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第55話 得手不得手
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友理奈はどうやら体を動かす系については、人に教えるのが苦手らしい。
どんなふうに苦手かというと、典型的な感覚派で、戦い方を教えるのがとても難しい様子だ。正確には教えられる側が困惑する感じで、弘美が挫折していた。
勉強や知識については丁寧で分かりやすいが、戦闘になるとそうではなかった・・・
「敵が攻撃してきたら、さっとかわしてバーンと当てるの!」
こんな感じに感覚で教えようとしてしまう。しかし、なぜかその教え方でも浅香には伝わったようで、次の魔物との戦いでは言われたことを試している。
「当たった!」
何故わかる?と不思議だが、魔石を嬉しそうに手に入れていた。
そんな2人のやり取りを見た弘美が俺の耳元で囁く。
「私には難しいですね。でも、先輩の説明ならわかりそうです」
そう言ってきたので、俺は理屈を交えつつコツを教えることにした。
「ギリギリで避けるのは怖いと思うけど、少ない動きでかわして、そのままカウンター気味に反撃に繋げるんだ。狙いは頭か、慣れないうちは胴体でもいい。それで倒れない時は蹴りで倒してから押さえ込んでもいいよ。ヤバそうなら一旦距離を置くのも忘れないで」
弘美は真剣に頷きながら俺に言われたことを頭にいれると魔物と向き合い、言われたことを反芻しながら実践してサクッと魔物を倒していく。
そうやって魔石を手に入れると、その場で少し得意げに握りしめていた。
今日は放課後からの探索なのもあり時間も短めだ。なので、みんなで2階層への階段に向かい、最後に1階層のフロアボスに挑むことにした。
ボスがいる階段に到着すると、迷わず浅香と弘美がメタボラットと対峙していた。メタボラットは普通の猫や小型犬ほどの大きさで、1階層フロアボスの中では出現頻度が高い魔物だ。勿論他の種類が出ることもある。
俺が伝えたアドバイス通り、浅香がヘイトを稼ぎ、盾を構えて攻撃を受け止めた。それは小型ながらも1万円ほどの盾で、1階層程度ならボスでも十分な防御力がある。
浅香がタイミングを見計らってバットを縦に振り下ろすと、メタボラットが弾かれて動きが止まった。その隙を見て弘美が盾で押さえ込み、浅香が再度バットを振り抜いて、魔物を撃破した。霧散する魔物を前に、2人は「やりました!」と俺の手を握って喜びを爆発させている。どうやら1人が防御し、もう1人が攻撃するという作戦がうまくはまったようだ。
そこへ友理奈が軽く咳払いをして、2人は気を取り直すと落ち着いた様子でドロップアイテムを探し始めた。
浅香と弘美がドロップアイテムを探していると、床に小さな魔石と見慣れない武器が転がっていた。それは、浅香にぴったりの【ネタ武器】と思われるような一品だった。1階層のボスドロップは基本的に1/100の確率で出現し、さらにその中でもレアアイテムは10倍ほど出にくいものだが、今回の武器は運よく手に入ったようだ。
とはいえ、この武器のレア度は最底辺に位置する。一般のノーマルアイテムよりは多少マシだが、ハンターたちから見れば【お遊びの品】扱いされることが多い。売るとすれば10万円程度で取引できるが、浅香にとっては使う価値があるかもしれない。
浅香がその武器を手に取り、目を輝かせて「これ…使ってみてもいいですか?」と聞いてきた。俺は頷きながら、少し微笑んだ。
それ使うんかい!と口に出すのをこらえるのがやっとだった。
どんなふうに苦手かというと、典型的な感覚派で、戦い方を教えるのがとても難しい様子だ。正確には教えられる側が困惑する感じで、弘美が挫折していた。
勉強や知識については丁寧で分かりやすいが、戦闘になるとそうではなかった・・・
「敵が攻撃してきたら、さっとかわしてバーンと当てるの!」
こんな感じに感覚で教えようとしてしまう。しかし、なぜかその教え方でも浅香には伝わったようで、次の魔物との戦いでは言われたことを試している。
「当たった!」
何故わかる?と不思議だが、魔石を嬉しそうに手に入れていた。
そんな2人のやり取りを見た弘美が俺の耳元で囁く。
「私には難しいですね。でも、先輩の説明ならわかりそうです」
そう言ってきたので、俺は理屈を交えつつコツを教えることにした。
「ギリギリで避けるのは怖いと思うけど、少ない動きでかわして、そのままカウンター気味に反撃に繋げるんだ。狙いは頭か、慣れないうちは胴体でもいい。それで倒れない時は蹴りで倒してから押さえ込んでもいいよ。ヤバそうなら一旦距離を置くのも忘れないで」
弘美は真剣に頷きながら俺に言われたことを頭にいれると魔物と向き合い、言われたことを反芻しながら実践してサクッと魔物を倒していく。
そうやって魔石を手に入れると、その場で少し得意げに握りしめていた。
今日は放課後からの探索なのもあり時間も短めだ。なので、みんなで2階層への階段に向かい、最後に1階層のフロアボスに挑むことにした。
ボスがいる階段に到着すると、迷わず浅香と弘美がメタボラットと対峙していた。メタボラットは普通の猫や小型犬ほどの大きさで、1階層フロアボスの中では出現頻度が高い魔物だ。勿論他の種類が出ることもある。
俺が伝えたアドバイス通り、浅香がヘイトを稼ぎ、盾を構えて攻撃を受け止めた。それは小型ながらも1万円ほどの盾で、1階層程度ならボスでも十分な防御力がある。
浅香がタイミングを見計らってバットを縦に振り下ろすと、メタボラットが弾かれて動きが止まった。その隙を見て弘美が盾で押さえ込み、浅香が再度バットを振り抜いて、魔物を撃破した。霧散する魔物を前に、2人は「やりました!」と俺の手を握って喜びを爆発させている。どうやら1人が防御し、もう1人が攻撃するという作戦がうまくはまったようだ。
そこへ友理奈が軽く咳払いをして、2人は気を取り直すと落ち着いた様子でドロップアイテムを探し始めた。
浅香と弘美がドロップアイテムを探していると、床に小さな魔石と見慣れない武器が転がっていた。それは、浅香にぴったりの【ネタ武器】と思われるような一品だった。1階層のボスドロップは基本的に1/100の確率で出現し、さらにその中でもレアアイテムは10倍ほど出にくいものだが、今回の武器は運よく手に入ったようだ。
とはいえ、この武器のレア度は最底辺に位置する。一般のノーマルアイテムよりは多少マシだが、ハンターたちから見れば【お遊びの品】扱いされることが多い。売るとすれば10万円程度で取引できるが、浅香にとっては使う価値があるかもしれない。
浅香がその武器を手に取り、目を輝かせて「これ…使ってみてもいいですか?」と聞いてきた。俺は頷きながら、少し微笑んだ。
それ使うんかい!と口に出すのをこらえるのがやっとだった。
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