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第28話 若き騎士の正鵠
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語り終えたディノッゾは、「以上だ!」とでも言うように口を閉ざした。
浴場には湯が流れる音だけが響き・・・重い沈黙に包まれた。
隊長も兵士たちも、言葉を失っていた。あまりにも話が荒唐無稽すぎるからだ。
やがて隊長が震える声で呟いた。
「Sランクパーティーのその後の消息は不明・・・最後に見たのは倒され崩れ落ちるドラゴンと、上から降り注ぐ瓦礫・・・彼らは巻き込まれたか、逃れられたのか・・・」
その言葉が事の重大さを、何よりも雄弁に物語っていた。
重苦しい沈黙を破ったのは、護衛についてきていた騎士科の、まだ若い兵士の一人だった。彼はこれまでずっと黙って話を聞いていたが、何かを閃いたように、恐る恐る口を開いた。
「あの・・・隊長、よろしいでしょうか。で、出過ぎたこととは存じますが、一つ・・・」
「ん? なんだ」
隊長に促され、若き騎士はごくりと喉を鳴らすと、意を決したようにディノッゾに向き直った。
「ディノッゾ殿。もし・・・もし、仮説としてですが、貴方様が、あのドラゴンに『ラストアタック』を決めた!というのは・・・考えられないでしょうか?」
その言葉に、ディノッゾは思わず眉をひそめた。
「ラストアタック? 俺がか?」
だが、騎士は構わず、興奮したように言葉を続けた。
「それならば説明がつきます! Sランクパーティーがドラゴンを追い詰め、瀕死の状態にした。そこに貴方様の落下時にダメージが入り、偶然にもそれが最後の一撃となった! ディノッ-ゾ殿が、それまで本当にただの御者だったのなら、ドラゴンという災厄級の魔物から得られる膨大な経験値を一度に受けたことで、我々の常識を遥かに超えるレベルアップを果たした! そう考えればあの跳躍も、サイクロプスを瞬殺した膂力も、全て説明がつくのです!」
若き騎士の正鵠を射た指摘に、浴場がどよめいた。
「な、なるほど!」「ラストアタック・・・それなら!」「ドラゴン・スレイヤー!?」
兵士たちが、畏怖と興奮の入り混じった目でディノッゾを見る。隊長もまた、全てのピースがはまったかのように、目を見開いて固まっていた。
だが、渦中のディノッゾ本人は、まるで他人事のように鼻で笑った。
「はっ。馬鹿なことを言うな、坊主。英雄譚の読みすぎじゃねえのか?勘違いすんなよ!俺は確かにジャンプスキルが生えて物凄く跳べるが、サイクロプスを倒したのは槍の力だ!」
「失礼ですが、そこまでの力をあの槍に感じられないのです。確かに硬いようですが・・・ですからドラゴンのラストアタックに行き着くのです」
彼は立ち上がると、湯を体にかけながら、呆れたように言った。
「俺がドラゴンを? 柄じゃねえよ。あれはただただ運が良かっただけだ。確かにジャンプスキルが生えたから、お零れ的に経験値は得たのだとは思うが、どう見ても俺はしがない御者、しかもオッサンだよ。ったく、風呂でのぼせるような話をしやがって。先にあがらせてもらうぜ」
そう言って、彼は先に湯船から上がっていく。
彼の背中を見ながら若き騎士は、しかし確信に満ちた目で呟いた。
「いいえ。貴方様は、もう【ただの御者】ではないのです・・・それに私や隊長よりも立派な・・・」
ディノッゾの【無自覚】は、終わりを告げた。
いや、彼自身はまだ認めずとも、世界がもう彼を【ただのオッサン】として扱うことをやめたのだ。
その事実が彼の運命を、否応なく新たなステージへと押し上げていくことになる。
彼は最早無自覚ではない。めんどくさいことになりそうだから、認めたくないだけだった。
浴場には湯が流れる音だけが響き・・・重い沈黙に包まれた。
隊長も兵士たちも、言葉を失っていた。あまりにも話が荒唐無稽すぎるからだ。
やがて隊長が震える声で呟いた。
「Sランクパーティーのその後の消息は不明・・・最後に見たのは倒され崩れ落ちるドラゴンと、上から降り注ぐ瓦礫・・・彼らは巻き込まれたか、逃れられたのか・・・」
その言葉が事の重大さを、何よりも雄弁に物語っていた。
重苦しい沈黙を破ったのは、護衛についてきていた騎士科の、まだ若い兵士の一人だった。彼はこれまでずっと黙って話を聞いていたが、何かを閃いたように、恐る恐る口を開いた。
「あの・・・隊長、よろしいでしょうか。で、出過ぎたこととは存じますが、一つ・・・」
「ん? なんだ」
隊長に促され、若き騎士はごくりと喉を鳴らすと、意を決したようにディノッゾに向き直った。
「ディノッゾ殿。もし・・・もし、仮説としてですが、貴方様が、あのドラゴンに『ラストアタック』を決めた!というのは・・・考えられないでしょうか?」
その言葉に、ディノッゾは思わず眉をひそめた。
「ラストアタック? 俺がか?」
だが、騎士は構わず、興奮したように言葉を続けた。
「それならば説明がつきます! Sランクパーティーがドラゴンを追い詰め、瀕死の状態にした。そこに貴方様の落下時にダメージが入り、偶然にもそれが最後の一撃となった! ディノッ-ゾ殿が、それまで本当にただの御者だったのなら、ドラゴンという災厄級の魔物から得られる膨大な経験値を一度に受けたことで、我々の常識を遥かに超えるレベルアップを果たした! そう考えればあの跳躍も、サイクロプスを瞬殺した膂力も、全て説明がつくのです!」
若き騎士の正鵠を射た指摘に、浴場がどよめいた。
「な、なるほど!」「ラストアタック・・・それなら!」「ドラゴン・スレイヤー!?」
兵士たちが、畏怖と興奮の入り混じった目でディノッゾを見る。隊長もまた、全てのピースがはまったかのように、目を見開いて固まっていた。
だが、渦中のディノッゾ本人は、まるで他人事のように鼻で笑った。
「はっ。馬鹿なことを言うな、坊主。英雄譚の読みすぎじゃねえのか?勘違いすんなよ!俺は確かにジャンプスキルが生えて物凄く跳べるが、サイクロプスを倒したのは槍の力だ!」
「失礼ですが、そこまでの力をあの槍に感じられないのです。確かに硬いようですが・・・ですからドラゴンのラストアタックに行き着くのです」
彼は立ち上がると、湯を体にかけながら、呆れたように言った。
「俺がドラゴンを? 柄じゃねえよ。あれはただただ運が良かっただけだ。確かにジャンプスキルが生えたから、お零れ的に経験値は得たのだとは思うが、どう見ても俺はしがない御者、しかもオッサンだよ。ったく、風呂でのぼせるような話をしやがって。先にあがらせてもらうぜ」
そう言って、彼は先に湯船から上がっていく。
彼の背中を見ながら若き騎士は、しかし確信に満ちた目で呟いた。
「いいえ。貴方様は、もう【ただの御者】ではないのです・・・それに私や隊長よりも立派な・・・」
ディノッゾの【無自覚】は、終わりを告げた。
いや、彼自身はまだ認めずとも、世界がもう彼を【ただのオッサン】として扱うことをやめたのだ。
その事実が彼の運命を、否応なく新たなステージへと押し上げていくことになる。
彼は最早無自覚ではない。めんどくさいことになりそうだから、認めたくないだけだった。
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