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第56話 キング3体
しおりを挟む「……ごめんなさい」
ディノッゾが、小さな声で謝る。
その、あまりにも情けない「最強の男」の姿に、子供たちの笑い声は、しばらくの間、広いボス部屋に響き渡っていた。
ディノッゾがオークキングを瞬殺してしまったことで、戦闘の緊張感は完全に消え失せ、一行には、まるで遠足の後のような、和やかな空気が流れていた。
「それにしても、これがオークキングか……。俺たちがギルドで聞いていた話とは、大違いだな」
リーダーのリオが、霧散していく王の残骸を見ながら、感心したように呟く。
「本当よね! 本来のボスは、もっと弱っちいゴブリンのはずだったんでしょ? こんなの、反則よ!」
勝ち気な両手剣使いのカミラも、悪態をつきながら同意する。
その、言葉が終わるか終わらないかの、瞬間だった。
グルルルル……
ゴゴゴゴゴゴ……
ギシャアアアア……
部屋に繋がる、三つの通路の奥から、同時に、不気味な地響きと、邪悪なうなり声が響き渡ってきたのだ。
和やかだった空気が、一瞬にして凍りつく。
「……嘘、だろ」
誰かが、震える声で呟いた。
通路の闇から、一体、また一体と、巨大な影が姿を現す。
全身を錆びた鎧で覆い、鋭い牙を剥き出しにした、巨大なゴブリン。
手には、人間の頭蓋骨を飾った、いびつな棍棒を握りしめている。
子供たちが語っていた、このダンジョンの本来のボスはゴブリンナイト。先程のオークキングと言い、国が滅ぶような魔物ばかりが出ている。
ゴブリンキングはAランク。その威圧感は、並のAランクモンスターのそれではない。ダンジョンエラーによって強化され、オークキングにも劣らないほどの、禍々しいオーラを放っている。
それが、一体ではない。
前方、左翼、右翼。
三つの通路から、三体のゴブリンキングが同時に、姿を現したのだ。
「ひっ……!」
子供たちの顔から、完全に血の気が引いた。
先ほどまでの自信は、跡形もなく消し飛んでいる。
Sランク級のオークキング一体ですら、ディノッゾがいなければ全滅していただろう。3体いればオークキングをしのぐ驚異だ。
それが、今度は三体。完全に、包囲されている。
リリアは、隣に立つディノッゾを見上げた。
ディノッゾもまた、顔をしかめ、槍を握りしめている。今にも、飛び出していきそうな気配。
だが、リリアは、その服の裾を、ぎゅっと掴んだ。
「……ダメ、ですよ、ディノ」
彼女は、震える声で、しかし、はっきりと釘を刺した。
「私たちが、本当にピンチになるまでは、手出し禁止、ですからね……!」
その言葉に、ディノッゾは「本気か、お前……」と、呻くような声を上げた。
子供たちは、そんな二人のやり取りも耳に入らない様子で、目の前の、三体の絶望的な王を、ただ、呆然と見つめることしかできなかった。
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