イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

KeyBow

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第12話 帰宅

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 ふと視線を足元に向けると、スルメイラのカードが落ちているのが目に入った。

「ああ、そうか・・・ダンジョンの外に出るとファミリアはカードに戻るんだったな・・・」

 俺はスルメイラのカードを拾い上げると、しばらくカードを見つめた。さっきまで俺を支えてくれていた彼女が、今はただのカードになっているのが少し不思議に感じる。

「ありがとな。スルメイラ、助かったよ・・・」

 ポケットにカードをしまうと、辺りを見回した。誰もいないことを確認しながら再び歩き出す。足はまだ痛むが、どうにか動ける程度には治っている。夕暮れに紛れ、俺は静かに進んでいった。
 血塗れで周りがぎょっとすることになるが、ダンジョンで見つけた黒い外套を羽織っているので厨二病くらいにしか思われないだろう。

 それと基本的にダンジョンの外に出るとスキルは解除され、方も使えない。
 ただし、一部のパッシブスキルが本来の1%から10%程度で体の中にのみ使用する。
 なので俺の場合、小さな怪我なら時間とともに治る。普通のケガの回復速度が倍になる程度だが、この時はすっかり忘れていた。

 この先に何が待っているのかは分からないが、今日は少しだけ強くなれた気がした。

 やがて我が家に・・・といっても安アパートの一角だが・・・たどり着いた。

 傷は塞がっているものの、左腕がなくなっているのを何とか隠した。服の袖を長めにして、見えないように工夫している。

 この数日、母の調子が良く、家事をこなしていたが、ダンジョンに行き、翌日(今日のこと)に帰るかもと言ってあったのもあり「あら思ったより遅かったのね」という当たり障りのないこと以外、特に何も言われなかった。俺は着替えと風呂を済ませると、飯を食ったらすぐに寝ることにした。

 ベッドに横になり、ほっと息をつく。足はダンジョンを出る頃には繋がっていたがまだ痛い。多分まだヒビが入っている程度で、朝には歩くことが可能になっていると期待している。

 ステータスを確認することにしたが、これまではスキルしか見ていなかった。ハンター登録時に見たステータスがショックで、それから一度も見ていなかったんだ。
 だが、今日はレベルアップしたから全体をチェックしてみることにした。レベルアップすると魔力が上がるからだ。
 そしてステータスを見ると、驚いたことにレベルが1から10に上がっていた。数値からはまるでB級ハンターほどの実力を持っているかのように見えた。

 名前: 市河銀治  
 レベル: 10  
 力: 30 D  
 敏捷性: 25 D  
 魔力: 110 A
 体力: 250 S
 スキル: 自己回復(小)、幸運の兆し(ラッキーオーメン)、、積算ダメージ反射、肉体再生、ハーミット、ファミリア召喚
称号:サモナー

「これがダンジョンでの経験値の成果か・・・」

 俺は呟いた。自分の成長を実感し、少し嬉しくなった。
 レベルが上がっても魔力以外上がらないと聞いている。
 なので他はハンターになってから体を鍛えていたから、それが反映したのだと思っていた。

 そして、サモナーになりファミリアを得たことを思い出す。スルメイラのカードを手に取り、その美しいデザインを見つめた。彼女が俺の力になってくれる存在だと思うと、心が温かくなった。

「スルメイラ・・・」

 カードに向かって呼びかけると、カードから彼女の声が聞こえてきたような気がした。

「明日からまた一緒に頑張ろうな。」

 しかし、腕の再生について考えを巡らせたが、ダンジョンを出てからはごくわずかにしか再生が進まなかった。ダンジョンにあと半日入れば、きっと生え終わっていたのだろうが、今のままだと数日はかかることがなんとなく分かった。

 明日は包帯を巻いて、軽い裂傷程度の怪我をしたことにしよう。そうすれば母も心配せずに済むだろう。
 心の中でもっと頑張るぞと決意を固め、俺は目を閉じた。明日からの新たな冒険に向けて、しっかりと休む必要がある。

「明日も頑張るぞ・・・」

 自分に言い聞かせ、これからのことを考えているうちに深い眠りに落ちていった。

 翌朝、目を覚ますと左腕をじっと見つめた。昨日のダンジョンでの回復速度が驚くほど速かったのに対し、今は僅かしか再生が進んでいない。腕の先端が微かに生え始めているが、全体を見ると、完全になるにはまだ程遠い。痛みは少しあるが、我慢できる範囲だった。回復速度は、ダンジョンでの回復速度とダンジョンの外での回復速度がこんなに違うのかと冷静に見ていた。

「やっぱりダンジョンの中にいた方が回復が早いな・・・」俺は自分に言い聞かせるように呟いた。

「今日はダンジョンに入ろう。昨日の感じだと、数時間いれば再生するだろう。」

 心の中で決意を固め、制服の上着を慎重に着込んだ。左腕の再生が進んでいないことを隠すために、袖を長めにして注意深く隠した。今日もまた冒険が待っている。

 俺は痛む左腕に制服の上着をかけ、慎重に学校へ向かった。
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