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第7話 話恐怖からの共犯者
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二体目のオーガが、一体目と同じように声もなく崩れ落ちる。
静寂が戻った岸辺で、ディノッゾは血と脂の付着した槍を握りしめたまま、呆然と立ち尽くしていた。聞こえるのは自分とメイドの少女の息遣い、川から聞こえる水流のみ。
隣に座り込んだメイドの少女も、同様に茫然自失の表情でうつむいている。オーガの返り血が二人をさらに生々しく汚していた。
「流石にSランクパーティーが持ってた槍だ。すごいな」
彼は手に持った槍を眺め、かろうじてそれだけの言葉を絞り出した。自分の力がどうこうよりも、まずは道具の性能を褒めることで、このあり得ない現実を何とか受け入れようとしていた。
だが、そんな自己欺瞞も、鼻をつく生臭い血の匂いと、そして、それとは別のアンモニア臭に打ち砕かれる。
服はびしょ濡れだ。川に落ちたからだけではない。自分も、そして隣の少女も、恐怖のあまり、あの、屈辱的な粗相をしてしまっていた。
(ある意味非常にまずいな・・・)
ディノッゾは、かろうじて働いていた思考を現実に戻す。
やるべきことは二つ。一つは魔石を抜くことだ。オーガほどの大型魔物は、放置すれば一時間もしないうちにアンデッド化する危険がある。この世界の者なら子供でも知っている事実だ。
もう一つは、ここから離れること。血の匂いに誘われて、すぐに別の魔物が寄ってくるだろう。
そして、魔物のこと以外のもう一つ「清算」があった。
ディノッゾはまだぼんやりとした様子の少女に視線を向けると、意を決してオーガの死体に向かっていった。一度もやったことのない魔物の解体。だが、手に持つ槍はまさに業物で、硬い皮膚も分厚い筋肉も、驚くほど容易に切り裂いていく。
うつ伏せに倒れていたオーガの巨体を、なぜか片手で軽々と仰向けにできたことに内心で驚きながらも、今は気にしないことにした。
魔物の死体は軽くなるのかな?
巨大な胸を切り裂き、腕を突っ込むと魔石があった。
意を決して握ると一気に魔石を抜き取り、手の中の淡く光るそれを支給品の小さな鞄のポケットに押し込む。
「ふう・・・」
一仕事終え、槍を背中に背負うと、ディノッゾは少女に近づいた。傷つけないよう、そっとその体を横抱きにする。お姫様抱っこ、などという洒落たものではない。ただの荷物のように。しかし、その扱いは驚くほど優しかった。
「よし、川に行くぞ」
彼は少女を抱いたまま、再び川へと入っていく。服を着たまま、二人して首まで水に浸かった。冷たい水が、全身の汚れと、あの匂いを洗い流してくれる。ディノッゾは、特に下半身を念入りに洗った。
少女の体を支えながら、彼は気まずそうに、しかし真剣な目で語りかけた。
「いいかい、嬢ちゃん、いやリリアだったよ?さっき俺たちは、オーガの返り血を浴びちまった。だから今は血を洗い流すために川に入っているんだ。決して臭いの・・・あれのせいじゃない。いいな?」
少女は、まだ少し虚ろな目をしながらも、その言葉の意味を正確に理解したのか、こくりと小さく首を縦に振った。
その瞬間、二人はただの生存者と被保護者から、一つの秘密を共有する【共犯者】になった。
しばらく川の中に留まり、十分体が清められたことを確認すると、ディノッゾは少女を抱いたまま、激流を避けるように少しだけ下流へと歩を進め、再び岸に上がった。
ここから、彼らの本当の旅が始まるのだ。
静寂が戻った岸辺で、ディノッゾは血と脂の付着した槍を握りしめたまま、呆然と立ち尽くしていた。聞こえるのは自分とメイドの少女の息遣い、川から聞こえる水流のみ。
隣に座り込んだメイドの少女も、同様に茫然自失の表情でうつむいている。オーガの返り血が二人をさらに生々しく汚していた。
「流石にSランクパーティーが持ってた槍だ。すごいな」
彼は手に持った槍を眺め、かろうじてそれだけの言葉を絞り出した。自分の力がどうこうよりも、まずは道具の性能を褒めることで、このあり得ない現実を何とか受け入れようとしていた。
だが、そんな自己欺瞞も、鼻をつく生臭い血の匂いと、そして、それとは別のアンモニア臭に打ち砕かれる。
服はびしょ濡れだ。川に落ちたからだけではない。自分も、そして隣の少女も、恐怖のあまり、あの、屈辱的な粗相をしてしまっていた。
(ある意味非常にまずいな・・・)
ディノッゾは、かろうじて働いていた思考を現実に戻す。
やるべきことは二つ。一つは魔石を抜くことだ。オーガほどの大型魔物は、放置すれば一時間もしないうちにアンデッド化する危険がある。この世界の者なら子供でも知っている事実だ。
もう一つは、ここから離れること。血の匂いに誘われて、すぐに別の魔物が寄ってくるだろう。
そして、魔物のこと以外のもう一つ「清算」があった。
ディノッゾはまだぼんやりとした様子の少女に視線を向けると、意を決してオーガの死体に向かっていった。一度もやったことのない魔物の解体。だが、手に持つ槍はまさに業物で、硬い皮膚も分厚い筋肉も、驚くほど容易に切り裂いていく。
うつ伏せに倒れていたオーガの巨体を、なぜか片手で軽々と仰向けにできたことに内心で驚きながらも、今は気にしないことにした。
魔物の死体は軽くなるのかな?
巨大な胸を切り裂き、腕を突っ込むと魔石があった。
意を決して握ると一気に魔石を抜き取り、手の中の淡く光るそれを支給品の小さな鞄のポケットに押し込む。
「ふう・・・」
一仕事終え、槍を背中に背負うと、ディノッゾは少女に近づいた。傷つけないよう、そっとその体を横抱きにする。お姫様抱っこ、などという洒落たものではない。ただの荷物のように。しかし、その扱いは驚くほど優しかった。
「よし、川に行くぞ」
彼は少女を抱いたまま、再び川へと入っていく。服を着たまま、二人して首まで水に浸かった。冷たい水が、全身の汚れと、あの匂いを洗い流してくれる。ディノッゾは、特に下半身を念入りに洗った。
少女の体を支えながら、彼は気まずそうに、しかし真剣な目で語りかけた。
「いいかい、嬢ちゃん、いやリリアだったよ?さっき俺たちは、オーガの返り血を浴びちまった。だから今は血を洗い流すために川に入っているんだ。決して臭いの・・・あれのせいじゃない。いいな?」
少女は、まだ少し虚ろな目をしながらも、その言葉の意味を正確に理解したのか、こくりと小さく首を縦に振った。
その瞬間、二人はただの生存者と被保護者から、一つの秘密を共有する【共犯者】になった。
しばらく川の中に留まり、十分体が清められたことを確認すると、ディノッゾは少女を抱いたまま、激流を避けるように少しだけ下流へと歩を進め、再び岸に上がった。
ここから、彼らの本当の旅が始まるのだ。
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