急ぎ行き、買物を収納にしまった。
 宿に向かう為、再び通りに出ようとしたが、前方をよく見ていなかったのも有り、太一は黒髪の若い女性と出会い頭にぶつかり、お互い尻もちをついてしまった。

「ごめんなさい。よく前を見ていませんでした。大丈夫ですか?」

 その女性は後ろで髪を束ねていて、16~18歳位の気の強そうな美人だ。肩に弓を掛けていて、腰には短剣が有った。相手は若い女性だが、太一は最大限に警戒を始めた。日本人としか思えない顔立ちに黒目黒髪で、弓を持っていたからだ。こいつが弓使いか?と。
 しかも勇者はお互いの意志とは無関係に引き寄せられてしまうのか、意図せずに遭遇してしまったのだ。しかも普通こんな所で遭遇しないだろうという場所と時間にだ。

「っち、女連れだからっていい気になってるんじゃないわよ。どこを見てるの?貴方目はちゃんとついているの?勇者に無礼を働いておいてタダで済むと思うんじゃないわよ!落とし前を付けなさい!」

 そう言い放つと太一に向けていきなり短剣を抜いたのだ。身長170cm位と高身長だが、太一の身長の高さに少し驚いている感じがした。しかも自分から勇者と名乗った。先のチンピラといい、弓使いは素行に難がある者が召喚されるのか?そんなふうに太一はついつい考えていた。

「私の彼に何をなさるのですか?出会い頭でぶつかっただけじゃないですか!確かに前をよく見ていなかったのですから謝りますが、ただそれだけなのにこんな人の往来が多い所で剣を抜くなんて何を考えているのですか!止めて下さい!」

「ああん?ちょっと綺麗な顔をしてるからって調子に乗っているんじゃないよ。って美人だな。こちとら追跡に時間が掛かっていて、いらいらしていて機嫌が悪いんだよ」

「私が前を見ていなかった為で申し訳有りませんでした。服を汚してしまいましたので、クリーニング代としてどうかこれで勘弁して頂けませんでしょうか?」

 そっとノエルを経由して金貨を一枚握らせた。直接太一が金貨を渡すと、相手の手に触れなくてはならず、異性が触れるのはトラブルの元になるからだ。

「っち、仕方がないわね。これで手打ちにしてあげるわ。今度から歩く時は前をちゃんと見て歩くのよ、いいわね?」

「畏まりました。弓使いの勇者様。申し訳ありませんでした。さあヤヨイ、行くよ」

 ノエルはヤヨイって誰?と不思議がっていたが、太一が手を引くから自分の事だと理解して勇者にお辞儀をして歩き出した。

 ノエルは何よあいつ、何様だっていうのよ。太一が本気を出せばあんな生板女なんか一瞬でぎゃふんと言わせるのに。太一も太一よ。あんな小娘相手にみっともないと強く思い不満だったが、太一の様子から黙って従うのが得策と判断し、太一に委ねた。

「つけて来ている奴がいる。そのまま別の宿に入り、裏口から出るぞ。後で文句を聞くから今は黙って従ってくれ」

 太一の雰囲気がいつもと違うのが判り、ノエルはうんと一言だけ発し、後は黙ってしたがう。

 手近な宿に入り、受付で空き部屋がないか確認したが、満室と言われた。別の宿を当ると一礼をし宿を出る。幸い出入り口がもうひとつ有り、そちらから出たのだ。別と言っても非常口代わりで反対側の裏口だったのだが。

 急いでそこを離れ、宿の入り口が見えるところにいき、入り口を見ると、先の弓使いの連れと言うか護衛か御目付役と思われる兵士か騎士2人が入り口から出てくる者を見張っていた。

 暫く待っても太一達が出て来ないから、太一達がこの宿に泊まっていると勘違いをしてくれたようで、手をクイクイとして引き上げていった。太一の狙い通りになり、安堵のため息を付いた。

 今の格好だと彼女達に見つかるので、目立たないように外套を出して羽織り、フードをしっかりかぶって顔を隠した。

 そして尾行がいない事を確認し宿に戻り始めたが、幸い肌寒い為にフードをしている者がちらほら居るので、太一の身長が高い事を除き特に目立たないのであった。ただ、太一も迂闊で、自分の身長が日本ですら高身長で物すごく目立つと言うのを失念していたりしているのはご愛嬌というべきなのだが。
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