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第22話 血まみれの男
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「なんてことでしょう」
彼女は、内心で深いため息をついた。
兄の結婚式に出席するため、休暇を取ってセオドニックの実家を訪れたのが数週間前。まさにその休暇の最中に、隣国ギャルダル帝国でドラゴンが出現したという急報が飛び込んできたのだ。
国境は封鎖され、王都に戻ることもできなくなった彼女の元へ、先日、魔道具による魔導通信で皇国から短い勅命が届いた。
『隣国に現れたドラゴンに対処せよ』
(対処、と仰いますが・・・私一人に、ドラゴンと対峙する力など・・・)
彼女にできるのは、国境付近で情報収集に努め、最悪の事態に備えることだけだった。
そんな中での、2日前の夜に起きた、あの謎の光。
そして今、その方角から現れた、規格外の力を持つ、ただの「中年男性」と「メイド」。
(まさか)
セスティーナの脳裏で、最悪にして最もあり得る可能性が形を結んだ。
(かの勇者の再来?かつて国すら滅ぼした災厄・・・)
彼女はゆっくりと首を横に振った。
目の前で起きていることは、彼女の知る常識とは、あまりにもかけ離れていた。
(私の任務は、どうやら、ただの『情報収集』では済まなくなりそうですね皇帝陛下・・・)
・
・
・
ディノッゾは三体目のサイクロプスの胸から魔石を抜き取ると、血と体液がべったりなままのそれを無造作に掴み、リリアの元へと戻ってきた。
全身血まみれの姿に、セスティーナは思わず顔を引きつらせ後ずさった。騎士である彼女も、これほど生々しい返り血を浴びた男を見たのは初めてだった。 いや、返り血ではない。返り血など浴びていないはずだ。血が付いたのは魔石を抜くときだ。
だが、ディノッゾはそんな彼女の反応など気にも留めず、リリアに血の滴る魔石を差し出した。
「リリア、悪いが洗ってしまっといてくれ」
「はい、ディノ!」
リリアは慣れた様子でそ血まみれの魔石を受け取ろうとする。
その、あまりに日常的なやり取りに、セスティーナは我慢ならず口を開いた。
「あ、あなたは様は一体!」
「ん?」ディノッゾは、そこで初めて彼女の存在を思い出したかのように顔を向けた。そこには美があったが、1年前ジェスロ率いる一行で美人には慣れていた。
「ああ、あんたか。悪いが話は後だ。先に他の2体についても魔石を抜いておかないとな」
彼はそう言うとセスティーナの返事も待たず、残る二体のサイクロプスの死体へと歩き始めた。
セスティーナが呆然と見送っていると、隣でリリアが生活魔法を発動させた。
「ウォーター!」
彼女の小さな手のひらから、かなりの勢いで水がほとばしり、魔石の汚れを瞬く間に洗い流していく。その水量の多さと勢いに、セスティーナは再び目を見開いた。ただのメイドが使う生活魔法のレベルを・・・明らかに逸脱していた。
リリアが綺麗になった魔石をアイテムボックスにしまい終える頃、ディノッゾが残りの二つの魔石を手に戻ってきたが、セスティーナは最早何かを口にすることが出来ないほど衝撃に固まっていた。
だが彼の視線はセスティーナたちではなく、森の入り口の一点に注がれていた。
そこでは10人ほどの兵士たちが集まり、壁のようにそそり立つ木に向かって、長い梯子(はしご)をかけている。
「あいつら何をやってんだ?」
ディノッゾが不思議に思って目を凝らすと、その光景の意味を理解した。
梯子がかかる遥か上、天を突くような高い木にの半ば位の高さの枝に一人の兵士が辛うじて引っかかっていたのだ。
「何であんなところにいやがるんだ?」
一言発すると、カランと乾いた音がした。
ディノッゾの手から、2つの魔石がぼとりと地面に落ちた。
彼はその凄惨な光景から目を離せないまま、震える声で、隣のリリアに言った。
「リリア、ちょっと、あいつを下ろしてくる」
彼女は、内心で深いため息をついた。
兄の結婚式に出席するため、休暇を取ってセオドニックの実家を訪れたのが数週間前。まさにその休暇の最中に、隣国ギャルダル帝国でドラゴンが出現したという急報が飛び込んできたのだ。
国境は封鎖され、王都に戻ることもできなくなった彼女の元へ、先日、魔道具による魔導通信で皇国から短い勅命が届いた。
『隣国に現れたドラゴンに対処せよ』
(対処、と仰いますが・・・私一人に、ドラゴンと対峙する力など・・・)
彼女にできるのは、国境付近で情報収集に努め、最悪の事態に備えることだけだった。
そんな中での、2日前の夜に起きた、あの謎の光。
そして今、その方角から現れた、規格外の力を持つ、ただの「中年男性」と「メイド」。
(まさか)
セスティーナの脳裏で、最悪にして最もあり得る可能性が形を結んだ。
(かの勇者の再来?かつて国すら滅ぼした災厄・・・)
彼女はゆっくりと首を横に振った。
目の前で起きていることは、彼女の知る常識とは、あまりにもかけ離れていた。
(私の任務は、どうやら、ただの『情報収集』では済まなくなりそうですね皇帝陛下・・・)
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ディノッゾは三体目のサイクロプスの胸から魔石を抜き取ると、血と体液がべったりなままのそれを無造作に掴み、リリアの元へと戻ってきた。
全身血まみれの姿に、セスティーナは思わず顔を引きつらせ後ずさった。騎士である彼女も、これほど生々しい返り血を浴びた男を見たのは初めてだった。 いや、返り血ではない。返り血など浴びていないはずだ。血が付いたのは魔石を抜くときだ。
だが、ディノッゾはそんな彼女の反応など気にも留めず、リリアに血の滴る魔石を差し出した。
「リリア、悪いが洗ってしまっといてくれ」
「はい、ディノ!」
リリアは慣れた様子でそ血まみれの魔石を受け取ろうとする。
その、あまりに日常的なやり取りに、セスティーナは我慢ならず口を開いた。
「あ、あなたは様は一体!」
「ん?」ディノッゾは、そこで初めて彼女の存在を思い出したかのように顔を向けた。そこには美があったが、1年前ジェスロ率いる一行で美人には慣れていた。
「ああ、あんたか。悪いが話は後だ。先に他の2体についても魔石を抜いておかないとな」
彼はそう言うとセスティーナの返事も待たず、残る二体のサイクロプスの死体へと歩き始めた。
セスティーナが呆然と見送っていると、隣でリリアが生活魔法を発動させた。
「ウォーター!」
彼女の小さな手のひらから、かなりの勢いで水がほとばしり、魔石の汚れを瞬く間に洗い流していく。その水量の多さと勢いに、セスティーナは再び目を見開いた。ただのメイドが使う生活魔法のレベルを・・・明らかに逸脱していた。
リリアが綺麗になった魔石をアイテムボックスにしまい終える頃、ディノッゾが残りの二つの魔石を手に戻ってきたが、セスティーナは最早何かを口にすることが出来ないほど衝撃に固まっていた。
だが彼の視線はセスティーナたちではなく、森の入り口の一点に注がれていた。
そこでは10人ほどの兵士たちが集まり、壁のようにそそり立つ木に向かって、長い梯子(はしご)をかけている。
「あいつら何をやってんだ?」
ディノッゾが不思議に思って目を凝らすと、その光景の意味を理解した。
梯子がかかる遥か上、天を突くような高い木にの半ば位の高さの枝に一人の兵士が辛うじて引っかかっていたのだ。
「何であんなところにいやがるんだ?」
一言発すると、カランと乾いた音がした。
ディノッゾの手から、2つの魔石がぼとりと地面に落ちた。
彼はその凄惨な光景から目を離せないまま、震える声で、隣のリリアに言った。
「リリア、ちょっと、あいつを下ろしてくる」
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