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第16話 ネタスキル暴発
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「アイテムボックスが・・・あります!」
リリアの絶叫に、ディノッゾは我に返った。
彼女が指さす先、オランジの実の山の前に、確かに半透明の四角い枠が浮かんでいる。
(嘘だろ・・・これも、あの時に生えたってのか?・・・)
ディノッゾが驚きに固まっていると、リリアがおずおずとその枠に手を伸ばした。指先が触れると、まるで水面のように、しかし濡れることなく、その向こう側へと通り抜ける。
「すごい!ほ、本物、です」
その言葉に、ディノッゾは興奮して駆け寄った。
「ははっ、すげえな! リリア、お前さん、とんでもねえスキル生やしたじゃねえか! これで全部持って帰れるぞ!」
彼は真っ先に傍らの槍を掴んだ。
「よし、まずはこの槍からだな!」
彼が、槍をアイテムボックスに入れようとした、その時だった。
「待ってください、ディノッゾさん!」
リリアが、真剣な顔で彼を止めた。
「もし、このスキルが不完全で、入れたものが消えちゃったらどうするんですか? 大事な槍を最初に入れるのは危険です!」
「あっ・・・」
ディノッゾは、はたと動きを止めた。確かに彼女の言う通りだ。あまりの喜びに我を忘れて短絡的な行動をするところだった。
「そ、そうだよな。悪い、リリアの方がよっぽど冷静だな」
ディノッゾは照れ臭そうに頭を掻く。リリアは、自分のスキルを確かめるように、まずはその辺の石ころを一つ拾い、アイテムボックスに放り込んだ。・・・消えた。そして、ボックスに意識を向けると、石ころを取り出すことができた。
次に、オランジの実を一つ。これも、問題ない。
「よし、本物だ!」
二人は、改めて顔を見合わせて笑った。
そして、山になっていたオランジの実を、次から次へとアイテムボックスに収納していく。あれほどあった果実の山が、嘘のように目の前から消えていった。あれほどあった果実の山が、嘘のように目の前から消えていった。
「ついでに、こいつも入れちまうか」
ディノッゾは、これまでカバンを重くしていたオークなどの魔石を取り出した。
「他の荷物は全部流されちまったからな。人里に着いたら、こいつを換金しねえと無一文だ」
彼は当座の生活費となるはずのそれを、大事そうにアイテムボックスへと放り込んだ
全ての荷物を収納し終えた時、信じられないほどの身軽さが二人を包んだ。
「ははっ、すげえな! これなら、どこへだって行けるぜ!」
ディノッゾは、久しぶりに心の底からの楽観と希望を感じていた。
まさかその機嫌の良さが、今夜、新たな惨事を引き起こすことになるとも知らずに。
その日の夜、二人は満腹だった。
腹一杯のオランジの実と、試行錯誤と言うか、完璧に血抜きするやり方が分かった。
更にオランジ皮を器として使ったら、他所残った果肉から出る汁が魔物の肉に染み、焼くと匂いも味が普通に美味しく変貌した。
明日は香草とか巻いてみようか!など、街へと確実に近づいていることから、生きるためから、快適を求めた明るい話題になっていった。
そして、リリアのアイテムボックスという最高の安心材料。機嫌の良いディノッゾは、焚き火の前でこれまでにないほど饒舌になっていた。
「なあ、リリア。ネタスキルって知ってるか?」
「ネタ、スキル・・・ですか?」
「ああ。ギフトの儀式を受けた奴の何割かは、戦闘にも生産にも役に立たねえ、ただ面白いだけのスキルが生えることがあるんだ」
リリアが、不思議そうに小首をかしげる。その仕草に、ディノッゾはさらに調子に乗った。
「昔、俺が運んだ客でいたんだよ。『ハメハメハ!』って叫ぶと、股間の前から親指の先くらいの、小さな白い玉が出てくるスキル持ちがな。当たっても、デコピンほどの威力しかねえ、くだらねえスキルだったが、これがまた面白くてな。俺も真似してみたんだ。よく見とけよ?」
ディノッゾはすっくと立ち上がると、肩幅に足を広げ、両手を腰に当て、ぐっと腰を少し前に突き出した。そして、大真面目な顔で、高らかに叫んだ。
「ハメハメハッ!」
リリアが、きゃっきゃと声を上げて笑う。
その、はずだった。
ディノッゾの股間、正確にはその前方の空間が、ぽう、と淡い光を放ち始めたのだ。
「・・・え?」
ディノッゾの顔から、笑みが消える。光はどんどん強くなり、彼の体の前に、直径5メートルはあろうかという巨大で複雑な魔法陣が展開し始めた。親指の先の白い玉など、どこにもない。
「ちょ、おい、嘘だろ!? なんでだよ!?」
ディノッゾは、完全にオロオロしていた。スキルが暴走している。止め方も、消し方も分からない。
魔法陣の中心の光が、もはや直視できないほどに輝きを増していく。
「ディノッゾさん、危ない!」
リリアは恐怖を振り払うように叫ぶと、ディノッゾの後ろに回り込み、その体をがっしりと掴んだ。そして、彼が昼間に跳躍して見つけた、街の影がある方角へと、その体を無理やり向けさせた。
「あっちです!」
リリアが叫び終えた、その瞬間。
ドピューッ、と何とも言えない音と共に、ディノッゾの臍(へそ)のあたりを中心に、直径5メートルの極太の光のビームが、数秒間にわたって放たれた。
凄まじい光と熱が、森の夜を真昼のように照らし出す。
やがて光が収まった時、そこには、信じられない光景が広がっていた。
ビームが通った先には、幅5メートル、深さ1.5メートルほどの巨大な溝ができ、そこにあった木々は、根こそぎ消滅していたのだ。
「・・・」
ディノッゾは、自らが放った一撃の結果に唖然とし、ふらり、とよろめいた。そして、白目を剥いてその場に崩れ落ちる。
勢い余って、自らが穿った溝に落ちそうになったところを、リリアが間一髪でその服を掴んで引き戻した。
地面を転がったディノッゾは、完全に気を失っていた。
リリアは、目の前の巨大な破壊の爪痕と、気を失った恩人の顔を、ただ呆然と見比べることしかできなかった。
リリアの絶叫に、ディノッゾは我に返った。
彼女が指さす先、オランジの実の山の前に、確かに半透明の四角い枠が浮かんでいる。
(嘘だろ・・・これも、あの時に生えたってのか?・・・)
ディノッゾが驚きに固まっていると、リリアがおずおずとその枠に手を伸ばした。指先が触れると、まるで水面のように、しかし濡れることなく、その向こう側へと通り抜ける。
「すごい!ほ、本物、です」
その言葉に、ディノッゾは興奮して駆け寄った。
「ははっ、すげえな! リリア、お前さん、とんでもねえスキル生やしたじゃねえか! これで全部持って帰れるぞ!」
彼は真っ先に傍らの槍を掴んだ。
「よし、まずはこの槍からだな!」
彼が、槍をアイテムボックスに入れようとした、その時だった。
「待ってください、ディノッゾさん!」
リリアが、真剣な顔で彼を止めた。
「もし、このスキルが不完全で、入れたものが消えちゃったらどうするんですか? 大事な槍を最初に入れるのは危険です!」
「あっ・・・」
ディノッゾは、はたと動きを止めた。確かに彼女の言う通りだ。あまりの喜びに我を忘れて短絡的な行動をするところだった。
「そ、そうだよな。悪い、リリアの方がよっぽど冷静だな」
ディノッゾは照れ臭そうに頭を掻く。リリアは、自分のスキルを確かめるように、まずはその辺の石ころを一つ拾い、アイテムボックスに放り込んだ。・・・消えた。そして、ボックスに意識を向けると、石ころを取り出すことができた。
次に、オランジの実を一つ。これも、問題ない。
「よし、本物だ!」
二人は、改めて顔を見合わせて笑った。
そして、山になっていたオランジの実を、次から次へとアイテムボックスに収納していく。あれほどあった果実の山が、嘘のように目の前から消えていった。あれほどあった果実の山が、嘘のように目の前から消えていった。
「ついでに、こいつも入れちまうか」
ディノッゾは、これまでカバンを重くしていたオークなどの魔石を取り出した。
「他の荷物は全部流されちまったからな。人里に着いたら、こいつを換金しねえと無一文だ」
彼は当座の生活費となるはずのそれを、大事そうにアイテムボックスへと放り込んだ
全ての荷物を収納し終えた時、信じられないほどの身軽さが二人を包んだ。
「ははっ、すげえな! これなら、どこへだって行けるぜ!」
ディノッゾは、久しぶりに心の底からの楽観と希望を感じていた。
まさかその機嫌の良さが、今夜、新たな惨事を引き起こすことになるとも知らずに。
その日の夜、二人は満腹だった。
腹一杯のオランジの実と、試行錯誤と言うか、完璧に血抜きするやり方が分かった。
更にオランジ皮を器として使ったら、他所残った果肉から出る汁が魔物の肉に染み、焼くと匂いも味が普通に美味しく変貌した。
明日は香草とか巻いてみようか!など、街へと確実に近づいていることから、生きるためから、快適を求めた明るい話題になっていった。
そして、リリアのアイテムボックスという最高の安心材料。機嫌の良いディノッゾは、焚き火の前でこれまでにないほど饒舌になっていた。
「なあ、リリア。ネタスキルって知ってるか?」
「ネタ、スキル・・・ですか?」
「ああ。ギフトの儀式を受けた奴の何割かは、戦闘にも生産にも役に立たねえ、ただ面白いだけのスキルが生えることがあるんだ」
リリアが、不思議そうに小首をかしげる。その仕草に、ディノッゾはさらに調子に乗った。
「昔、俺が運んだ客でいたんだよ。『ハメハメハ!』って叫ぶと、股間の前から親指の先くらいの、小さな白い玉が出てくるスキル持ちがな。当たっても、デコピンほどの威力しかねえ、くだらねえスキルだったが、これがまた面白くてな。俺も真似してみたんだ。よく見とけよ?」
ディノッゾはすっくと立ち上がると、肩幅に足を広げ、両手を腰に当て、ぐっと腰を少し前に突き出した。そして、大真面目な顔で、高らかに叫んだ。
「ハメハメハッ!」
リリアが、きゃっきゃと声を上げて笑う。
その、はずだった。
ディノッゾの股間、正確にはその前方の空間が、ぽう、と淡い光を放ち始めたのだ。
「・・・え?」
ディノッゾの顔から、笑みが消える。光はどんどん強くなり、彼の体の前に、直径5メートルはあろうかという巨大で複雑な魔法陣が展開し始めた。親指の先の白い玉など、どこにもない。
「ちょ、おい、嘘だろ!? なんでだよ!?」
ディノッゾは、完全にオロオロしていた。スキルが暴走している。止め方も、消し方も分からない。
魔法陣の中心の光が、もはや直視できないほどに輝きを増していく。
「ディノッゾさん、危ない!」
リリアは恐怖を振り払うように叫ぶと、ディノッゾの後ろに回り込み、その体をがっしりと掴んだ。そして、彼が昼間に跳躍して見つけた、街の影がある方角へと、その体を無理やり向けさせた。
「あっちです!」
リリアが叫び終えた、その瞬間。
ドピューッ、と何とも言えない音と共に、ディノッゾの臍(へそ)のあたりを中心に、直径5メートルの極太の光のビームが、数秒間にわたって放たれた。
凄まじい光と熱が、森の夜を真昼のように照らし出す。
やがて光が収まった時、そこには、信じられない光景が広がっていた。
ビームが通った先には、幅5メートル、深さ1.5メートルほどの巨大な溝ができ、そこにあった木々は、根こそぎ消滅していたのだ。
「・・・」
ディノッゾは、自らが放った一撃の結果に唖然とし、ふらり、とよろめいた。そして、白目を剥いてその場に崩れ落ちる。
勢い余って、自らが穿った溝に落ちそうになったところを、リリアが間一髪でその服を掴んで引き戻した。
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