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序章(探索者スタート編)

第9話 3階層

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 僕は己の勉強不足を反省しなきゃなと思った。

 初心者と言うか、探索者受験用のラビリンスは2階層のみだと思っていたんだ。
 しかもランク2のゴブリンウォーリアーが出たけど、10枚のカードが1枚に凝縮されたレイラとはいえ、コスト1のカードなのにさくさく敵を倒している事から、通常のラビリンスと違い魔物が弱体化しているだなんて知らなかったんだ。

 それに初めてラビリンスに入った僕が俺TUEEE!と勘違いする位、無双できる程弱体化しているんだよな。
 知らなかった・・・

 璃音さんも何も言っていなかったのは、試験に挑む前に知っていて当たり前だからなんだと思う。

 2階層に降りる時に僕のゴブリンが戻ってきて合流したけど、レイラが指示を出せるから楽をさせて貰っているんだ。

 レイラは流石父の遺したカードなだけあり、ユニークスキル?があるっぽく、コスト上位のウォーリアーも支配下に置いて命令と通訳をしてくれていて、時折ありがとうと頭を撫でると眩しい笑顔を向けてくる。

 ゴブリン達は僕とレイラが倒したウォーリアーの魔石やカード、時折剣等のアイテムを拾って来る。
 僕とレイラは倒すだけでドロップは拾っていないんだ。

 階段を降りる時に追いついたゴブリン達からドロップを受け取りカバンにしまう。
 剣が揃ったのでレイラとウォーリアーに持たせているけど、コンバットナイフはサブウェポンとして1本残すが、璃音さんから渡された方はリュックに入れた。
 実は動きにくかったりする。

 通路を少し進むと開けた所に出たが、モンスター部屋?のようでウォーリアーが10体ほど、ゴブリンが20体ほど、そして鎧を着たゴブリンらしき奴がいた。

「主殿、ナイトです!」

 そこからは乱戦になった。
 状況がよく分からないようなドロドロの戦いだ。
 ウォーリアーの相手をしている時にゴブリンの振るった棍棒に背中を打たれた!あまり痛くはなかったけど。

「いてーだろ!」

 怒りに任せクルッと1回転すりと剣を振って倒す。

 僕のウォーリアーの方にウォーリアーが2体行ってしまった。
 まあ弱いのだから問題ないと思ったらウォーリアーは唸りながら押されていた。

 余裕のない必死な形相だ。
 あれ?僕のゴブリン達が死んでいる・・・
 おかしい。
 僕のウォーリアーは調子が悪いのかな?弱体化しているから2体なら余裕かと思ったんだけど、2体はきつかったのか・・・
 
「レイラ、僕はウォーリアーの方に行くから後は頼むよ!」

「畏まりました」

 僕のウォーリアーはウォーリアーの1体と鍔迫り合いになっていたが、もう1体が振るった剣が頭に・・・

 ガ・キーン!

 ぎりぎり僕の剣で受けとめた。

「はあ、はあ、はあ、はあ、間に合ったな」

 ふとレイラの方を見るとナイトと戦っていたが、圧倒していた。
 やっぱり弱体化しているようだ。
 確かランク3の魔物のはずだけど、ランク1のレイラがあっという間に一方的に攻めるようになっていたもんな。

 レイラの獲物が棍棒から剣に変わったのだけれども、実際どれ程の腕前かというと、レイラの華麗な動きに僕は我を忘れ見惚れていた!そう言えば分かるだろうか。

 それと何故この試験用のラビリンスが弱体化していると認識したのかは、僕がランク2と3のゴブリンウォーリアーやナイトと戦えていたからなんだ。

 段々レイラの剣速が早くなってきた。

 ガ・キーン!ガ・キーン!剣と剣がぶつかる音がこだまする。

 僕の仕事は僕のウォーリアーと共にゴブリンとウォーリアーを倒し、お供の魔物によりレイラの邪魔をさせない事なんだ。

「ゴブゴブブブヒヒーン!」

 意味が分からないなぁ・・・

「大分慣れてきました。下級職の分際で我が主に楯突くとは万死に値します!お逝きなさい!」

 レイラの剣がナイトが振るった剣に対してカウンター気味に入り、その喉を突き刺した。

 力なくダランとなったかと思うとナイトは霧散した。

 レイラは汗1つかく事なく涼し気にしており、敵がもういない事を確認すると流麗な動作で剣を鞘に収めた。

 僕はやはり見惚れていたが、レイラはそんな僕に不思議そうにしていた。

「御主人様?いががされました?」

「レイラの戦い振りに見惚れちゃった」

「ありがとうございます。私お役に立てたでしょうか?」

「レイラのお陰で危なげ無く来れたよ。つまり十分過ぎる程僕の役に立っているよ」

 レイラは少し照れたようにしていたが、ハッとなりドロップを拾うと僕の所に持って来た。

 魔石の代りにナイトのカードがドロップしていたのと、ローブもドロップしていた。

 レイラから受け取るとつい頭を撫でていた。
 文句を言われるかなと思ったけど、照れていて満足しているようだ。

「レイラ、ありがとうね」

「大した事ではありませんが、お役に立てたなら私も嬉しいです。」
 思わず頭を撫でる。
 
 取り敢えずこんな緊張感のない事をしているのは、ここが最奥、つまり終点だったと分かったからだ。
 このラビリンスの主がナイトだった。

 ナイトが霧散した時にドロップが落ちた以外の変化があったから、ナイトがこのラビリンスの主だったのだと理解できた。

 部屋の中央に直径5mほどの魔法陣が発生しており、その中央に黒い穴というか直径2mほどの黒い丸、通称ホールがある。
 そこに飛び込むとラビリンス入り口に転位するようになっているはずだ。

 この黒い丸付きの魔法陣が発生したというのは、ラビリンスの主を倒したと言う事だ!そう教えられていた。

 僕が息を整えていると、レイラと唯一生き残ったウォーリアーがドロップのカードや魔石を拾い集めており、僕に渡してきた。

 それと今更だけどウォーリアーは傷だらけで、片腕はだらりとなっていた。

「レイラ、ウォーリアーはなんて言ったっけ?」

「ゼッチィーニ」

「ゼッチィーニ、よく頑張ったね。ゆっくり休むんだよ」

 僕はウォーリアーたるゼッチィーニの皺くちゃな頭を撫でた。
 苦しそうにしてはいるが仕草から照れているように見える。
 気の所為かな?クネクネしている?

「ゼッチィーニ戻って!」

 ゼッチィーニが頷いたような気がするけど、一瞬光ったかと思うと次の瞬間僕の手にゼッチィーニのカードがあった。

 不思議な感覚だな。
 不思議な事に課題のメッセージは見当たらなかった。
ただ、メッセージの代わりにボスを倒して魔法陣で入り口に戻る事が試験の課題なんだなと漸く気が付いた。

ドロップがもう落ちていない事を確認すると僕とレイラは迷う事なく通称ホールに飛び込んだ。
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